組織委 嶋津昭事務総長に聞く
「ラグビーワールドカップ2019」日本開催
2015/11/18
日本代表の目覚ましい活躍もあり、大きな盛り上がりを見せた「ラグビーワールドカップ2015」。イングランドで行われたラグビーの祭典は、4年後、いよいよ日本へとやって来る。 アジア初となる開催を控えて、同大会の組織委員会事務総長を務める嶋津昭氏に、2019年への展望を伺った。
試合だけでなく、時間や空気を楽しむファンに感銘
──ラグビーワールドカップ2015では、日本代表が大躍進を遂げました。その振り返りと、大会運営についての感想をお聞かせください。
嶋津:日本代表の活躍は素晴らしいものでした。優勝候補の南アフリカに勝ったのは、本当に驚きましたね。また、最後まで勝利を狙った強気の姿勢も心を打ちました。そのプロセスが評価されて、国内だけでなく海外でも日本代表は人気になったのです。ラグビーワールドカップにおける「最高の瞬間」賞に選ばれたのも、その表れでしょう。トップリーグ(国内ラグビーリーグ)などのチケットも売れているようで、非常に喜ばしいですね。
大会中は、現地で多くの試合を見学しました。そこで感銘を受けたのは、会場の盛り上がりです。対戦する両チームのサポーターはもちろん、どちらにも属さない中間層のファンも一体となって楽しんでいました。盛り上がりの背景を調べると、観客は試合の2~3時間前に現地に来ている。そして、スタジアムやその周辺での飲食の売り上げは相当あったようです。
つまり、彼らは試合を見るだけでなく、時間や空間を心から楽しんでいるんですね。だからこそ、中間層のファンがあれだけ盛り上がる。結果、観客動員数は過去最多の247万人に達しました。この動員レコードの裏には、中間層を含めた多くのファンに楽しんでもらうシステム、ホスピタリティーが構築されていたんです。
北から南まで12会場日本全体で盛り上がりたい
──日本開催は、全国12都市の会場で行われます。大会成功のポイントは何でしょうか。
嶋津:12の会場は、北から南まで満遍なくあり、全国で盛り上がることが目標。もちろん、期間中は多くの外国人が来日します。インバウンド施策として各地域を活性化してくれたらうれしいですね。そんな中、大会成功の鍵となるのは、先ほど言った「楽しんでもらうためのシステム、ホスピタリティー」です。それらをどこまで構築できるか。日本大会に使用する会場は、各自治体の所有ですので、いわば自治体との共催。私たちは、自治体との二人三脚で考えていきたいです。
楽しむ仕掛けづくりに企業の力を期待
──大会成功に向けて、企業やメディアに期待することは。
嶋津:楽しんでもらうためのシステム、ホスピタリティーを構築するのは簡単ではありません。私たち主催者だけでは厳しいものがあります。ですから、企業にはぜひそのビジネス力を活用していただきたいですね。「試合を見る」だけでなく、そこで楽しむ仕組みをどうつくるか。そのためには、ビジネスの支えが必要です。例えば、パブリックビューイングやファンゾーンでの新たな楽しみ方などに力を入れていただきたい。
メディアにも、盛り上げ役として期待したいですね。日本対サモア戦は、平均19.3%の高視聴率を記録しました(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。今後は、トップリーグや学生ラグビー、海外の試合などの放送が増え、ラグビー熱が高まることを願っています。
最後に、日本のラグビーでよく聞かれる「ノーサイド」「ワンフォーオール、オールフォーワン」という言葉は、実は海外であまりなじみのないフレーズ。日本独自のラグビー文化ともいえます。しかし、これらの言葉にこそ、日本人の持つホスピタリティーの精神が宿っているのではないでしょうか。私たちはこれらをキーワードに、4年後のワールドカップを成功させたいと思っています。
10月31日に幕を閉じた、ラグビーワールドカップ2015。その大会期間中、決勝などの舞台となったロンドンでは、日本を知ってもらうための「Japan Pavilion」(主催=日本ラグビーフットボール協会・ラグビーワールドカップ2019組織委員会)が設置された。目的は、日本文化を発信し世界の人に日本を好きになってもらうこと。そして、2019年の日本大会に来てもらうこと。数々の企画が実施され、多くの人々が足を運んだ。
ロンドン中心部から、約20日間の“日本発信”
大会後半に当たる10月9~31日に、Japan Pavilionは実施された。場所はクイーンエリザベス2世カンファレンスセンター(QEⅡ)。期間を分け施設内に加え芝生広場に特設会場を設置し、4年後の日本大会や、和食など日本文化の魅力を発信。訪日観光の価値を訴求した。
日本のアニメで、ラグビーの迫力を表現
Japan Pavilionのスローガンは「Feel Japan Feel Rugby 」。その一環として行われたのが、海外にも人気のアニメ「北斗の拳 イチゴ味」を使ったコンセプト映像の上映。特設会場に大型LEDディスプレーを設置し、ラグビーにおけるコンタクトの迫力をアニメで表現した。
発祥の地英国で、日本ラグビー史を伝える
QEⅡ内では、「History of JA PAN RUGBY」というタイトルで、日本ラグビーの歴史を紹介。約140年前に英国からラグビーが伝来したきっかけや年表、さらには最古の日本代表ジャージなどの貴重な品を展示した。
和のデザインが詰まったパネルを一斉展示
特設会場には「Feel Japan Feel Rugby」と銘打ったパネルを展示。浮世絵や桜など、日本を代表する文化や風景をモチーフに約40枚が飾られた。各パネルには説明文が添えられており、文化への理解を図った。
ラグビーの体験型コンテンツも人気
期間中は体験型コンテンツも用意された。その一つは、ラグビーボールを持った参加者が壁に向かってトライし、それをカメラで撮影するもの。回転して本当の試合でトライしているような写真に仕上がる、というわけ。出来上がった写真は参加者にプレゼントされた。