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ミライカレッジ×地方創生ビジネスNo.1

ミライカレッジ×まちてん ワクワクから始まる地方創生

2015/11/24

ツヴァイ×TURNS×電通の共同プロジェクトとして発足した「ミライカレッジ」。「人と出会う、街と出会う、未来と出会う。」をコンセプトとし、ライフデザインの視点から地方創生に取り組んでいます。

11月28日、29日には、渋谷ヒカリエで行われる日本最大級の地方創生まちづくりEXPO「まちてん」への参画が決定しました。全国各地でまちづくりを推進するイノベーターたちと、まちづくりを支援する企業・団体が一堂に会するこのイベントでは、地方創生ビジネスの「今」にたっぷりと触れられるはず。

「まちてん」の実行委員長とプロデューサーを務めるのは、ビジネスプロデューサーの谷中修吾さん。これまでにも事業性と公共性を両立させる数々のソーシャルビジネスを創出してきました。谷中さんを迎え、ミライカレッジのプロジェクトメンバーである電通の廣瀬由美子さん、大村秀児さんとの地方創生ビジネスの未来について語り合う鼎談をお送りします。

左から電通・廣瀬さん、「まちてん」実行委員長・谷中さん、電通・大村さん

地方創生は、ワクワクから始まるポジティブスパイラル!

廣瀬:谷中さんは、スターバックス、キャノン、松下政経塾の連携による東日本大震災復興支援プロジェクト「道のカフェ」の立ち上げ・運営に携わっています。他にもこれまでに多くの地方創生ビジネスの現場をご覧になっていると思いますが、地方創生を面白くするビジネスのトレンドを教えてもらえますか?

谷中:「道のカフェ」は東日本大震災直後から地域に根差して進めてきた活動ですが、震災固有のプロジェクトとして考えたわけではありませんでした。過疎化は東北地方だけでなく、震災以前から日本各地が抱えていた問題です。ただ、東北地方の場合は、震災によってそれが加速したといえますね。

過疎化が進むことでどのような課題が生じるかというと、まず、人口が減ると、地域に活気がなくなる。活気がなくなると、仕事がなくなる。これらが相互に作用し、ネガティブスパイラルが始まります。

近年は地方創生ビジネスが盛んな地域がありますが、そこには何か、必ずワクワクすることがありますね。「ワクワク」があると、いつの間にか人が集まり、やがて活気も生まれます。例えば、U・I・Jターンをした人がその地域で起業して、それがうまくいくと「ワクワク」が生まれ、人が集まるといった流れもあります。

廣瀬:確かに、ワクワク感は大切かもしれませんね。それに、ビジネスが生まれれば雇用にもつながりますし。

谷中:もう一つ、人が集まる場も重要なファクターです。最近は「コミュニティプレイス」といった名称で、あらゆる世代の人が気軽に足を運べる場がありますよね。日常生活の中で集まれる場から活気が生まれ、仕事が創出されるといったケースもあります。

ビジネス抜きでもいいので「ワクワクがある」「地域で起業して雇用を生み出す」「人の集まる場をつくる」。これらの3つを、僕はポジティブスパイラルと呼んでいます。このうちのどれから取り掛かってもいいのです。そういえば、「ミライカレッジ」がやろうとしていることにも通じるものがありますね。

廣瀬:そうですね。「ミライカレッジ」はコミュニティーをつくることを重要視しています。collegeの語源には仲間という意味もあります。谷中さんの言葉をお借りするなら、多様な価値観の中で新しい「ワクワク」を見つけてもらいたいという思いが根底にあります。

多種多様な成功事例を間近にできる「まちてん」

大村:「まちてん」を開催する背景には、どのようなことがあるのでしょうか?

谷中:「まちてん」は日本各地のまちづくりのイノベーターが一堂に会する初めての場です。目玉としているのは「カンファレンス」で、実際の地方創生の先端事例をメーンとしたプレゼンテーションが展開されます。2日間で30のプレゼンテーションが行われますが、いずれも各分野の一線で活躍するイノベーターが登壇します。

「カンファレンス」には、コミュニティプレイス編、Youth編、エクスペリエンス編、オープンイノベーション編、サステイナビリティ編、New Wave編の6つがあり、どれもポジティブスパイラルの3つの要素のうち、いずれかにフィットしています。

カンファレンスに登壇する皆さんは、すでに過疎化など、地域が抱える課題に解決モデルを持っている方ばかりです。僕は「まちてん」を地方創生ビジネスの見本市ではなく、知見をシェアする場として捉えています。

ただ、解決モデルを他の地域にそのまま当てはめようとしても、マッチしない場合もあります。今回の「まちてん」には30例の地方創生の成功事例が集結するわけですが、それらのエッセンスを重層的に組み合わせることで、「まちてん」のコンセプトでもある「地域の未来をデザインする」ことができると考えています。

廣瀬:それぞれのエッセンスを組み合わせれば、完成度はより高まるわけですね。

谷中:そうです。それはとても重要なことだと考えています。なぜなら、日本は先進国の中で最も早いスピードで過疎化や少子高齢化が進んでいる国。他の国が直面したことのない課題を解決していかなければなりません。いわば、課題先進国ですね。それを逆手にとりさまざまな課題を解決していけば、まちづくり先進国になれるのではないでしょうか。

2020年には東京オリンピックが開催されますし、日本は今後、ますます世界から注目を集めることでしょう。日本がまちづくりにおける知見とアイデアを持っていることを訴求していくには、今がまたとないチャンスだと思っています。

廣瀬:われわれ「ミライカレッジ」は、「トークセッション」に参加させていただきますが、皆さんの反応が今から楽しみです。

谷中:そうですね。「トークセッション」では、14の企業や団体がこれまでに手掛けられた地方創生における独自の取り組みを紹介します。特に「ミライカレッジ」は、「まちてん」の思いとフィットする部分が多いですし、「ミライカレッジ」のプログラムに参加したいという方、自分の地域で「ミライカレッジ」のプログラムと協業したいという方が大勢いらっしゃると思いますよ。

廣瀬:そうなるとありがたいですね。

大村:「まちてん」を特に見てもらいたいターゲットはありますか?

谷中:まちづくりに既に携わっている方の他に、まちづくりに興味があって参加のきっかけを求めている方ですね。

もちろん企業も重要なターゲットです。「まちてん」は、さまざまなグローバルカンパニーに支えていただいていますが、皆さんは地域とのつながりを求めていて、それぞれの本業を地域のイノベーターとつながることでもっと広げていきたいと考えています。地域のハイパー・ローカル・マーケティングといったら分かりやすいかもしれませんね。よりミクロで、独自性のあるビジネスを仕掛けようとしています。

時代によって変化するまちづくり

大村:まちづくりというと、いわばハード面におけるまちづくりをイメージしてしまいますが。

谷中:大村さんのおっしゃるように、従来のまちづくりや都市開発とは、施設や建物、インフラといったハード面がほとんどでした。高度経済成長期はそれが求められた時代でしたが、今はそうではないものに注目が集まりつつあります。

僕自身も、ハード面とソフト面、さらに価値観をも含めたまちづくりが求められると思っています。「まちてん」の「カンファレンス」に登壇する皆さんは、それぞれ価値観が異なります。最初からグローバルにつながることを意識している方もいれば、ITを使うことを前提に地方での新しい暮らし方を考えている方もいます。

ひと昔前の「とにかく進めてしまおう!」といったまちづくりと、少子高齢化が進んだり、ITの発達によって多様な働き方ができるようになった現代のまちづくりは異なるはず。それを考慮することは、とても大切だと思っています。

廣瀬:たしかに、価値観が占めるものは大きいですね。目には見えないけれど、まちづくりの軸であり、いずれは大きなうねりにつながるはずのものです。

大村:「ミライカレッジ」も構想段階から、現代社会にはさまざまな価値観があり、その数と同じだけの生き方があると考えていました。どこで生活していくのか、どんな仕事をするのか、すべてを複合的に捉えてライフデザインをしていかなければならないと思いました。「まちてん」への参画をきっかけに、さまざまな価値観に出会えることが楽しみです。

今を生きる若者に顕著な新しい感度

谷中:「ミライカレッジ」のライフデザインは、僕の考えにとても近いところにあると感じています。大村さんのおっしゃる通り、多様な価値観があり、そこにはさまざまな生き方があります。価値観にはお金も含まれますが、今の時代、豊かさの尺度はお金ではなくなっているように感じています。

廣瀬:確かに。特に若者世代はそうですね。

谷中:キャッシュだけでなく、人とのつながりや新たな経験、そうしたものまで含めて対価と考えると、豊かさのバリエーションはかなり広がっていますね。

「豊かさイコールお金」となったのは、高度経済成長期のころではないでしょうか。それ以前は、決してそうではなかったはずです。今は原点に戻ったともいえますね。

廣瀬:従来からある日本社会の価値観を完全には払拭できないけれど、新しい時代の感度は持っていて、どうすればいいのか分からないという若者は多いと思います。最初の一歩をいかに踏み出すかですよね。「まちてん」のような場で刺激を受けるかもしれませんね。

「ミライカレッジ」はリアルな場での体験を提供して、気付きを得たり、自分自身で考えたり、新しいものを見つけていってほしい。そうした思いからこのプロジェクトは始まっています。

谷中:「まちてん」の「カンファレンス」の登壇者には、学生時代に起業して今の活動につながっている人、もともとビジネスパーソンをしていたけれど手に職を得て、地域に戻って活躍している人、いろいろな形があります。

大村:そうなんですね。そうしたイノベーターの体験から、やる気や興味さえあればハードルは高くないと感じてもらいたいですね。

谷中:いきなり地方に移住というのもありだと思いますが、さすがにハードルは高いですよね。そうではなく、まずは現地に足を運んだり、地方創生に携わる様々な人の話を聞くなど、できることから入ることは大切だと思います。

大村:おっしゃる通りだと思います。はじめから「起業」や「移住」を意識してしまうと、やる前にあきらめてしまうこともあるのでしょうね。

谷中:例えば、地域インターンシップや青年海外協力隊、アカデミックな「まちづくり研究」への参加など「まちづくり」への入り方にはいろいろありますし、「こうあらねばならない」ということはないのです。

今回の「まちてん」では、パートナーシップとして多様な企業や団体に協力していただいていますが、まちづくりに参加する仕方にもいろいろあることが理解してもらえるのではないかと思っています。実際に足を運んでみて変わるということも多いと思います。

人もビジネスも行政も「ワクワク」で動く

大村:「まちてん」は今後、どのように展開していくのでしょうか?

谷中:11月28日、29日のイベントは、あくまでも「まちてん」のプロジェクトのキックオフにすぎません。2日間でおよそ累計2000人の動員を見込んでいます。来場者の皆さんにはメールマガジンやfacebookページに登録していただくのですが、それをプラットフォームとして、登壇者や参画していただいた企業・団体の最新動向を常に発信し続けていきます。つまり、日本全国のイノベーティブなまちづくりに関する最新情報を多くの人が常にキャッチできるわけです。

廣瀬:そのプラットフォームをきっかけに、新しい何かが生まれるかもしれませんね。これまでにない地方創生のビジネスモデルの誕生にもつながっていきそうです。谷中さんがおっしゃる「ワクワク」にも、たくさん出合えそうです。

谷中:本当に、「ワクワク」がなければ何も始まらないと思うのです。これはビジネスを軸として考える場合も同様で、携わる人がビジネスの中における「ワクワク」に情熱を傾けられることをベースにすることも重要だと思います。

廣瀬:ただ、まちづくりでは、行政のスタンスも関わってきます。谷中さんは、行政に対してどのようにアプローチしていますか?

谷中:10年以上にわたって地方創生ビジネスに携わってきましたが、その経験から感じているのは、行政の前例主義を上手に活用するとうまくいくということです。地域でイノベーターが面白いことを仕掛けて露出していくと、行政から声をかけざるを得なくなります。ですから、面白いことを先にやってしまうというのはありますね。

行政でも市民でも地域の面白い動きを発信する場合、フリーペーパーやエリアインフォメーション紙などイケてるメディアへの情報発信が望ましいですね。

過疎化は、進学や就職によってほかの地域に出た若者が戻ってこないことも原因の一つです。でも、地域でがんばっている若者の情報を発信してあげることで、いったん外に出た人が戻るきっかけにもなるのです。情報を発信しなければ知らないわけですし、戻ろうにも戻るきっかけがつかめない。いろいろな人がいることを発信する土壌は大切だと思います。

廣瀬:面白いことをするにも、行政の共感を得るにも、ビジネスプランを緻密に練ることは必要そうですが。

谷中:ビジネスという観点でいうと、事前に事業計画を立案したり、作成したりするスキルはもちろん欠かせません。ただし、現場では決してその通りに物事が動くわけではありません。まずは「ワクワク」が先にあって、それを実現させるために動き、初めて具体的なプランができていくと思っています。

もう一つ、ポイントを挙げるとするならば、偶発性を大切にすることでしょうか。プラン通りに進む場合もありますが、実際には、たまたまキーとなる人や情報と出会うことで生まれる物事も多いものです。結果として、当初のプランよりもおもしろくなる可能性を秘めているのです。

廣瀬:偶発性は、たしかに大切ですね。「ミライカレッジ」では「人と出会う、街と出会う、未来と出会う。」を合言葉として掲げています。いろいろな体験や機会を通じて、思いもよらない物事と出合い、新しい世界が広がるはずです。そうした機会が増えることを願っています。

谷中:「出会いが未来をつくる」とは、まさにその通りですね。

廣瀬:最後に、谷中さんご自身の個人的な「ワクワク」を教えていただけますか?

谷中:僕は「まちてん」を国内外に発信したいと立ち上げ当初から思っていました。それが来年の2月、いよいよ国外に発信する機会をいただけることになりました。アメリカにはソーシャルイノベーションのプラットフォームがいくつかあるのですが、日本のまちづくりのソーシャルイノベーション事例に関する講演の依頼をいただいて、今から楽しみですね。