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電通総研「話題・注目商品2015」
「枠超え消費」を生んだ、
生活者の“変化”とは?

2015/12/21

電通総研はこの程、「生活者が選ぶ話題・注目 商品2015」を発表。今年脚光を浴びた商品と来年の有望商品をランキング、2015年を「枠超え消費」と名付けて分析した。消費社会を研究するコメンテーターの速水健朗氏を迎え、電通総研の松本泰明研究員と共にその潮流をひもといていく。

共同通信社


「爆買い」で浮かび上がった “知らなかった日本”

松本:1985年から「話題・注目商品」を毎年発表しており、今年で31回目を迎えました。1位となったのは、「爆買い/インバウンド」です。これは今年を象徴するものだったといえます。

速水:爆買い自体は数年前からの流れでしたが、ここへきて顕著になりましたね。この状況は、来年再来年も傾向として続くのではないでしょうか。

松本:私が感じたのは、中国人の爆買いが日本人の消費意欲を刺激したのではないかということ。爆買いが話題になった今春、飲食料品などの売り切れニュースも続きました。あれは、爆買いを見た日本人が、物を買う楽しさを感じた面もあると考えています。

速水:爆買いの盛り上がりは、都市の形態にも影響を及ぼしていますよね。近年、観光客が行く場所と地元の人が行く場所がはっきり分かれる傾向が出てきました。

松本:さまざまな面で、爆買いにより私たちは「外」からの影響を多分に受けたと思います。これが、今まで気付かなかった日本の強みを知ることにもつながりました。


社会の枠から一歩踏み出す攻めのスタンスに支持

松本:今回のランキングを見て強く感じるのは、生活者たちの意識の変化です。例えば2位「ラグビーワールドカップ2015日本代表」は、外国人も含まれるというラグビー独特の代表編成ながら、彼らを含めて日本代表だという認知がすぐに広がりました。また、4位のマツコ・デラックスさんは、確かな「自分」を持っている方。その個性が大きな支持を得ています。生活者の受け取り方が広がった年ではないでしょうか。

速水:又吉直樹さんの小説「火花」が5位に入っていますが、これもその流れといえるかもしれません。かつて“お笑い”と“小説”は対極にあるもので、その両方を行う人は受け入れ難かったはず。それが、現代では彼の個性として両方認められました。17位の松岡修造さんについても、あの強烈な“熱さ”が個性として心を捉えているのは明らかですよね。

松本:ここから分かるのは、自分を貫いた「攻め」のスタンスが人気ということ。そのスタンスは消費行動にも出ていて、10位「Instagram」や13位「自撮り棒」などは、自己表現に重きを置いたツール。これまでの「みんなで一緒に」から、より「自分を出したい」に変わったのではないでしょうか。それも含めて、私たちは2015年の潮流を「枠超え消費」と名付けました。既存の社会の枠を破り始めた年で、「固定観念から少しはみ出してみよう」という流れが生まれていると感じます。

速水:いろいろなものが、これまではみ出なかったところを超えていますよね。その背景には日本人が寛容になり、多様性を認めていく動きがあるのかもしれません。


今年のモードはこれからも加速する

松本:このような中で、来年はどういった動きになるでしょうか。

速水:爆買いを中心とした今年のモードはさらに進むと思います。観光は、自分たちが行くよりも、ポジティブな意味で「受け入れる」という受動的なスタンスが強まるでしょう。そこで思うのは、もっと多くの場所にいろいろな人を巻き込めないかということ。観光地や家電量販店など、海外の旅行者が来るスポットは固定されつつあります。その間をつないで、インバウンドの恩恵をもっと広く受けられるように。ある意味では、今よりもっと攻めるという意識です。それが今後のテーマになるのではないでしょうか。

松本:地方などでも、新しいことがどんどん起きていくといいですね。そのために、どう攻めるかを考えていくことが大切かもしれません。

速水:そういった意味では、広告の役割も重要になってくると思います。まさにクリエーティブの力が求められているところで、各地域や日本全体でさまざまな形の「攻め方」を打ち出していってほしいですね。