【続】ろーかる・ぐるぐるNo.74
ホントにWhat to sayは先に確定できるのか?
2016/01/21
会社の先輩である杉田貴紀さんが結婚なさり、仲間内でのお披露目会。奥さまのVIVIANさんは中国のご出身なので、本場の中華料理を振る舞ってくださったのですが。これが旨いのなんの。
「台湾風の前菜煮込み」は冷菜。香辛料で風味付けした醤油「滷水(ロウスイ)」で煮込んだ鶏のハツ、砂肝、卵など。「上海風豚バラ肉の角煮」はタレまで旨く、自家製のフランスパンを浸して楽しみました。そして圧巻は太麺、細麺と2種類あった「手打ちジャージャー麺」。そういえば先輩の出身地、名古屋の八丁味噌に近い味ですかねとかなんとか、特別な紹興酒や日本酒をグビグビいきながら、大盛り上がりの会となりました。
その奥さまも長年中国の広告会社にお勤めなので機会があれば議論しようと思っていたのですが、皆さん、実際に広告コミュニケーションをつくるとき、ホントにWhat to sayは先に確定できると思いますか? 実際のところ、どうなんでしょう。
たとえば企画ができた後、他人にプランを説明するときには、誰に(Target)、何を(What to say)、どうやって(How to say)伝えるか整理することは大切です。
また企画をつくろうという時でも、おおよそいまの延長線上を進めば良さそうな場合には、まずWhat to sayを確定してからHow to sayに取り掛かるのが効率的でしょう。でも現状の延長線上ではうまくいかなさそうな場合、なにか根本から考え直さなければならない場合にも先にWhat to sayを確定できるのか、そこのところが分からないのです。
この連載の背景にもなっているアイデアづくりの方法論「ぐるぐる思考」では「課題とアイデアはセットで発見される」と考えています。一見正しい課題設定でも、そこにアイデアが生まれなければ意味がないですし、調査結果からすればマイナーな課題でも爆発力のあるアイデアとセットなら有効だからです。
同じように「何を伝えるのか?」は「どうやって伝えるのか?」に関する計算が立って初めて確定できるのではないか、と思うのです。What to sayは論理的に考えれば、あるいは調査をすれば自動的に決まるほど簡単なものではありません。
もう20年近く前のことになるでしょうか。広告業界には「アカウントプランナー旋風」が吹き荒れました。久々に当時の資料を見返してみると「アカウントプランナーが『誰に何を言うか(What to say)』の部分をカバーすれば、表現の専門家であるはずのクリエーティブに『どう言うか(How to say)』の開発に集中してもらうことができます」なんてことが書いてあります。アカウントプランニングが衰退した背景についてはさまざまな分析があるようですが、本質的に分けることのできないWhat to sayとHow to sayを無理矢理分業してしまったことに大きな原因があるのではないかと思います。
いまも昔も、広告業界は新しいアプローチ、言い換えればブームに敏感です。大切なことはその熱狂がさめた後、ぼくたちは何を学び、何を反省すべきか議論することでしょう。そういったお話は(場が熱くなりすぎてケンカにならない限り)酒の肴にもってこいなのですが、先日の結婚披露パーティーはもっと楽しい「肴」がテンコ盛りでした。次回奥さまとご一緒できる時は、ゆっくりそんな話をできたらと思います。
どうぞ、召し上がれ!