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アクティブラーニング こんなのどうだろうNo.7

カナダの学校では、
悪ガキほど校長に会う。

2016/01/28

電通総研に立ち上がった「アクティブラーニング こんなのどうだろう研究所」。アクティブラーニングについてさまざまな角度から提案を行っていきます。このコラムでは、ラーニングのアクティブ化に活用できそうなメソッド、考え方、人物などを紹介していきます。

アクティブラーニング研究所メンバー キリーロバ・ナージャ 6カ国で教育を受けて育ち、他国での教育の経験から、日本の教育へのヒントを探ります。

カナダの中高に転校して、数日たったときのこと。金曜日ということもあり、みんなのやる気が低下していた昼下がり。授業中にいきなり机をドラム代わりにたたきながら、後ろの席で歌い出した3人組がいた。どうやらすでに、週末モード。それを見た先生は、「またか」という顔をして、壁のインターホンのボタンを押した。向こう側から「Yes?」という声が聞こえると、その先生は、「今から、〇〇、△△、××をそちらに送ります!」と一言。そして、3人に向かって「〇〇, △△, ×× principal's office now!」(今すぐ校長室へ行け!)と叫ぶ。すると、3人組は仕方なく席を立って、校長室へ向かったのである。

ふむふむ、そうか。ここカナダでは、先生は注意はするが、生徒との問題を解決するのではなく、 問題が起これば校長室に悪ガキを送り込み、校長先生がその問題を解決する役割を担っているのだ。 後日、校長室の前に椅子が並んでいて、多くの悪ガキが校長室に呼ばれる順番を待っているところを目撃したが、特に日本から見るとなかなか異様な光景である。

残念ながら、私は校長室へ行ったことはないが、どうやら、話し合いが行われ「居残りの罰」などを言い渡される。それで解決が難しい場合は親が呼び出されるらしいのだ。そのため、万が一授業が荒れても、その仕掛人がすぐにクラスから追い出されるので授業が止まることはない。他の生徒は、学びを継続することができるし、この出来事をあまり自分に関係あることとして捉えない。

追い出された生徒は生徒で、より大ボスである校長先生と向き合わないといけなくなり、先生に対する個人的な怒りもあまり覚えない。そして、親にすぐに連絡がいき、共有される。このシステムにより校長は多くの生徒のことを知っているし、しかも優等生よりも「校長室の常連」である悪ガキをより知っている。「叱る」知見もどんどんたまる仕組みだ。

校長と悪ガキの関係

この対応は私にとっては、とても意外だった。日本の小学校にいたころ、どんなに反抗やイタズラをしても、先生は親に言うことはなかった。むしろ、いいところを見付けて常に親の前で褒めるのである。海外で親が「bad behavior」と言われるところを日本では「とても元気がある」などと表現され褒められた。そして、先生は問題が起こるとクラスの授業を止めてから反抗をやめさせて、解決しようとするのである。日本の中学校でも、校長先生の話を朝礼などで聞くことはあっても、一対一で話すことはあまりない印象だ。

そう考えると、「教える」だけではなく、「叱る」にもいろんなやり方があることに気付く。どう「叱る」か、どこまでその内容をみんなに公開するか、これも重要かもしれない。悪いことをしたら権力者によって居残り、停学、退学などの具体的な内容がある「罰」を受けさせることで反省させるのか。「みんなに迷惑がかかる」と抽象的な話で良心に訴えるのか。みんなの前でそれをやるのか、個別にやるのかも、その後のクラスとの関係に差が出るかもしれない。親を巻き込むのか、巻き込まないのか。親は、先生の味方か、生徒の味方かなどもその後の生徒の態度に大きく関わってくる。「モンスターペアレンツ」や「集団いじめ」などが叫ばれている中で、「叱る」ということについてもう一度考えるのも興味深いと感じる。