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進化するマラソンNo.1

マラソンの「将来像と可能性」

2016/02/27

進化するマラソン「将来像と可能性」

東京マラソンが初めて実施されたのは2007年。その後10年間でランニング人口は増え、全国各地でも多彩な大会が開かれるようになった。マラソンが人々を引き付ける力とは何なのか、どのようなポテンシャルを秘めているのか。大会を運営するキーマンや協賛企業担当者に話を聞いた。2回に分けてお届けする。


筑波大卒業後、高校教諭を経て米コロラド大へ留学、スポーツマーケティングを学ぶ。帰国後、スポーツ関連企業のマーケティングに携わる。2006年東京マラソン事務局広報部長、12年から現職。
筑波大卒業後、高校教諭を経て米コロラド大へ留学、スポーツマーケティングを学ぶ。帰国後、スポーツ関連企業のマーケティングに携わる。2006年東京マラソン事務局広報部長、12年から現職。

2007年に始まった東京マラソンは、この10年で安定した大会運営のベースを構築できたと実感しています。東京マラソンを機にマラソン自体の注目度も年々増し、各地でさまざまな大会が行われるようになりました。この盛り上がりが一過性のブームや単なるイベントで終わらず、マラソンが身近な日常となり、「ライフスタイル」として定着してほしい、そうすれば、人々の健康や日本の大きな課題でもある医療の面でもプラスの影響が必ずや生まれるはず。今後は東京マラソンを含め、全ての大会がライフスタイルとしてのマラソンを普及させるための装置になることを願っています。

そのために始めた取り組みの一つに「RUN as ONE - Tokyo Marathon」があります。これは、各地のマラソン大会と提携し、ランナーの相互交流や運営ノウハウなどの情報交換を活発化していこうというプロジェクトです。警備救護プログラムやチャリティのシステムなど、良いものは全国共通でシェアし、新たな取り組みにも挑戦する。こうした施策が日本のマラソン全体を盛り上げる一助になればと思っています。

マラソンがもっと身近になるためには、多くの企業の応援も必要です。というのも、マラソンを始める人には、「走る」こと以外の目的やきっかけがそれぞれあるもの。ダイエットのため、ビールをおいしく飲むためなどまさに十人十色。こういった多様なコンタクト機会を活用する意味も含めてぜひ、いろいろなジャンルの企業にマラソンをサポートしていただきたい。マラソンというフィルターを通すことで、人と人、人と企業、企業と企業との今までなかった新たなつながりもどんどん生まれていくはずです。マラソンにはそういった力があります。

スポーツ界は2020年に大きな節目を迎えます。もちろんそこへ向けて盛り上げることも非常に大切ですが、併せて重要なのはそれ以降にどうつなげるか。いかに社会に長期的でポジティブな影響を生み出し続けていけるかです。東京マラソンにはその一翼を担う力があると信じています。その使命の下、次の10年に向け東京マラソンをさらに進化させたいと思っています。


 
1995年に車いすマラソンを開始。2007年からは毎年アボット・ワールドマラソンメジャーズ大会に出場。東京、ボストンなど多くのマラソン大会で優勝。一般社団法人ウィルチェアアスリートクラブ ソシオSOEJIMA所属。
 

スポーツは、いろいろな人たちが一つになれるイベントです。車いすマラソンレースの魅力もそこにあり、さまざまな地域の人が集まって、みんなで一緒に楽しむところに意義があります。だからこそ、この競技をより広く知ってもらいたい。一般のレースとの同時開催は運営面でさまざまな難しさがありますが、それらを乗り越えて国内の車いすマラソンレースをもっと増やしていきたいと考えています。

東京マラソンでは、第1回大会から車いすマラソンレースが行われてきました。私も出場しましたが、毎回20人前後の選手が参加しています。この10年という歴史を踏まえ、東京マラソンが日本全体の車いすレースを盛り上げる存在になってほしいと願っています。

その点で大きいのは、今年から東京マラソンの車いすレースが国際パラリンピック委員会公認大会として認定されたこと。パラリンピックに出場するための公認記録が取得できる大会となりました。国内の認定大会としては二つ目で、日本の選手にとって大きなチャンスといえます。国内外で活躍する選手が競い合う世界最高レベルの車いすレースが東京マラソンで繰り広げられる。メディアなどでの注目度もアップするでしょうから、スポーツとしての楽しさや魅力を多くの方々に知ってもらうきっかけとなり、国内の車いすレースのレベルアップにつながることを期待しています。

もちろん、2020年への流れも車いすマラソンの普及には追い風となります。多数の人にレースを見てもらえる機会ですから、日本の選手が頑張ることでレースの魅力を感じてほしいですね。そのために、選手のバックアップや海外遠征の協力体制を敷いていきたいと考えています。そして、2020年以降も勢いが続くよう、スポーツレガシー事業やチャリティ事業の普及に力を入れたいですね。

車いすレースのランナーにとって、個人や企業からの支援や応援は大きな励みになり、頑張る力になります。応援してくださる皆さんに恩返しができるような大会をつくっていきたいと考えています。


 

第1回の応募者は7万7521人(定員2万5000人)、近年では約30万人の応募があるほど人気を博している。ボランティアや応援者の公式クラブ「ONE TOKYO」も40万人を超えている。

2010年、協働する事業の中から寄付者が支援先を選択できるチャリティ事業を開始。12年、世界のトップレースとして「アボット・ワールドマラソンメジャーズ」(AbbottWMM)に加入し、名実ともに世界有数のレースに発展した。14年には人材の強化育成、社会貢献などを目指すスポーツレガシー事業を始動した。

今大会からは大会ロゴを一新。異なる色の線は、ランナーやボランティア、応援する一人一人を表し、ストーリーが織り重なることで感動を生み出すという大会コンセプト「東京がひとつになる日。」を表現した。

(2)に続く