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進化するマラソンNo.2

企業にとっての 市民マラソンの魅力

2016/02/28

企業にとっての 市民マラソンの魅力

年々広がりを見せるマラソン大会。 そこでは支援や協賛をする企業が大きな役割を果たしている。 スポーツ関連企業だけでなく、自社の商品や技術、知見を生かして 新たなプログラムを試みる企業も増えてきた。 マラソンを支援する企業の担当者に取り組みへの思いと成果を聞いた。


 

第一生命保険は昨年、東京マラソンを含む全国15の市民マラソン大会に協賛するプロジェクト「Run with You」をスタートさせた。協賛する大会の参加ランナー数は約24万人と、民間企業によるランナー支援としては国内最大規模だ。同社広報部長の櫻井建氏は「当社創立者の矢野恒太は医師だったこともあり、創立以来、健康・医療に関する社会貢献に注力してきました。

最初は“治療”への貢献から始まり、次に“予防”へ、そして一歩進めた“健康づくり”へと段階的に発展。そこで、今回、誰もが簡単に始められ、楽しみながら健康促進につなげられる市民マラソンを支援することになりました。今年度は、北は北海道マラソンから南は熊本城マラソンまで全国の15大会を通じて、ランナーをはじめとした皆さまの健康づくりのお手伝いをしつつ、また地域の一大イベントであるマラソン大会を盛り上げることで地域活性化につなげていきたいと願っています」と語る。

同社では、各大会会場にブースを出展し、健康チェックとして、来場者の“体組成測定”や“肌年齢測定”を実施するとともに、同社のグループ会社や財団による研究成果を活用した健康に関する情報提供を展開している。また、ロンドンオリンピック日本代表として活躍した元同社女子陸上競技部の尾崎好美さんらによる“ランニングフォーム診断”には、毎回ランナーの長蛇の列ができるほどの人気ぶり。

同社広報部広告宣伝課課長の中島猶史氏は「初めてマラソン大会のブース運営に携わった支社の社員からは、ブースを通じてランナーの皆さんに喜ばれたので来年も参加したいという声が多数寄せられています。社内でもマラソン同好会が立ち上がり、全社的なコミュニケーションの向上にもつながっています。今後も中長期の継続を視野に取り組んでいきたいと考えています」と、全社の力を結集した支援に意欲を示した。


 

関西電力系のIT通信企業ケイ・オプティコムは、大阪マラソンの第1回(2011年)から通信企業ならではの支援を続けている。インターネットを活用した「ランナーズ・アイ」だ。応援する人はパソコンやスマートフォン、タブレットなどで、事前に登録したランナーの通過予測時間を知ることができ、ランナーと自分の位置を同時に確認できるので先回りして待ち受けることができるという画期的なプログラム。疾走する姿を見逃すことがないため応援する人に役立つだけでなく、沿道の人たちの移動が円滑に進むので大会運営側にも大きな助けとなっている。また、前区間とのタイムの差から、ランナーのコンディションがアイコンで表示される。

もちろんランナーにとっても、名前やナンバーカード(ゼッケン番号)からランナー仲間の位置や様子が分かったり、コース上の給水・給食所やトイレの位置も知らせてくれたりと、伴走する相棒のようなシステムだ。

初回から携わっている同社経営本部経営戦略グループコーポレート広報チームの長井和枝氏は「第1回大会ではコース決定から本番までの限られた時間しかなく、コース上で当社の回線が利用できるかを確認するなど地道な作業から始まりました。多くの関係部署の協力により最適な場所を割り出すまでには大変苦労しましたね。回を重ねるごとに全社から面白い企画が寄せられています。部署の枠を超えたプロジェクトチームを発足させ、通信会社ならではの取り組みを実施するまでになっています。マラソン大会には応援する人も含めると135万人以上も参加します。これほど多くの人を対象にして新技術にチャレンジでき、なおかつ喜んでもらえる場は企業にとっても貴重な機会です」と熱く語る。「ボランティアやランナーとして参加する社員も年々増え、部署を超えて感動や達成感を共有する全社的な一大イベントになっています。目に見えないインフラを見える形で提供し、これからも地元を盛り上げ、還元していきます」。社員一丸となって取り組む地元密着の支援が、大阪マラソンの魅力を一層広げていきそうだ。


 

増加するランニング人口20歳代、30歳代がけん引

現在全国で毎年2000もの大会が開催されるという。ランニングを習慣的に継続する人も年々増えている。データからは、年1回以上ジョギング・ランニングする人は推定で約1000万人。また、今のランニングブームをけん引しているのは、20歳代、30歳代のようだ。彼らが40歳代、50歳代と習慣を継続し、新たなマラソンの魅力が生まれることを期待したい。

*%は該当年代の人口に対する比率 *出典:笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」(1998〜2014年)