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DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~No.61

7つのコミュニケーション戦略

2016/11/25

「コミュニケーションデザイン」「コミュニケーションプランニング」「マーケティングコミュニケーション」…

ここ数年で、肩書や組織名称に「コミュニケーション」と付くケースが非常に多くなったように感じます。

私自身も、普段はデジタルを中心としたメディアプランニングを行っていますが、名刺の肩書は「コミュニケーションプランナー」です。

というのも、ものや情報があふれ、生活者との接点も無数に存在している今、マーケティングも、クリエーティブも、メディアプランニングも、どのように生活者とコミュニケーションを図っていくか、という「コミュニケーション戦略」の中で、生活者を動かし、クライアントの課題を解決していくことが求められているためです。

“コミュニケーション”と一言で言うと、なんともふわっとした言葉に聞こえるのですが、まさに友人や会社仲間、 仕事相手などとコミュニケーションを取ることと同じで、相手のことを知り、理解し、受け入れてもらえるような関係を作ることがコミュニケーションであり、それを企業と生活者間で関係構築していくために重要なのが「コミュニケーション戦略」です。

手書きの戦略論

今回の磯部光毅著『手書きの戦略論「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略』(宣伝会議刊)では、「コミュニケーション戦略」を「人を動かす戦略」と捉え、そのための7つの戦略・手法が手書きの図とともに整理、体系化され紹介されています。


1.ポジショニング論:「違い」が、人を動かす。
お客さんの頭の中で、競合と違った位置づけを得る戦略。

2.ブランド論:「らしさ」の記憶が、人を動かす。
お客さんの頭の中に、そのブランドらしさの連想構造をつくり、記憶に残す戦略。

3.アカウントプランニング論:「深層心理」が、人を動かす。
お客さんの隠された本音を探りあて、動機づける戦略。

4.ダイレクト論:「反応」の喚起が、人を動かす。
お客さんの直接的な反応を受け止めながら、長期的な関係をつくる戦略。

5.IMC論:「接点」の統合が、人を動かす。
お客さんとの複数の接点をつなぎ、最適なメッセージ、施策を出し分ける戦略。

6.エンゲージメント論:「関与」が、人を動かす。
お客さんが自ら関わりたくなるような施策を通して、共感しあう関係をつくる戦略。

7.クチコミ論:情報の「人づて」が、人を動かす。
ソーシャルメディア上で、情報が信頼と共感をともなって拡散することを狙う戦略。


コミュニケーション戦略は7層構造のミルフィーユ

コミュニケーション戦略は7層構造のミルフィーユ
『手書きの戦略論』より引用

本書では「コミュニケーション戦略」は、 時代の変遷に合わせて、変わったり、新たに生まれた戦略が積み重なっている状態であり、上記で述べた7つの戦略論が重なった“7層構造のミルフィーユ”である、(P.31)と述べられており、それぞれの戦略論が生まれた歴史的な流れや背景が、過去の事例とともに紹介されています。

顧客の「頭の中」での位置づけを争う

例えば、7層の構造のミルフィーユのベースにある「ポジショニング論」。

これは、1960年代後半に生まれた戦略論で、お客さんの頭の中で、他社の製品やブランドと違う位置を占め、この「違い」で人を動かす戦略論です。

昔は、世の中にないものを作ったり、モノの機能やベネフィットで競合と差別化を図れば良かったものの、今やどの市場も成熟し、スペック面での差別化が難しくなっています。その中で、顧客のニーズをくみ取りながら、自社ブランドにとって有利に働く競争軸を発見し、お客さんの頭の中で確固たるポジションを築く必要があるのです。

コンビニでどのお茶を選ぶか?

例えば、コンビニにお茶を買いに行っても、棚には何十種類ものお茶が並べられていて、まさに群雄が割拠している状況。味の好みはあるにせよ、どのお茶も総じておいしいですよね。

その中で、「このお茶!」と選んでもらうためには、まさにこの「ポジショニング論」が非常に重要であります。そしてこの「ポジショニング論」は二つの方法に分けられると本書では明言されています。

A:「オーバーテイク型」:既存の価値軸の中で競合に勝る違いをつくる
B:「カテゴリーメイク型」:まったく新しい価値軸を打ち立てて違いをつくる(P.58)

コンビニに並んでいるお茶たちに当てはめてみましょう。「オーバーテイク型」で言うと、味や成分、身体への効果など、顕在化したお客さんのお茶に対するニーズの中で他社よりも優れている点を推しだしていく方法と、「カテゴリーメイク型」で言うと、昨今人気を博している「トクホのお茶」だったり「瓶入りの高級茶」など、これまで市場になかった新しい価値軸をつくって、「新しい選択」を提示する方法とがあります。

このように本書では、7つそれぞれの戦略論が非常に分かりやすく、整理、体系化されているので、紹介されている戦略論を、現状の市場に当てはめてみたり、自身が向き合っている課題に当てはめてみたりすることで、俯瞰的にコミュニケーション戦略の全体像を見ることができるかと思います。

7つの戦略を頭に入れたうえで、課題や、ブランド・商品の特長、ターゲットなどに応じて、戦略を使い分けたり、組み合わせたりすることで、より自身のプランニングの幅を広げることができると感じました。

「人を動かすこと」に携わっている方であれば、読んで損はない、そんな一冊ではないでしょうか。

電通モダンコミュニケーションラボ

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