web2.0からソーシャルメディア、O2Oへ
今だからおさらいするデジタル技術がもたらしたメディアの変化
2013/08/29
このコラムではソーシャルメディアやO2O(オンラインtoオフライン:Web上とリアル店舗をつなぐ施策)といった昨今ニーズが高いデジタル領域の活用から見えた、従来のメディア活用の枠にとらわれないデジタル施策についてまとめます。機械的な広告配信最適化にとどまらないオンラインとオフラインの相互活用、そのアイデアの種の発見につながる事例や考え方を紹介します。
web2.0と聞いて、「ああ、そんなこと言ってた時期もあったなあ」と思われる方も多いのではないでしょうか。もしかしたら、最近マーケターになられた方はweb2.0という言葉に聞き覚えすらないのかもしれない、と心配になってしまいますが、web2.0という言葉が日本で流行り始めたのが2006年。今となっては注目を集める言葉として「ソーシャル」や「O2O」に取って代わられましたが、web2.0という考え方はメディア環境を脈々と変化させてきました。
そもそもweb2.0って何だっけ?
Web2.0と呼ばれる概念自体、とてつもなく「概念的」でweb2.0の提唱者であるティム・オライリー氏自身も、web2.0に必要な項目をリストアップしていませんでした。ただ、この時期にwebは「公開されたらそれでおしまい」ではなく、「ユーザーのアクションによって変化していくもの」になりました。この流れそのものをweb2.0と呼び、インターネットはその可能性を大きく開かせていきました。今となっては当たり前ですが、web2.0が生んだものについて振り返ってみます。
CGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)
「口コミサイト」と呼ばれるWebサイトやブログメディアはこの頃に誕生しました。それまでは、コンテンツ提供者であるサイト管理者が一方的に情報を伝えることしかできませんでしたが、サーバー上に設置するプログラムによって、ユーザーがWebページに書き込めるようになり、ユーザーによるコンテンツが様々なメディアで生成されるようになりました。ここからユーザー発信のコンテンツを重視するソーシャルメディアの誕生につながりました。
ターゲティング
従来、Web広告は新聞広告や雑誌広告同様、メディアの持つ広告枠に「期間を設定して」広告を出稿していました。すなわち、期間中にそのサイトを訪れた人は、みなさん同じ広告を目にしていました。 しかし、web2.0以降、特に広告の領域を巻き込む大きな変化が起きました。それがターゲティングです。サイトに設置されたプログラムにより、そのサイトを訪れた人がどんな人なのかを判別し、どの広告(コンテンツ)を表示させれば適切か、という出し分けを行えるようになりました。これにより、メディアや広告主は訴求したい情報をふさわしいユーザーに自動的に配信することが可能になりました。
この2つの変化は、オフラインメディアや私たちの消費行動にも少しずつ変化をもたらしました。
流行を醸成するコミュニティの誕生
CGMに始まる情報共有チャネルの拡大により、消費者は流行に関して様々な意見交換を行うようになりました。メディアから発信されるトレンドの直接的な取り込みに加えて、自分たちなりのカスタマイズを行ったり、それをオンライン上で共有して意見交換したり、ということが可能になったのです。
特に、メディアから発信されるニュースがCGMで議論されて拡散(バイラル)を起こしたり、CGM内で盛り上がったコンテンツが全国的にファンを生み、文化として定着したりするようになりました。「世の中ゴト」として発信されるトレンドは親しい身内、すなわちコミュニティで咀嚼され、「自分ゴト」として共有されるようになり、メディアや広告は一方的に情報を提供するだけでなく、どのようにしてコミュニティと親しくなり、情報を自分ゴト化してもらうか、という点に意識を向けることが、消費者とのよりよい関係づくりに必要になってきました。
ターゲティングによるマーケティングPDCA
特にサービス提供者としてユーザーと向き合う際に、ターゲティングというマーケティング予算を効率よく用いるための手法が生み出されたことにより、1ユーザー当たり、1購入当たりといった単価コストでマーケティングが行われるようになりました。そこからさらに、ユーザー属性から「この人はこんな情報を求めているだろう」というレコメンデーションも自動的に行えるようになりました。Googleのコンテンツに合わせた広告配信システム「AdSense」や、Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」といったサービスが多く見られるようになったと思います。
こういったデータによるドライブが可能な「自動的な」消費者へのアプローチによって、メディアやマーケターは直接消費者と接することなく、マーケティング効率を向上させることができるようになったのです。このドライブ可能なデータが現在では「ビッグデータ」と呼ばれ、これを解析することによる、さらなるマーケティング効率の向上が叫ばれています。
このようにweb2.0の時代は過ぎ去ったようでも、そこから生まれた変化は現在に大きな影響を与えています。特に「ユーザーとつながる」という点で、従来のメディアが持たなかった「ユーザーからの働きかけ」というチャネルが生まれたことが大きなポイントです。これによって、企業やマーケターは一方通行の情報発信ではなく、どのような情報を発信して、ユーザーに「どう動いてもらうのか」という、人を動かす施策が必要になってきました。次回は、この変化の延長線上に帰結したソーシャルメディア、O2Oといった施策に対してどのように向き合うかを考えていきたいと思います。