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CES 2017が投影するマーケティングの近未来

2017/01/30

電通イージス・ネットワーク傘下でOOH(屋外・交通広告)領域を専門とするグローバルネットワークブランド、ポスタースコープ USAのジェフ・タン戦略担当副社長は、CESはテクノロジーとブランドの近未来を見せてくれる水晶玉のようだと表現する。


 

CESは、今後消費者がどのように技術やブランドと交流していくかを見せてくれる水晶玉のようだ。 そこには、マーケティングの未来を示唆する重要ないくつかのテーマがある。

音声AIが身近なものになる

テレビ、冷蔵庫、目覚まし時計をはじめ、さまざまな機器がAmazon Alexaと結合したことは、音声AI市場においてAmazonが明らかに先行していることを示した。  Google、Microsoft、そして間もなく市場に出るとうわさのAppleアシスタントなどが、音声プラットフォームの戦いを繰り広げている。

音声AIの開発は、自動車の開発と同じほどの速度で進んでいる。現在はデジタルインテグレーションで音声認識を用いているものは1%にすぎないが、2020年には30%に増加するとみられている。

シームレスな対話と統合開発を提供できる者が、この音声プラットフォームの戦いの勝者になれる。これには膨大なデータ処理能力が必要だ。なぜなら普通の人が1分間に入力できる単語数は40 だが、話すなら145単語も話すことができるからだ。

ブランドは、例えばレストラン、おいしいコーヒーのブランド、見るべき映画などを探して音声AIに話し掛ける人々たちに対して、自分たちが最初に推薦されるように策を講じなくてはならない。「300メートル先に〇〇レストランがありますよ」と音声AIに言ってもらわなくてはならないのだ。始まったばかりの音声のSEM(検索エンジンマーケティング)と並行して、最適化の提案や音声キーワードに対する入札が行われるようになり、音声広告が再び注目を集める可能性がある。

顔とジェスチャーの認識

マーケティング担当者にとって巨大な可能性を秘めた、顔とジェスチャーのトラッキングに特化した技術が増えている。

例えば、人や車、動物を認識する屋外カメラNetatmoや、指のトラッキングや手の動きによってユーザー体験をコントロールできるジェスチャー認識システムeyeSightなどだ。

このような技術は近い将来、小売店で使われるだろう。買い物客のまぶたと虹彩をスキャンして彼女がどの服を見ているのかを検出し、彼女の表情から感情を読み取り、内臓の反応から赤い色が気に入ったのかどうかを知ることができるようになる。

ショッピングモール自身が、人間の店員よりも的確に客のパーソナリティータイプを検出し、モール内のデジタルOOHに適した場所とタイミングで情報を掲出して直接客に訴求するようになるだろう。

レストランでは、あなたが店に入ってきた瞬間に、あなたが誰なのか、好きなワインはどれかを知り、ウエーター(またはロボットウエーター)がそれに応じて、今のあなたの気分に最も適した料理とワインをお薦めするようになるだろう。

小売業者はデータを把握し分析することで、 客一人一人の、今その瞬間の感情や行動に基づいて、リアルタイムでパーソナライズされたお薦め商品を提供することが可能になる。ポスタースコープUSAは世界で初めて、ゼネラルモーターズの顔認識によるキャンペーンを制作した。OOHスクリーンの前に立っている買い物客の年齢、性別、表情に基づいて、30種類の広告映像の中から最も適したものを表示した。

GM
画像をクリックするとポスタースコープのチャネルで動画をご覧いただけます

セキュリティー、プライバシー、信頼の問題

2016年に大規模なハッキングが起こり、プライバシー問題に注目が集まった。 Yahoo、Verizon、Dropbox、さらには米民主党全国委員会までがターゲットになった。

グローバル接続されたデバイスは、現在の110億台から2025年には800億台にまで増加するだろう。これらのデバイスを作っている企業は、一般的にはセキュリティー企業ではない。近未来の世界を描いたNetflixの連続ドラマ「ブラック・ミラー」をはじめとする人気コンテンツが、コネクティッドソサエティー(接続された社会)の不気味な未来を描いている。

こうした背景の下、今年のCESでは、接続された家庭の情報機器へのハッキングを防止するネットワークデバイスであるBitDefender Boxなどのセキュリティー専門企業が注目された。

プライバシー保護対策の強化は重要であり、マーケティング担当者は真剣に取り組む責務がある。 データ保護は費用が掛かっても最優先すべき課題だ。マーケティング担当者は、データ主導型のプログラマティックメディアを継続的に発展させると同時に、個人情報保護対策を重視する必要がある。

オートメーションとIoT

昔から知られている老舗企業は、ユーティリティーを接続し自動化することで、われわれの生活をより便利にすることを目的としたスマートテクノロジー企業に生まれ変わっている。

パナソニックのスマートキッチンでは、デジタルウオールにシェフが映し出され、冷蔵庫の中にあるものを使った料理の作り方を教えてくれる。何もない大理石のテーブルは、鍋を置くとその部分だけがIHクッキングヒーターに早変わりする。 夕食が終わると、残飯は生ごみを肥料に変えるWhirlpool Zeraフードリサイクラーにより1週間に25ポンドの堆肥となり、庭の土壌を豊かにしてくれる。

コネクテッドカーは今年も注目の的だった。米国の新興電気自動車メーカー、ファラデー・フューチャー、AI搭載の電気自動車のホンダ、そしてAlexaを搭載したフォードなど、各社がコンセプトカーを展示された。10年後には、ほとんどの新車は自動運転になるだろう。自動運転車でなくても販売後にデルファイのような自動運転パッケージシステムで自動運転車へと改造が可能だ。

釣りでさえオートメーションから逃れられない。フィッシング専用潜水ドローンPowerRayは、海中を探るソナー(音響探知機)を内蔵。本体内蔵のカメラ映像によるVRライブストリーミング映像でリアルタイムで魚を見ることができる。

オートメーションは私たちの生活のあらゆる側面を変えている。消費者とマーケティング担当者の双方にとってだ。今日私たちが取り組んでいるビジネスは、技術とデータに基づくものに変身する必要がある。

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例えば5年後、私たちの職種は今日とは大きく異なっているだろう。敏腕マーケティング担当者が今後もそうであり続けるためには、頭を切り替え、新たな状況に適応し、必要な再教育を受けなくてはならない。 一つ一つの新しいトレンドは刺激的だが、こうした動きがいっぺんに押し寄せると、それに対応することは突拍子もなく大変なことだ。

CESではマーケティングの将来を垣間見ることができる。それはユーティリティー、オートメーション、およびディープ・パーソナライゼーションなどだ。 マーケティング担当者は、一つの施策で全ての消費者を一気に獲得することは不可能になるだろう。 私たちがしなくてはならないのは、消費者の生活の一瞬一瞬において、まさに自分に関係があり、価値があると思ってもらえるインタラクション(対話)を提供することだ。

近い将来、私が運転している車は、私の顔や運転パターンを分析して、私が眠くなっていることを検出して、こう言うだろう。 「ねえジェフ、あなたはもう8時間運転していますよ。ここらでちょっとコーヒー休憩しませんか? 1.5マイル先にスターバックスがありますよ」 と。私は、スターバックスのコンテンツをトリガーするデジタル広告ボードを通過して、すでに私の好みを知っている音声起動デジタルバリスタと会話するために駐車場へと入っていくだろう。 マーケティングの未来は刺激的だ。