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編集者入魂の「雑誌記事」をAIでデジタルコンテンツ化しませんか?

2017/09/01

出典 株式会社ハースト婦人画報社
出典:株式会社ハースト婦人画報社 婦人画報7月号

「なんだかんだで、雑誌の記事はよくできている」

ウェブメディアのさまざまな問題が取りざたされる昨今、雑誌ならではの価値がクローズアップされています。

しかし、インターネットやスマホアプリといったデジタルメディア上で、「いったん紙の雑誌に掲載された記事」を目にすることはあまり多くありません。

なぜなら雑誌のレイアウトそのままだとスマホの小さい画面では見づらいし、リンクもしづらく、デジタル閲覧に適さないから。

かといって、雑誌用につくった誌面データからいちいちテキストや画像を手作業でコピペし、改めてウェブ用やアプリ用にデータをつくり直すのはとても骨の折れる作業です。

「紙の雑誌用につくった記事をもっと簡単にウェブやアプリで活用できたら…」

今回は、そんな雑誌業界の願いをかなえる新サービスを紹介します!

出版社の「貴重な財産」をデジタルの世界に広げよう

電通出版ビジネス・プロデュース局の照井と申します。

私は学生時代(今もですが)、「雑誌の編集者」になりたいなぁと思いながらも、同時に勃興期だった「インターネット」が本質的に持つカウンタースピリットにも魅了され、電通入社後も、一貫して「雑誌×デジタル」にフォーカスしてきました。

そんな私は、電通が提供する電子雑誌業務支援システム「Magaport(マガポート)」を2011年に立ち上げました。雑誌コンテンツの電子書店への販売、入稿、経理、広告などを統合的に管理できる、「雑誌コンテンツのための取次システム」です。おかげさまで出版社約150 社、1000 誌以上に導入いただき、国内屈指の電子雑誌プラットフォームに成長しました。

そして今回新たにMagaport内に実装したのが、雑誌など紙媒体の誌面データを自動で“マイクロコンテンツ”に変換する「マガポート記事サービス」です。このサービスは、富士山マガジンサービスの「fujisan 記事抽出システム」を独占的に使用することで実現しました。

※マイクロコンテンツ……汎用性の高い状態に変換されたテキストや画像単位の各種データのこと。例えば雑誌であれば、「タイトル」「サブタイトル」「写真」「キャプション」「イラスト」「図」などに分解された各パーツのデータ。

雑誌記事の良さは、幅広いジャンルをカバーしつつ、それぞれの記事に深みがあり、読み物としてのクオリティーも高いこと。各ジャンルのプロである編集者やライターが企画案を戦わせ、取材をし、事実確認を行い、プロの校閲を通す。一つ一つが手間暇のかかった、価値のあるコンテンツです。

一方で、後述しますが、「高品質な雑誌記事をウェブサイトやスマホアプリ上で使いたい」という企業側のニーズが高まっています。

せっかく魂込めてつくった雑誌記事を、一度本として販売するだけで終わらせてはもったいない。デジタルの世界で多くの企業に活用してもらい、もっと多くの人にその素晴らしさを感じてもらわない手はありません!

「雑誌1冊丸ごとのPDFデータ」が「記事単位のHTMLデータ」になる!

今回のサービスで実現する「雑誌のマイクロコンテンツ化」とは、「雑誌1冊分のPDFデータ」を入稿するだけで、AIが「1記事ごとのHTMLデータ」に自動変換してくれるというものです。

サービスイメージ図
図1 「マガポート記事サービス」を利用することで、出版社は自社の雑誌記事をデジタルで活用しやすい「マイクロコンテンツ」に変換し、記事単位で配信できます

マイクロコンテンツ化した記事のHTMLデータは、出版社自身のウェブメディア、電子書店、企業のオウンドメディア、ニュース系のキュレーションアプリなどに“記事単位”で配信・販売可能です。

このマイクロコンテンツ化から配信までを、Magaport内でサポートします!

【まとめ:本サービスのポイント】
・1冊分丸ごとのPDFデータからHTMLデータに自動変換
・出版社が用意するのは、雑誌1冊分のPDFデータのみ
・変換から配信までをMagaport内で完結可能

面倒な雑誌記事のマイクロコンテンツ化はAIにお任せ

「記事単位でのマイクロコンテンツ化」がどうすごいのかを説明しましょう。

雑誌の良さのひとつに、編集者の意図でレイアウトにさまざまな変化をつけられることが挙げられます。人物やプロダクトの「切り抜き写真」を使ったり、ページの「地」に画像を敷いてその上にテキストを乗せたり…結果、レイアウトが複雑なものも多くあります。

一方、ウェブブラウザーやスマホアプリは、スクロールしながら読むことを前提としており、ある程度シンプルなレイアウトが求められます。特に、画面サイズが小さなスマホではこの傾向が強く、雑誌の誌面をそのままPDFデータでデジタル配信しても、多くの人は「読みづらい」「使いづらい」と感じます。

そこで、雑誌記事のデジタル展開に当たっては「一度レイアウトを白紙に戻し、記事を構成する文字や写真をスマホ用に再構成する」といった作業が必要となります。

しかし、雑誌誌面のPDFデータは、「タイトル」「リード」「見出し」「本文」「写真」「キャプション」などの属性が何なのか、またパーツごとの関連性はどうなっているのかを、データとして保持していません。

従来この作業は、人の目で文字や画像を確認し、「このキャプションはこの画像のもの」「この本文はこの見出しの下に」といった関係性を一つ一つ判断するしか方法がありませんでした。

マガポート記事サービスでは、これら面倒な作業が全て自動化されるわけです。

本サービスのAIは、各パーツの属性と関係性を自動で判断し、適切に並べ替えてくれます。結果、配信先のウェブサイトや閲覧するデバイスに合わせて最適な形で表示されます。 

元の雑誌記事ページAIが自動変換
スマホに最適化
2 紙の雑誌を前提としたレイアウトの「各パーツの関係性」を、AIが自動で判断して適切な順番で並べてくれます。上図はスマホですが、もちろんパソコンやタブレットの画面にも最適化されます 

このAIによる変換システムこそが、富士山マガジンサービスの「fujisan 記事抽出システム」であり、マガポート記事サービスのコアです。

手動で行うと大変な労力と時間、コストがかかっていた変換・再構成作業が、AIに任せることで時間もコストも大幅にカットできます。

【まとめ:本サービスのポイント】
・「見出し」「本文」「画像」など記事の構成パーツをAIが判断
・紙の雑誌を読むように、各パーツを適切な順番に自動で並べ替える
・AIによる自動変換のため短期間・低コストで納品可能

電子書店からオウンドメディアまで、雑誌記事への「ニーズ」は無限大!

マガポート記事サービスでHTML変換された雑誌記事は、Magaportの配信システムを利用して、配信先ウェブサイトのCMS(記事配信サービスシステム)に流し込めます。

出版社自身が「自社の雑誌サイトで自社雑誌の記事を二次利用したい」というケースはもちろん、企業のオウンドメディアや電子書店にも簡単に配信できます。

さらにMagaportから、全世界向けのデジタルコンテンツマーケット「NewsCred」へ雑誌記事を配信することも可能です。

図3-1図3-2図3-3
図3-4
3 Magaport上での配信管理の例。登録したコンテンツを、各配信先企業へAPI経由で供給するため、出版社は1回の作業で複数書店への配信作業が完了します

以下に、HTML化した雑誌記事の活用事例を列挙します。

●出版社では…「自社サイトのコンテンツを効率的に拡充」
紙の雑誌用につくった記事を自社の雑誌サイトに活用すれば、効率的にコンテンツを拡充できます。普段お使いのCMSにMagaportからデータを流し込み、即座にウェブサイトに反映できるので(再編集ももちろん可能)、作業効率も大幅にアップします!

ウェブに最適化されて読みやすくなった記事なら、雑誌をあまり読まない若年層など新規顧客にも素晴らしさを伝えられるでしょう。SNSなどに雑誌記事を使うことも容易になります。

なお、「ウェブサイト構築システムがない」または「今使っているものに不満がある」という出版社には、マガポート記事サービスの一環として、CMSやEコマース、会員管理、DMP(データマネジメントプラットフォーム)といった構築ソリューションをセットで安価に提供しています。

●オウンドメディアを運営する企業では…「良質なコンテンツの充実」
質の高いコンテンツを効率的に増やせます。例えば自動車メーカーのオウンドメディアだったら、アウトドア関連記事や自動車の批評記事を各専門誌から調達するといった活用事例も始まっています。

今後Magaportでは、HTMLファイルに対して記事単位・ページ単位で「タグ付け」されるようになります。キーワード検索により、オウンドメディアにふさわしい記事を効率的にプランニングできます。

●電子雑誌サービスでは…「スマホに最適化したユーザー体験を実現」
従来の電子雑誌は、紙の雑誌の固定化されたレイアウトのまま配信されていました。マイクロコンテンツ化されたデータなら、画面の小さなスマホにはタテに長いデザインで、パソコンにはもう少し自由度の高いオリジナルデザインで、画面サイズに合わせて読みやすいレイアウトにできます。

より読みやすくなり、Eコマースや動画とのリンクも容易になるので、ユーザーの満足度は格段にアップするでしょう。

●パンフレット、DMなども…「あらゆる紙メディアをマイクロコンテンツ化」
本サービスは、実は雑誌記事に限定したサービスではありません。PDFデータなら全てマイクロコンテンツ(HTML)に変換可能です。企業パンフレット、自治体の観光案内などにも利用いただけます!

【まとめ:本サービスのポイント】
・配信先はオウンドメディアや電子書店、ニュースアプリなどに雑誌記事を使いたい企業
・もちろん出版社自身のサイトのコンテンツも拡充可能
・雑誌だけでなくパンフレットなどもデジタルコンテンツにできる

世界中の企業オウンドメディアはなぜ「雑誌記事」を欲するのか?

企業のオウンドメディアでの「雑誌記事」活用ニーズが高まっています。現在私たちは、グルメコンテンツサービス、旅行に関する旅情報サイト、自動車メーカーなど、さまざまな企業オウンドメディアへの雑誌記事提供を進めています。

企業がオウンドメディアを運用する目的は、自社のブランディング、製品・サービスの認知、Eコマース、会員化などさまざまです。どんな目的であれ、ユーザーと良好な関係を構築したいというのは、オウンドメディア担当者共通の願いでしょう。

そのためにも、良質なコンテンツを拡充する必要があるのですが、

「質の高いコラム記事をどんどん増やしたいのに、時間とコストが足りない」

「一本一本企画を立て、プロの外部ライターに取材や執筆を依頼して、ディレクションするのは大変だ」

といった課題を抱えているケースが多いのも事実です。

そんな企業のオウンドメディア担当者にも、このサービスを大いに活用してほしいと思います。

記事を提供する側である出版社は、Magaport上でライフスタイル誌、女性ファッション誌、グルメ誌、旅行誌、スポーツ誌、自動車誌など、多岐にわたる自社雑誌の中から「企業が希望するテーマの記事」をクリックひとつでチョイスし、マイクロコンテンツ化し、手間なく提供できます。

今後はタグ検索、全文検索などの機能も使えるようになるため、配信する側、される側ともに、「雑誌記事をデジタルマーケティングに活用する」というケースも広がっていきそうです。

このサービスの根底に流れるのは、編集者へのリスペクト

そもそも、なぜ私たちがこのサービスをつくったかというと、編集者へのリスペクト、からかもしれません。

どの記事からも編集者のこだわりが感じられるし、テーマごとの情報量も多い。濃密で、信頼できるコンテンツが満載です。それなのに雑誌の寿命は短く、多くの場合月刊誌であれば1カ月、週刊誌ならたったの1週間程度しかありません。よく考えたら、雑誌はとてもぜいたくなものなんです。

そんな価値のある雑誌記事を「もっと多くの人に見てもらいたい、使ってもらいたい!」というのが、アイデアの発端です。

今のネットメディアの傾向として、誰でも手軽に記事を作成・公開でき、そして間違えたらすぐに内容を書き換えられるということがあります。気楽な分、記事を掲載する覚悟が薄れつつあるのかもしれません。プロの編集者が真摯な姿勢でつくった“本気”の記事、雑誌記事への再評価は、そんなことも原因のひとつなのだと思います。

最後に、雑誌記事がHTML化されると、記事単位での「テキストデータ活用」も簡単になります。テキストデータは検索にも翻訳にも便利ですよね。近い将来、多言語への自動翻訳の精度が上がれば、日本の雑誌記事を世界各国に、その国の言語で同時配信することもできるでしょう。グローバル展開が容易になり、新規ビジネスの可能性が広がりそうです。

本サービスは始まったばかりです。将来的には「記事単位の閲覧情報」を活用したレコメンドやターゲティング、記事を使った新たな広告テクノロジー開発、ブロックチェーン技術と組み合わせた新サービスの創出など、さらに使いやすく改良していく予定です。

私たちは、雑誌の力を信じています。これからのマガポート記事サービスにご期待ください。