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データ主導でパーソナライズされた体験経済、そこにおけるブランドの役割とは?(後編)

frogが手掛けるデザインとイノベーションの現在・未来 №6

  • frog

2017/09/04

データ主導でパーソナライズされた体験経済、そこにおけるブランドの役割とは?(後編)

多くの人々がスマートデバイスから商品購入やサービス利用を行うようになり、コネクティッドデバイスが個人のデータを生成するようになった昨今、企業はどのように顧客の信頼を得て個人情報を収集し、活用すべきなのでしょうか。消費者は、個人情報の提供に、納得できる理由と対価を求めます。

前編では、これからの企業のブランディング、マーケティングの四つの課題のうち、「価値の交換」「ブランドの信頼フレームワークの構築」という二つの課題を、さまざまな企業の実例を交えながら説明しました。引き続き、後編で残りの課題について解説します。

3.ブランド価値とプライバシー対策の整合

プライバシー対策とブランド価値が整合していますか?

ダイレクトマーケターは何十年も前から消費者データを扱っていますが、スマートプロダクトがもたらすデータの量と詳細さは過去の比ではありません。データの用途も強力です。現場が変化するにつれ、各事業部のエグゼクティブ、ITチーム、マーケター、製品/サービス企画担当者、法務顧問は、次々と新たな課題に取り組み続けています。

長文のプライバシーポリシーを掲げるだけでは意味がない

 

ローリー・フェイス・クレイナー氏(カーネギーメロン大学 計算機科学および機械工学・公共政策学科教授)が2012年、人が通常1年間に利用するウェブサイトとアプリのプライバシーポリシーをすべて読むには244時間かかるだろうと推計したのは有名な話です。

これに加え、エンドユーザー使用許諾契約(EULA)とサービス利用規約もあるのですから、自分の生成するデジタルエキゾースト(ユーザーによる日常的なデジタル技術の使用で生成される情報)の意味を理解する、ましてや管理する時間のある人などほとんどいないのは明らかです。

これだけ労力がかかると、消費者は、企業のデータポリシーや個人データの扱いに関する信頼性をいちいち評価できません。企業のデータポリシーを合理的に評価できないとなると、近道が必要です。つまり、企業の個人情報保護方針を支持する感情的な意思決定メカニズムです。

プライバシー保護に対するブランドの明確な姿勢

 

プライバシーポリシーは、ブランドイメージの一環になる必要があります。ブランドキュレーター、マーケター、熟練したデザイナーは、データ/プライバシーポリシーの管理を法律家から奪い取らねばなりません。これはすでに始まっています。

2014年から、アップルは、消費者のデータとプライバシーの保護を強く打ち出しています。iPhoneとiPadに高度な暗号化機能も装備しました。2016年には、警察や保安局が犯罪者やテロリストの電話にアクセスできるよう、米国司法省がiPhoneのバックドア作成を要請したのに対し、アップルは抵抗しました。

その姿勢を政治的にどう思うかは別として、アップルは、プライバシーと顧客データの保護を支持するという明確なメッセージを送っています。

4. 信頼エコシステムの構築

消費者データやデジタルエキゾーストを他社と共有する機会が増えている一方で、消費者の信頼を維持する方法を考えていますか?

前に述べたように(スキーヤー向けのスマートフォン用アプリEpicMixによるサービスの事例については前編を参照)、消費者データとデジタルエキゾーストを利用して優れたブランド体験を実現している例の多くは、リゾート、テーマパーク、キャンパスなど、一つの組織が全てのコンタクトポイントを管理する環境にあります。例えばEpicMixアプリは、Vail Resorts Management Companyが所有し、運営するスキーリゾート内でしか使えません。しかし、都市、車、家がますますスマートになり、接続機能を多用するようになれば、体験はさらにカスタマイズされ、計画的なものになります。

特定のカスタマージャーニーを中心として、体験がいずれは複数のブランド、企業、組織にわたるようになるでしょう。ここで新しい課題が生じます。カスタマージャーニーの幅が広くなり、複数のブランドが関与するようになった場合、どのようにブランドは自己を表現すればよいのでしょう? 消費者データとデジタルエキゾーストを企業の壁を越えて共有しながら、どのように消費者の信頼を維持すればよいのでしょう?

複数企業のデータ共有で可能になる体験

この戦略を実行している例として、再びUberを取り上げます(UberのGPSデータ追跡サービスの事例については前編を参照)。Uberのサービスは、独自のモバイルアプリケーションでクルマを呼ぶことから始まりました。しかしUberはその後、他の企業のアプリケーション内の機能としてサービスを発展させました。

例えばUnited Airlinesモバイルアプリでは、フライトにチェックインした後、Uberで空港までのクルマを予約するボタンがあります。これは、顧客の標準的なカスタマージャーニーにぴったり馴染みます。同様に、Facebook Messengerからも、Messengerを開いたままでUberを予約できます。新しいアプリを開かずにクルマを予約できる利便性を考えれば、消費者は2社の間に情報が流れてもかまわないと考えるでしょう。

提携のカギはブランドの信頼性

コネクテッドカーや自動運転車の車内体験をデザインする自動車メーカーも、同様の状況にあります。現在、ほとんどの自動車メーカーは、Sirius XMやAndroid Autoなど他社の体験を提供しています。また一方で独自の体験を構築している企業もあります。私たちは、その両方をブレンドした体験の方が市場で成功すると思いますが、マーケティングの最高責任者(CMO)は信頼エコシステムを慎重に管理し、信頼を増すようなブランドと提携する必要があります。信頼の低いブランドはエコシステムの弱点となり、信頼の高いブランドまで同レベルに引き下げてしまいます。

この記事(後編)の全文はウェブマガジン「AXIS」にてご覧いただけます。

※「Journal of Brand Strategy」2016年夏号に発表された記事を転載。


クリスティン・クラジェツキ
frogのブランド戦略リーダー。クライアントであるブランドとその顧客の間の感情的な絆づくりを担当。ストーリーテリングとキャラクター開発をライフワークと志し、17年間のキャリアにおいて、Fortune 500企業にもスタートアップ企業にも強力なブランドエンゲージメントをデザインしている。

クリスティン・クラジェツキ