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「日本で唯一」と「日本初」、似て非なる表現の効果は?~POLAリンクルショットCMを例に

2018/02/01

最近では市場が成熟し、オンリーワン・ナンバーワンの訴求は少なくなっていますが、実のところ、その効果はいかほどでしょう。「日本で唯一」「日本初」という表現について、当社の「クリエイティブカルテ」※を使って、両方の表現を使った同じ商品のCMからその効果を比べてみます。

POLAの美容液CMで表現の効果を比較してみる

今回取り上げるのは「POLA リンクルショット」。

「リンクルショット」とは、POLAが販売している「シワ改善効果のある」薬用美容液(医薬部外品)です。

女性ならお分かりの通り、美容液は基礎化粧品の中でも高値なものが多く、新しいものを買うときには吟味が必要です。商品のサイトを見たり、サンプルをもらったり、口コミをチェックしたりして自分の求める効果を得られそうなものを決めるため、その商品にはどんな特徴があるのか気になりますね。

POLAリンクルショットのCMクリエーティブを見てみましょう。

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不思議な音楽が流れる中、オレンジのクロスが揺れる奥に人の顔の形が浮かび上がります。シルクのようなやわらかい質感のクロスが、リンクルショットに触れた瞬間にピンと伸びている点は、この商品にシワ改善効果があることを示しているのでしょう。不思議な音楽とクロスが揺れるだけの冒頭部分は、一見不気味な感じもしますが、実際に人の顔・シワなどが出てくる直接的な恐怖訴求と違って、クリエーティブに凝った印象も伝わってきます。このCMにおけるテキストでの説明は「24万人が体験」「日本初。シワを改善する薬用化粧品。」の二つだけです。

商品がローンチされた当初のCMでは、トーン&マナーは全く同じで文字の説明部分が「日本で唯一、シワを改善する薬用化粧品。」となっていました。

今回は、この2素材から「日本初」と「日本で唯一」の効果を比べていきます。 結論を先に述べておくと、CMの評価が高いのは「日本で唯一」です。

グラフ1_日本で唯一、日本初

二つのCMを比べてみると、「日本で唯一」をうたった方の「広告好意度」が「日本初」のダブルスコアになっているほか、「商品・サービスの印象度」「購入・利用喚起度」も10pt以上の差がついています。

グラフ2_日本で唯一、日本初 わかりやすい、独自性を感じる

その背景には、CMで伝えたい“リンクルショットならでは”な点がきちんと伝わっていることがあると考えられ、メッセージの「分かりやすさ」「独自性」などの評価が高くなっています。

二つのCMのメッセージを比べてみると、「日本初」では、「日本初であることは分かったけれど、リンクルショットでなければいけない意味は…?」と考えてしまう人もいそうです。使う人にとっては商品が発売された順番はさほど関係ないのかもしれません。

一方、「日本で唯一」は“リンクルショットだけ”という意味であることが分かりやすく、この商品にしかない強みが伝わってきます。シワを改善したいのならこれ!と迷わず選択できますね。

「唯一」でなくなってしまったときは・・・?

「唯一」という表現は、商品のメリットを分かりやすく伝え、生活者に響きやすいということがはっきり言えると思います。しかし、「唯一」というのは言葉通りオンリーワンのときにだけ使えるもので、同じ効果・効能をうたう商品が出てきたときには違う表現をしなければいけなくなりますね。そんなときにどんな表現をすればよいのか、「リンクルショット」のCM第3弾にヒントがありそうです。

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音楽・背景などの要素が変わった他、文字での訴求が「発見。世界でひとつのシワ改善メカニズム。」「日本初承認。肌本来の力で、シワを改善する。」と変わっています。(ちなみにこのCMでは、布の代わりにアメリカのキャニオンエックスという砂でできた有名な渓谷の映像を使っています。1日10人しか入れない名所で撮影されているということで、CM制作にも力が入っていますね)

評価はいかに! 調査結果を下図に示します。

グラフ3_日本で唯一、日本初、最新CM

このCMでは、「広告好意度」「商品・サービスの印象度」「購入・利用喚起度」など「日本初」で下がったスコアが回復傾向にあります。

POLAは、新しい「オンリーワン訴求」に成功

CMの評価が回復している要因のひとつに、新しいオンリーワン訴求が盛り込まれていることが考えられます。「世界でひとつのシワ改善メカニズム」という表現でオンリーワン訴求のポイントを「商品そのもの」から「仕組み」に変えていますね。「シワ改善」をうたう薬用化粧品は他にも出てきていますが、リンクルショットがPOLA独自の“メカニズム”でシワを改善することを「世界でひとつの」と表現し、「日本で唯一のシワ改善“化粧品”」に替わるオンリーワン訴求に成功しています。オンリーワンの母数が「日本」から「世界」に変わったことで、インパクトも強まっているかもしれませんね。

また、「日本初“承認”」という表現で権威付けされた商品であることもアピールしています。「承認」という言葉がつくと箔がついて、多少値が張っても、それに見合う効果が得られそう、と期待してしまいますね。

グラフ4_説得力のある、独自性を感じる、こだわりを感じる

 

新しいオンリーワン訴求が奏功し、「説得力」「独自性」「こだわり」の評価が3素材の中で最も高くなっています。このCMで最も伝えたい、“リンクルショットならでは”がきちんと届く、分かりやすく刺さりやすいメッセージであったといえます。

商品がオンリーワンでなくても、生活者の心に刺さるオンリーワンのポイントを訴求できると、CMの評価は高まるといえそうです。

今回はCMにおける「言葉の表現」に着目してみました。生活者はその変化に敏感であることが分かります。化粧品の業界では日々研究が進んでおり、新しい商品が続々と発売されています。女性としてはうれしい限りですね。筆者も、美容液にお世話になる、悩ましい年齢に差し掛かってきたので、今後も発売されているそれぞれの商品がどんな特徴を持っているのか、生活者としてCMにも注目していきたいと思います。

※クリエイティブカルテのご紹介

クリエイティブカルテは、ビデオリサーチのCM評価調査です。従来では難しかった動画での評価データを取得している上に、過去のさまざまなCMのデータを蓄積しているため、業界内や全業種との比較することも可能です。週2回のペースで調査を実施しており、キャンペーンに合わせたタイミングでCMへの評価・反応をスピーディーに確認できます。


この記事は2017年12月に発刊されたビデオリサーチのVR Digestを基に編集したものです。