第5回 日経「星新一賞」
一般部門グランプリは、AIをテーマにした作品に決定
2018/03/07
第5回 日経「星新一賞」(主催=日本経済新聞社 協賛=JBCCホールディングス、東京エレクトロン、アマダホールディングス、日本精工、旭化成ホームズ、スリーボンド)の表彰式が3月3日、東京・港区の国立新美術館で行われた。
同賞は、生涯で1000以上の作品を生み出し「ショートショートの神様」と呼ばれた作家・星新一氏にちなみ、理系的発想や独創的なアイデアから生まれた作品を評価する文学賞で、2013年に創設された。
冒頭、日本経済新聞社の鈴木克之常務執行役員は「この賞は、今なお輝いている稀代の作家・星新一氏の偉大なる功績を継続するために創設した。賞のユニークな点は、いかに書くかよりも何を書くかを重視しているところ。受賞した15作品は現実の科学を刺激する素晴らしい作品だと」とあいさつ。応募作の中には、人工知能(AI)によって書かれた作品が7作あったことに触れ「残念ながら最終選考には残らなかったが、賞の可能性を広げるエピソードだ」と話した。
今回は一般部門1766作品、学生部門162作品、ジュニア部門281作品の応募があり、一般部門グランプリは八島游舷氏の「Final Anchors」、学生部門グランプリは松尾泰志氏の「冷蔵庫狩り」、ジュニア部門グランプリは天波氏の「シズク」がそれぞれ受賞した。
「Final Anchors」は、衝突まで 0.5 秒と迫った2台の車に搭載されたAIたちによる「最後の審判」を描いたSF作品。人間の反応速度では間に合わないわずかな時間で、確実に一方を生かすため、どちらの車両が自己破壊するか、人間を差し置いてAIによる議論が展開される。
同時応募の「蓮食い人」が優秀賞を受賞して「ダブル受賞」となった八島氏は「応募を始めて、グランプリ受賞まで5年かかった。ダブル受賞できたのは、選考が公正に行われた結果だと思う。星新一賞を取るのが物書きとしての目標だった」とコメントした。
審査員の作家・貴志祐介さんは同作品について「読んだ瞬間、全会一致でグランプリだと思った。この作品にはさまざまな意味で“してやられた”と感じる。これまでに読んだショートショートすべての作品の中で20本の指に入る。星新一の作風とは180度違うが、これだけの傑作だから、先生が存命であれば感想を聞いてみたい」と講評した。
審査員(敬称略)
・太田光(タレント)
・貴志祐介(小説家)
・山崎直子(宇宙飛行士)
・松尾豊(東京大特任准教授)
・石田秀樹(地球村研究所代表・東北大名誉教授)
受賞作品(敬称略)
<一般部門>
グランプリ(星新一賞) 八島游舷「Final Anchors」
優秀賞(JBCCホールディングス賞) 小竹田 夏「Q.E.D.の後で」
優秀賞(アマダホールディングス賞) 積木一棋「帰る旅」
優秀賞(旭化成ホームズ賞) 加瀬信行「ひとめぼれ」
優秀賞(東京エレクトロン賞) 弓永端子「終末のハスラー」
優秀賞(日本精工賞) 白木レン「20X3 年のため息」
優秀賞(スリーボンド賞) 八島游舷「蓮食い人」
<学生部門>
グランプリ(星新一賞) 松尾泰志「冷蔵庫狩り」
準グランプリ 鈴田直也「道路標識のあいつ」
優秀賞 廣江聡太郎「『件名:報告コード 2H1M1T120470930 添付ファイルあり』」
<ジュニア部門>
グランプリ(星新一賞) 天波「シズク」
準グランプリ 青木志央理「進化」
優秀賞 松本ひなた「メニューと料金」
優秀賞 島田織彰「百年後のぼくの街」
優秀賞 出口 龍「リバース」