「人とロボットが共生する世界」を品川のオフィス街で社会実験!
2018/04/04
電通国際情報サービス(ISID)は3月20~23日、自動宅配ロボットと遠隔コミュニケーションデバイスを用いて、東京・品川インターシティエリアと京王品川ビルの2拠点間で物品配送の実証実験を実施した。
これは、同社のオープンイノベーションラボ(イノラボ)と東京大学暦本研究室が共同開発中の遠隔コミュニケーションデバイス「TiCA(チカ)」を用いた、ロボット活用の社会実験として行われたもの。
ZMPと日本マイクロソフトが技術協力を行うほか、走行ルートとなる施設やビルを運営する新日鉄興和不動産、品川グランドコモンズ、京王電鉄が協力するオープンイノベーションとして取り組んだ。
■実験目的
- 人とロボットが共生する社会に向けて、最新の自律走行技術の検証
- 人とロボットのコミュニケーションをより充足させる技術の検証
実験では、ZMPの自動宅配ロボット「CarriRo Delivery(キャリロデリバリー)」が、スタート地点の品川インターシティ内カフェで宅配ボックスにコーヒーを収納。技術者伴走のもと、自動運転で数百メートル離れた京王品川ビルへと移動し、イノラボのスタジオにコーヒーを届けた。
事前に予定コースを360度カメラで撮影して、ルートをプログラミング。さらにロボットに内蔵された多数のセンサーで安全に正しいルートを進めるように準備した。
CarriRo Deliveryの本体上部には、イノラボと東京大学暦本研究室が開発中のウエアラブル型遠隔コミュニケーションデバイス「TiCA(チカ)」が搭載された。
TiCAはIoTならぬIoA(=Internet of Abilities)をコンセプトに開発された。IoAとは離れた場所にいる人間やロボットの“能力”を遠隔地からネットワークを通じて“拡張”する試みで、TiCAの場合は、もともとは人間の肩に装着してサポートしてくれるデバイスとして開発。今回はCarriRo Deliveryが本来持っていない「音声とLEDによる対人コミュニケーション」「360度全天球カメラによる視覚情報」といった能力をTiCAが付加する形での実験となった。
全天球カメラを持つTiCAの視界は、遠隔地にいるオペレーターとつながっている。複雑なコミュニケーションの必要性が生じると、遠隔地にいるオペレーター(人間)が介入し、TiCAとして現地の人と音声コミュニケーションが取れる仕組みとした。このとき、TiCAは目の前で会話している相手に対して、オペレーターの視線情報に応じたLED表示による表現を行い、「まるで目を合わせて会話しているような感覚」を生じさせる設計になっている。
CarriRo Deliveryの自動走行中には、通行人や障害物が進行方向をふさいでいたり、エレベーターに乗りたいのにボタンを押せないといった、さまざまな「エッジケース」(極端な状況)が発生する可能性がある。今回の実験では、そうした状況に対して遠隔地のオペレーターがTiCAに介入し、現地の通行人と音声+LEDによるコミュニケーションを図ることで、CarriRo Deliveryをサポートした。
実験が始まると、カフェでコーヒーを搭載されたCarriRo DeliveryとTiCAのコンビは、数百メートル離れたISID社屋内イノラボスタジオを目指して自動走行を開始。技術者やメディアが見守る中、分岐点も間違えずにスムーズに進行していった。
途中に配置された「想定され得るエッジケース」では、必要に応じてTiCAにオペレーターが介入し、通行人役のスタッフとのコミュニケーションを行いながら状況をクリアしていった。
イノラボの森田浩史チーフプロデューサーは、今回の取り組みについて「世界中で自動宅配ロボットの取り組みは進んでいるが、100%自動化にこだわってしまうとサービス化が難しい。TiCAのような形で人間がロボットの能力を補うことで、一気にサービス化の可能性が広がるだろう。将来的にはAIを搭載し、状況に応じて簡単な音声コミュニケーションは自動でできるようにしたい」と意義を語った。
また、CarriRo DeliveryやTiCAが構想通りの力を発揮するためには、5G回線やGPSの進化が欠かせないとし、「今後、5Gが実用化されると、TiCAからの全天球映像を遠隔地のオペレーターにリアルタイムで送信することも可能になる」「2020に向けて都市のユニバーサルデザイン化が進むと、“バリアフリー”と同時に“ロボットフリー”な環境になっていく」と期待を寄せた。