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長距離型ドローンで何ができるか?No.1

僕らのドローンで、世界の空を変える。

2022/11/08

こんなことを言うと、にわかには信じてもらえないかもしれない。でも、これがあながちホラ話でもないことがこの記事を読み終えたときにお分かりになると思う。

<目次>
マニアックなラジコン飛行機の技術をドローンへ

長距離飛行が可能な、超高性能ドローンが誕生!

回転翼と固定翼の“いいとこどり”をしたドローン

企業との共同実験に成功。世界の人々の役に立つことを目指す
 


 

 

マニアックなラジコン飛行機の技術をドローンへ

電通でクリエーティブ・ディレクターを務めていた私は、プライベートではラジコン飛行機のハイエンドなエアロバティック競技にのめり込んでいた。クルマに例えるならF1の世界。操縦技術のみならず航空力学、機体の設計・製作、機体調整、整備技術、気象など、さまざまな知見やノウハウを20年以上磨き込んでいた。

そして世は「ドローン産業革命」などと言われる時代へ。つまりドローンが世の中のお役に立つ、ビジネスになる世が到来した。ドローンは無人航空機のことだから私の飛行機もドローンじゃないか。趣味の超マニアックな世界がいつの間にか時代の中心になるというなんともいえない高揚感に包まれた。

電通には社内横断ラボ「電通ロボット推進センター」があり、ドローンもロボットだろう、ということで参加を打診。私の個人的なユニークネスが会社に価値を生み出せたら最高だ、というのが理由だった。

その後、私自身はクリエーティブ・ディレクターとして起業を決意。2020年末に電通を退社し、グループ会社のニューホライズンコレクティブ合同会社と業務委託契約。「電通ロボットプロデュースセンター(現在名)」には社外スタッフとして参加を継続することになった。

長距離飛行が可能な、超高性能ドローンが誕生!

そしてその直後、旧知のラジコン仲間からこんなオファーが来ることになる。「画期的な産業ドローンができたので一緒に会社を立ち上げませんか」。彼はエアロバティック競技の世界チャンピオンであり機体設計のエキスパートだ。急いで開発機体を確認。これが素晴らしかった。

翼長2m、垂直離着陸型(VTOL)の飛行機タイプのドローンで、最長2時間、120km飛行可能、飛行安定性は文句なし。2021年4月にドローンベンチャーである「株式会社 空解」を立ち上げ、7月には独自の実証実験を行った。

VTOLドローン

銚子市から茨城県河内(かわち)町まで利根川上空62kmの自動飛行に成功。搭載物は薬、モバイルバッテリー、ビタミン剤、マスクなどの緊急物資。これは電動ドローンとしては日本最長飛行距離記録となった。このスピード感は、立ち上げメンバー4人が全員ラジコン飛行機のエキスパートであるからこそだと思う。

公開実証実験の様子
公開実証実験の様子

回転翼と固定翼の“いいとこどり”をしたドローン

ドローンについて、ここでちゃんと説明しておきたい。

ドローンと聞いて普通に頭に浮かぶのは、4枚のプロペラが四方に付いているマルチコプタータイプ。いわゆる撮影で使うあのドローン。高度なセンサー制御や4つのモーター制御によって非常に安定した飛行が可能で、操縦も比較的簡単だ。それなりに大型になれば荷物の運搬もできる。ドローン輸送の実証実験を行った記事をよく見かけるが、ほぼこのタイプのドローンを使用していると思っていい。

マルチコプタードローンの登場以前から存在しているのは、シングルローターのいわゆるヘリコプタータイプで、昔から農薬散布や撮影で使われている。ただし操縦はそれなりに熟練が必要だ。ここまでが回転翼系。で、現在世界でがぜん注目を浴びているのが固定翼系、つまり飛行機型のドローンなのである。

飛行機は翼があるので空気の流れにより浮力を発生させることができる。つまり滑空できるので、プロペラを回転させて無理やり(?)浮力を発生させている回転翼系とは違い、少ないエネルギーで長距離飛行できる。

マルチコプタードローンはバッテリーの限界で10km、20分程度しか飛行できないが、固定翼ドローンは120km、2時間程度飛行ができる。速度も速い。もうお分かりだと思うが、輸送の仕事を任せるなら固定翼に軍配が上がる。

しかし固定翼ドローンにもデメリットはある。離着陸にはそれなりの長さの滑走路が必要で、回転翼系で可能なホバリング(停止)、バック飛行などはできない。どちらも一長一短がある。じゃあ回転翼と固定翼をがっちゃんこして“いいとこどり”したドローンを作ればいい、という発想がVTOL固定翼ドローンなのである。

これなら、離着陸ではマルチロータードローン状態、水平飛行では飛行機状態となり、滑走路いらずで長距離長時間運行が可能だ。機構は違うがオスプレイをイメージしていただけるといい。今世界中で躍起になって開発が進められているのも、納得がいく。

VTOL固定翼ドローン

比較表

とはいえ、市販されているVTOL固定翼ドローンは世界を見渡しても数種しかなく、非常に高価。飛行性能も特に優れているとは感じられなかった。われわれは「性能が良くて価格が半額以下」のVTOL固定翼ドローンの市販化を目標にし、2021年10月に実現。こだわったのは軽量化で、軽さこそが性能を生むことはラジコン飛行機で得た知見だ。

企業との共同実験に成功。世界の人々の役に立つことを目指す

その後「空解」は企業との共同実験に次々と成功する。2021年11月からヤマト運輸、ティーエスアルフレッサ、NTTドコモと連携し、岡山県和気町において医薬品輸送ネットワークの構築に向けた実証実験におよそ2カ月間携わり、山越えルートなど難易度の高いコースを飛行させて着陸は民家の庭へピンポイントで行った。

2022年3月には渡良瀬(わたらせ)遊水地大規模ヨシ焼きにおいて、広範囲の消火確認を20kmの飛行により短時間で完了。6月にはNTTドコモと共同実験を沖縄で行い、豊見城(とみぐすく)市から座間味(ざまみ)村までの海上ルート42kmの物資輸送に成功。NTTドコモの高精度位置情報システムを利用し、着陸精度は誤差数センチというレベルに達した。そのほか宮古島で、ドローンによるスムージーデリバリーというエンタメ系にもチャレンジしている。

ヤマト運輸 岡山県和気町医薬品配送実証実験に参加
ヤマト運輸 岡山県和気町医薬品配送実証実験に参加
NTTドコモと共同で沖縄実証実験を実施
NTTドコモと共同で沖縄実証実験を実施
自動飛行させるためのPC画面
自動飛行させるためのPC画面

現在、翼長3.5mの大型機を開発し、飛行距離300km以上を目指しているのだが、これが実用化できると南西諸島などの沖縄諸島、伊豆七島の島々をつなぐことも可能になる。将来的にはインドネシアやフィリピンなどの島国でも役に立つかもしれない。長距離飛行ができると、考えもしなかったさまざまなソリューションが生まれてくるわけである。しかも人の移動がなく、少ないエネルギーで飛べるからCO2排出は少ないし、非接触型でもある。

とはいえ、課題もいろいろある。まずは法整備。ドローンはどこでも自由に飛べるわけではない。これは2022年末に改正航空法が施行されるので注目したい。そして機体のさらなるアップデート。社会実装のためには、セキュリティ面や信頼性、耐久性を徹底的に突き詰める必要がある。ドローンに対する社会受容性を高めることも大切で、ここは安全・安心な運用がポイントになる。ドローンは怖い、危ない、というイメージをなくしていくには時間と努力が必要だ。

開発中の大型機 翼長3.5メートル
開発中の大型機 翼長3.5メートル

現在、電通ロボットプロデュースセンターとアライアンスを組み、新たなソリューションビジネスを模索している。世界中の自治体と組んでへき地・離島・被災地への物資輸送を行い移動弱者のQOL向上を図ること、海岸線などの長時間上空監視・捜索なども、もちろん検討している。さらに、ドローン×DX、ドローン×エンタメ、ドローン×教育など、ドローン業界からは生まれてこない電通らしいユニークで斬新なアイデアをカタチにしたいと考えている。ぜひ期待していただき、興味がある方は電通ロボットプロデュースセンターへお気軽にご相談いただければと思う。

できるかどうかはわからないけど、僕らは本気で考えている。
いつか世界の人々の役に立つ、いつか世界の空を変えていく。

<お問い合わせ>
電通ロボットプロデュースセンター
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