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広告出演における契約料って?

3分で分かる広告の法律落とし穴No.6

2018/04/16

広告出演における契約料って?

この連載では、書籍『広告法』の中から、特に実務的にフォーカスしたい点を取り上げて、Q&A形式で解説していきます。

今回は、広告出演契約を中心に、広告に肖像写真・動画や氏名など(以下「肖像など」といいます)を利用するケースの法律関係について取り上げます。

Q.肖像権法というような法律は、日本にはないとも聞きました。

なぜ、そのような法律がないのに、広告出演契約にあたってタレントに対して契約料を支払わないといけないのでしょうか? 出演料ということであれば、出演行為という役務提供の対価なので理解できるのですが、契約料についてはよく分かりません。
広告出演契約は、広告に出演してもらいたい広告主と、対価をもらえれば出演してもよいタレントとの間の合意によって成立するものです。出演の条件として契約料の支払についても両者の合意がなされた場合には、その合意に基づいて支払われることになります。したがって、Qの「なぜ支払わないといけないのか」という問いには、「支払う合意をしたから」ということになります。

では、なぜ、広告出演契約においては、出演行為の対価とは別に契約料を支払う合意をすることが多いのか、という側面から検討をしたいと思います。

A. 確かに肖像権法のような法律はありませんが、自分の肖像などを無断で利用された際に、人は、利用を差し止めたり損害賠償を求めたりする権利があります。これは、いろいろな事件の判例が積み重なることで、認められるようになったものです。

タレント・スポーツ選手のような著名人の肖像には、顧客を引き付ける力(顧客吸引力)があります。このような顧客吸引力を有する自己の肖像などについて第三者が無断利用した際に、差し止めたり、損害賠償を求めたりする権利(いいかえれば、第三者に対価を得て利用させることができる権利)をパブリシティ権といいます

広告出演契約の契約料は、タレントのパブリシティ権の処理(タレントの肖像などの利用許諾)の対価と考えることができるでしょう。
著名人は、パブリシティ権に基づき、自己の肖像が無断利用された場合には、利用を差し止めたり、損害賠償を求めたりする権利があるといいました。そのため、実務的には、対価を支払うことで肖像などの利用許諾を得るわけです。

これは、著名人の顔が写った写真や映像を広告に利用するケースや、著名人の氏名を利用して「●●さんが推奨」というような広告を制作するケースには、当然に当てはまることはお分かりいただけると思います。

【基礎知識】

肖像や氏名をそのまま利用しないケースはどのように考えるべきでしょうか。また、著名人は存命の人間ということを想定されると思いますが、すでに亡くなった方や人間以外のモノについてはどのように考えるべきでしょうか。

1.肖像・氏名をそのまま利用しないケース

①身体の一部をタレント本人と分かる方法で利用
②著名人のイラストをタレント本人と分かる方法で利用
⇒いずれも、著名人の顧客吸引力を無断利用していることになるのでパブリシティ権侵害の問題となり得る。
③そっくりさんの起用
⇒以下の観点で利益衡量※1が必要な難しい問題
・本人の肖像を利用していない点
・モノマネもエンターテインメントとして尊重されるべきである点
・著名人本人の肖像などの人的属性そのものは利用しないものの、著名人本人の有する(つくり上げてきた)イメージを利用するという点

ただし、著名人本人であるかのような誤認をさせないこと、および著名人本人の誹謗中傷、名誉棄損に該当しないことなどの配慮は必要。

※1法律の合理的な解釈のために、当事者や利害関係人の利益その他の公益などを比較すること。

2.亡くなった著名人の肖像などを利用するケース

①確立した考え方はない。諸事情を勘案して、ケースバイケースで考えるべき。
②広告ビジネス実務の観点から、勘案すべき事情としては、以下のようなものがあり得る。
(1)直系の子孫が存命であるか
(2)委託を受けた肖像を管理する者がいるか
(3)愛好団体がいて、広告の使用につき、過去にクレームがあったか
(4)政治・信条・外交・宗教上の理由により、広告使用には不適切ではないか
(5)事実誤認がないか、誹謗中傷になっていないか

(1)(2)の場合には、(法的にその必要があるか否かは別として)直系の子孫や肖像を管理している会社に対して広告での肖像などの利用料を支払うことはある。

3.人間以外の顧客吸引力を有するモノ(例えば著名な動物※2や著名な建物など)を利用するケース

①モノのパブリシティ権は法的には認められない。
②しかし、モノの形状や名称などが顧客吸引力を有すると考えられるのであれば、そのモノの所有者や管理者が、無断使用者に対して、何らかの主張をすることは十分にあり得る。
③実務上はそのようなクレームを避けるために、第三者が所有または管理をするモノを広告に使用する場合には、十分な検討が必要。所有者または管理者の承諾を得て(使用料を支払って)広告に使用するということもめずらしくはない。

※2 かつて、著名な競争馬の名前を、競走馬の所有者の承諾なく使用したゲームソフトがあり、このゲームソフトを制作・販売した会社に対して、競走馬の所有者が、ゲームソフトの販売の差止め、損害賠償請求を求めた事案がありました。

詳しくは、広告に関連する法規制を網羅的に、実務的に、理論的に解説を試みた『広告法』を手に取ってみてください。