3分で分かる広告の法律落とし穴No.7
そこで撮影していいですか?
2018/05/22
この連載では、書籍『広告法』の中から、特に実務的にフォーカスしたい点を取り上げて、Q&A形式で解説していきます。
連載No.5で一部紹介しましたが、広告の撮影をする場合に留意しなければならない法律関係について、さらに取り上げます。
Q.屋外で広告撮影を行う予定です。
道路での撮影も行うので、所轄の警察署に道路使用についての許可は得ましたが、何か他に注意すべきことがあるでしょうか。
また、このロケでは道路だけではなく、海岸での撮影も行う予定です。海岸については、警察署は関係なさそうなので、自由に撮影をしてもよいでしょうか。屋外での広告撮影において、警察署から道路使用許可を得る必要があることはよく知られていることかと思います。
ただ、それ以外にやらなければいけないこと、留意しなければいけないことはあるのでしょうか。
A.許可を得た道路での撮影においても、背景に第三者や第三者が管理するものなどが写り込む場合には、注意が必要です。
また、道路以外の場所でも管理者に許可を得なければならない場合があります。海岸もそのひとつです。屋外での広告撮影においては、さまざまな留意すべきことがあります。ここでは、大きく三つの観点から見ていきたいと思います。
1.第三者が所有・管理する場所で撮影をする
2.屋外で撮影をしたことで第三者の所有物・管理する物が写り込んでしまう
3.無人小型ヘリコプター(いわゆるドローン)による撮影
【基礎知識】
1.屋外での広告撮影について、撮影場所という観点からは以下の点に留意が必要です。
(1)私有地・管理者のいる場所
私有地や管理者のいる場所において撮影を行う場合には、所有者などの許可を必要とします。(民法)
(2)道路での撮影
道路において一般の通行の妨げになるような撮影をする場合には、事前に所轄の警察署の許可を得る必要があります。(道路交通法)
(3)海岸・河川敷などでの撮影
海岸などでの撮影に関して、撮影用の機材を設置してその場所を占有するケースなどは、海岸管理者の許可を得なくてはなりません。(海岸法)
河川敷などでの撮影についても、同様に考えられます。(河川法)
(4)公園での撮影
管理しているのが国か地方自治体かなどによって、適用される法令は異なりますが、公園管理者などから許可を得る必要があるでしょう。(都市公園法、都市公園条例、自然公園法)
また、撮影自体が規制されている公園もあります。
2.屋外での広告撮影に限定されるものではありませんが、屋外で撮影する場合に発生しやすい問題として、写り込みの問題があります。
(1)建物や広告物、看板、民家や一般人などの写り込み
写り込んだ建物、広告物、看板などの所有者や管理者から著作権侵害、不正競争防止法違反、不法行為などの法的な理由に基づいて、権利主張が行われることがあり得ます。
(2)一般人の肖像や民家の写り込み
その一般人から肖像権侵害、民家の居住者などからプライバシー権の侵害などの権利主張が行われることがあり得ます。
いずれも法的な請求が認められる可能性は低いとは考えられますが、完成した広告に対してクレームがなされること自体が問題でしょうから、撮影においては背景の写り込みにも十分に配慮する必要があるでしょう。
例えば、一般人の写り込みのケースにおいては、できる限り事前に本人の了解を得るように努める、それができない場合には、編集過程において個人が特定できないように配慮します。
3.昨今、広告撮影の現場においても、ドローンが利用されることが増えてきました。ドローンの活用によって、従来は撮影することが困難だったアングルから、低コストで斬新な映像を撮影することができるようになりましたが、一方では、いくつかの事件・事故が報告され、ドローンの危険性も指摘されてきました。
これを受け、2015年、ドローンの(1)飛行に許可を必要とする空域と(2)飛行方法などの規定が盛り込まれた改正航空法が施行されました。なお、航空法だけでなく、地方自治体の条例によってドローンの飛行が禁止されているケースもあります。
詳しくは、広告に関連する法規制を網羅的に、実務的に、理論的に解説を試みた『広告法』を手に取ってみてください。