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3分で分かる広告の法律落とし穴No.8

インターネットでの表示特有の問題とは?

2018/07/12

この連載では、書籍『広告法』の中から、特に実務的にフォーカスしたい点を取り上げて、Q&A形式で解説していきます。

Q.通信販売のウェブページを構築しようとしています。
商品の紹介や価格(割引価格や割引条件を含みます)、申し込み手続、支払い方法、返品など非常にたくさんの情報を書かなければならないので、いくつかの別のページに情報を書き分けることになると思います。
この場合、何か留意点はあるでしょうか?
インターネットというメディアの特性上、一般消費者が情報を一望できないことがあります。Qにあるようにいくつかのページにまたがる場合や、スクロールをしないと全ての情報を見られないような場合です。

このようなインターネットのメディア特性上、何か表示の方法について気を付けるべきことはあるのでしょうか。

A.インターネット上の表示においても、一般消費者を誤認させて不当に顧客を誘引するような表示をすることはできません。
表示の方法によって一般消費者を誤認させないような注意が必要です。
インターネット領域特有の法規制も存在します。もっともインターネットでの広告についても多くの場合、現実社会での適用を予定して制定された法規制が適用されます。そのような法規制の一つが連載No.4で紹介した景品表示法の不当表示の規制です。

今回は、インターネットにおける表示について、不当表示の規制の観点から注意点を解説します。

【基礎知識】

インターネットにおける表示についても、景品表示法上の留意点は他の媒体と特段の違いはありません。商品などに関わる事項について、一般消費者を誤認させて不当に顧客を誘引するような表示をすれば、不当表示に該当する恐れがあります。

インターネット消費者取引においては、一般消費者は表示内容全体を一望しにくいため、店舗での対面販売よりも商品選択や注文などにおける誤認を招きやすく、その結果、消費者被害が拡大しやすいという特徴があります。そのため、以下のようなインターネットにおいて表示特有の問題点や留意事項が存在します。

1.ハイパーリンク内の重要情報表示のポイント

インターネットでの取引においては、ハイパーリンクを用いて情報をリンク先に記載する場合があります。具体的には、一般消費者がウェブページ上に埋め込まれた色文字や下線付きの文字・色枠付き画像など(以下「ハイパーリンクの文字列」といいます)をクリックすると一般消費者が閲覧している画面がリンク先に移動し、リンク先の表示を閲覧することができるというようなものです。

リンク先に一般消費者が商品など選択する上の重要な情報(マイナス情報を含む)を記載されている場合もあるでしょう。表示の方法によっては、一般消費者がマイナス情報など重要な情報を取得することができないこともあります。その場合、商品などの内容または取引条件について、実際のものまたは競争事業者に関わるものよりも著しく優良または有利であると一般消費者が誤認することもあり、景品表示法上の不当表示となり得ます。

具体例

「気に入らなければ返品できます」と強調表示した上で、「商品の到着日を含めて5日以内でなければ返品できない」という返品条件をリンク先に表示する場合において、ハイパーリンクの文字列を抽象的な「追加情報」というような表現にするようなケース。

ハイパーリンクのリンク先に商品などを選択する上の重要な情報を記載するのであれば、そのリンク先に一般消費者がアクセスしやすいようにしなければなりません。

具体的には、ハイパーリンクの文字列について

①一般消費者がクリックする必要性を認識できるようにするため、リンク先に何が表示されているのか明確に分かる具体的な表現を用いる。

②一般消費者が見落とさないようにするため、文字の大きさ・配色などに配慮し、明瞭に表示する。

③一般消費者が見落とさないようにするため、関連情報の近くに配置する。

などの留意が必要です。

2.情報の更新日表示のポイント

インターネットでの取引においては、ウェブページ上の表示内容(商品などの内容または取引条件を含む)を簡単に変更することができます。情報の更新日が表示されておらず、表示内容がいつの時点のものであるかが分かりにくいような場合を想定してみてください。

その場合、以下のような問題が生じ得ます。例えば,「新製品」「最上位機種」などと商品の新しさを強調表示している場合を想像してみてください。この場合、表示内容がいつの時点のものであるかが分かりにくければ、既に「新製品」「最上位機種」ではなくなったものであっても、いまだに新しい商品であるかのように誤認されるのではないでしょうか。

また、「今日から一週間 大安売り」などと表示している場合に、表示内容がいつの時点のものであるかが分かりにくければ、大安売り期間が終了していたとしても、いまだに大安売りが継続しているかのように誤認されるでしょう。

従って、表示内容がいつの時点のものであるのか、情報の更新日が一般消費者に分かりやすく伝わらなければなりません。

具体的には、

①情報の更新日については、表示内容を変更したら最新の更新時点および変更箇所を正確かつ明瞭に表示する。

②表示内容が過去のものであって現在の事実と異なっているものについては、ただちにウェブページの内容を修正する。

などの留意が必要です。

以上が,インターネット上の表示における景品表示法上の留意点(の一部)でした。

詳しくは、広告に関連する法規制を網羅的に、実務的に、理論的に解説を試みた『広告法』を手に取ってみてください。