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『Amazonはなぜリアル店舗を展開するのか?』

DMCラボ・セレクション ~次を考える一冊~ №76

  • 川畑 茉衣

2018/04/27

『Amazonはなぜリアル店舗を展開するのか?』

週末、買い物をしようと街まで出掛けたのですが、財布を忘れてしまいました。

ただ、スマホは忘れずに持っていた現代版サザエさんな私は、「Apple Pay」で移動して、

洋服屋で試着して欲しくなった服は「ZOZOTOWN」で、デパートで試してよかった化粧品は「Amazon」でポチって後日受け取り、何の不便もない1日を愉快に過ごすことができたのでした。

一生活者としても明らかな日常での買い物体験の変化と、器用にリアルとネットを行き来する自身の「オムニチャネル化」を改めて実感したわけなのですが、各企業もそんな顧客の行動やニーズの変化に合わせて、顧客との接点、つながりを作るべくしのぎを削っています。

これまでは「オムニチャネル」というとオフライン企業を主語にして語られることが多かったように思いますが、Amazonのホールフーズ買収や、無人コンビニ「Amazon Go」オープンのニュースなど、オンライン企業のオフライン進出にも注目が集まっています。

オンラインとオフラインがシームレスにつながる

今回、ご紹介する本は『世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略』(日経BP社)。

『Amazonはなぜリアル店舗を展開するのか?』

本書では、ここ数年盛んに言われてきた「オムニチャネル」を「チャネルシフト」と再定義し、Amazonなどを代表するオンラインを基点にした企業が、顧客との新たなつながりを創り出すことを目的にオフラインへ進出(シフト)している、その狙いを「選択」と「購買」の2軸の「チャネルシフトのマトリクス」を用い、事例とともに解説しています。

チャネルシフトマトリクス(P.15より)
チャネルシフトマトリクス(P.15より)
横軸=顧客が情報を探索し、購入する商品を「選択する場」
縦軸=顧客が商品の「購入を完了する場」
それぞれが、オンラインにあるのか、オフラインにあるのかを四象限図にマトリックス化
 

Amazonを例に挙げてみると、これまでのAmazon(Amazon.com)は「選択」も「購入」もオンライン(左上の象限)の位置にありました。

しかし、Amazonはそこから、特定の銘柄商品をボタンひとつでAmazon.comでの購入を可能にした「Amazon Dash」や「Alexa、 トイレットペーパーを注文して」と話しかけるだけで自宅に商品が届く音声認識デバイス「Amazon Echo」といった新たなデバイスを開発することで、オンライン購入のゲートを自宅というオフライン空間に出現させ、オフラインでの選択を可能にしました。

また「Amazon Go」では顧客がアプリを起動し入店し、好きな商品を選択、レジで支払いをすることなくそのまま店を出るだけで、オンラインアカウントで決済を完了することができるという新しいオフラインでのショッピング体験を実現させています。

また「Amazon Go」の出店はオフラインへのチャネルシフトだけでなく、アプリを活用することで、顧客IDを把握することができるため、オンラインだけでは分からなかった顧客特性や、買い物行動までも把握することを可能にし、顧客行動の理解を深め、「顧客とのつながり」をより強固なものにすることにもつなげています。

戦略的なチャネル設計を仕掛ける企業

このようにAmazonは、ただチャネルを増やしていくのではなく、オンラインでの「顧客とのつながり」という強みを武器に、テクノロジーを活用しながら、顧客によるオンラインとオフラインの行き来が自社のチャネルの中で動くよう、戦略的にチャネル設計(チャネルシフト)を行っていることが分かります。

冒頭の私の経験談の話もそうですが、もはやそれがオンラインなのか、オフラインなのかといったチャネルを意識することなく、人々はシームレスに買い物体験を楽しむようになっていて、この流れは今後ますます加速していくことは明らかです。

小売業はもちろん、広告においてもオンライン/オフラインシームレスな顧客のカスタマージャーニーの中にいかに入り込んでいき、接点をつくり、つながりを強めていけるかが重要になってくることを強く感じます。

『Amazonはなぜリアル店舗を展開するのか?』という問いに対する様々な角度での考察を本書を通して知ることができ、広告業界に身を置く立場としても、一人の顧客としてもワクワクさせられる一冊になりました。

電通モダンコミュニケーションラボ

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