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イノラボが生み出す協創のカタチNo.1

オープンイノベーションって、どんなもの?

2014/01/06

最近よく耳にするようになった「オープンイノベーション」という言葉。「数社が一緒に革新的な技術を開発するらしい」ということは知っているけれど、詳しい内容や実態はあまりよくわからないという人も多いことでしょう。そこで今回は、株式会社電通国際情報サービス(ISID)のオープンイノベーション研究所(イノラボ)の所長を務める渡邊信彦さんに、オープンイノベーションのあれこれを教えていただきました。3回連続でお届けします。

イノラボが目指す、協創型のイノベーション

――そもそもオープンイノベーションとは、どういったものなのでしょうか?

渡邊: 「さまざまな組織が技術やアイデアを持ち寄り、力を合わせて革新的なビジネスモデルを生み出すこと」、これがオープンイノベーションのざっくりとした内容です。ひとくちにオープンイノベーションといっても、その規模やスタイルは多種多様で、私は「協働型」と「協創型」の、大きく2つのタイプに分けられると考えています。

協働型は、自分たちに不足している技術を求めて他者とチームをつくる、いわば穴埋め形式のようなプロジェクトスタイル。多くの国内企業がこの形でオープンイノベーションに取り組んでいて、自社の技術をある程度まで公開し、「この部分を補える組織はいませんか?」とパートナーを募集しています。不足部分の技術を持つ組織が見つかればプロジェクトが進むわけですから、チームができたあとの開発がスムーズで成功しやすい。しかし、大企業がホスト役になることが多く、力の強い企業を頂点にしたトップダウンのプロジェクトになりやすいという問題点もはらんでいます。また、同業者で技術を持ち寄ることが多いため、イノベーションというほど劇的な効果が生まれにくいところも難点と言えるでしょう。

一方の協創型は、最近になって目立つようになってきたスタイルです。自分たちが持っている最先端の技術を、まったく違う視点を持つ人たちの力によって新しいサービスに昇華させ発展させる、まさに「共に協力し創る」形式。技術者同士がくっついて何かを発明しようというありがちなプロジェクトではなく、異なるステージの技術やメリットを組み合わせて新しい文化やマーケットを生み出そうという考え方なのです。私たちがやりたいのは、この協創型のオープンイノベーション。電通グループが持つネットワーク、広告コミュニケーションのノウハウを生かして、埋もれている技術を世に送り出したいと考えています。

中小ベンチャー企業やフリーランスのクリエーターを主役に据える

――協創型のオープンイノベーションを進める上で、気をつけていることはありますか?

渡邊: できるだけ中小ベンチャー企業や、フリーランスのクリエーターが主役になるよう意識しています。大手の企業は、既に十分な資金力や技術力、パテントを持っています。自分たちが旗振り役となって、いくらでも新しいオープンイノベーションに取り組むことができますし、取り組みが成熟しているケースも少なくありません。そういったところにいまから私たちがぶら下がるより、中小ベンチャー企業や個人の方々と対等な立場でプロジェクトを立ち上げて、電通グループならではの総合力をご提供したほうが、より効果的に新しい協創ができると考えました。

中小ベンチャー企業やフリーランスクリエーターの中には、素晴らしい技術を持っている方がたくさんいらっしゃいます。しかし、組織が小さく無名であるがゆえに、大きいプロジェクトに参加したり、潤沢な資金を集めたりすることができないケースも多いのです。なんとか資金を集めサービスをリリースしても、瞬間的に話題になっただけで、ひとつのイベントで終わってしまうことも少なくありません。そこに私たちのようなファシリテーターが入ることで、プラットフォームとして長く使えるものへと進化させることができる。社会的な意義も大きいものと感じています。

血の通った信頼関係を築き上げ、「失敗できる環境」を整える

――有望な組織やクリエーターは、どのようにして探し出しているのですか?

渡邊: 最初の頃は、ベンチャー企業の人たちが集まるコミュニティに通って、足で情報を集めていました。渋谷の小さなバーで行われているミーティングに毎晩顔を出して、仲良くなって、話題になっている人を紹介してもらって…。最初から「イノラボです」「電通グループです」と言ってしまうと、どうしてもビジネスの話になってしまうので、そうではなくて個人の間での信頼関係を築くよう心掛けました。直接顔を合わせて人間関係をつくり、それで一緒にものづくりができそうな人を探していったという感じですね。

――組織や人が定まったら、次はどのようなステップに進むのですか?

渡邊: まずは小さな投資で小さなプロジェクトを行うようにしていました。限られた資金、限られた期間の中で、共に汗をかき、ものづくりに取り組むと、だいたいその先に進めるかどうかがわかるんですよね。「難しい」と判断したらスッパリとやめますし、場合によっては後戻りしてやり直すこともありました。

日本企業のオープンイノベーションは、多くの場合、一度失敗したらその時点で終わりです。しかし、世の中を変える新たなイノベーションなんて、そうそう簡単につくれるものではありませんよね。1回や2回の失敗なんて当たり前、そんなものはあとから取り返せばいいんです。そのために小規模の投資を行って、後戻りできる環境をつくってあげることも大切だと思っています。

第2回に続く)