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電通ブロックチェーンコミュニティーが行く!No.1

「ブロックチェーン3.0」への電通の挑戦

2018/05/31

ブロックチェーン3.0
<目次>
ブロックチェーンは全ての現代人に関わる社会変革だ
「ブロックチェーン上で動作するプログラム」は何が画期的か?
ブロックチェーン3.0とは、非金融領域での活用も指す
ブロックチェーン×電通で何ができるのか?

ブロックチェーンは全ての現代人に関わる社会変革だ

「なぜ、電通がブロックチェーンに取り組むのか」

こんな疑問を抱かれる方は少なくないようです。そういえば筆者が2015年にFINOLABを企画していた際も、「なぜ電通がFinTech革命に取り組むのか」という質問を多く頂いたことを思い出します。

共通するのは「なぜ、電通が金融なのか」という疑問だと理解しています。私はいつも同じようにお答えしています。

「FinTechもブロックチェーンも、金融分野に限った話では全くありません。全ての現代人に関わる社会変革なのです」と。

この回答には二つの意味合いがあります。

一つは、FinTech革命は「金融機関の革命」ではなく、「デジタライゼーションによって金融業と他の産業の境界がどんどん融解してゆく現象」だということです。非金融機関やスタートアップが最新テクノロジーを武器に続々と金融機能を手に入れ、非金融業と融合させ、新しいサービスを生み出して社会変革を進めています。

もう一つは、金融という現代社会を支える超巨大産業で磨かれたさまざまなテクノロジーが、金融以外の領域でも続々と活用され始めている点です。まさにそのテクノロジーの代表例がブロックチェーンです。

思い返せば、FINOLABの入居第1号企業も日本を代表するブロックチェーン・スタートアップでしたが、当時から“非金融業”へのブロックチェーン活用が積極的に行われていました。昨今のFINOLABメンバーのブロックチェーンの先進事例も、“非金融業”におけるものが多くなっています。

「ブロックチェーン上で動作するプログラム」は何が画期的か?

最近、ブロックチェーン3.0という言葉をよく聞きます。記事や書籍で定義はマチマチですが、私の理解では、下記のようになります。

【ブロックチェーン1.0】「暗号通貨」のために産み出された技術

ブロックチェーンは「サトシ ナカモト」と名乗る人物が、「ビットコイン」を成立させるインフラ技術として発明し、世に出しました。誰から誰へ、いつ、いくら送金されたかといったやりとり「トランザクション」を、改ざん不可能な形で記録してゆく技術です。

この「暗号通貨のインフラ技術としてのブロックチェーン」が、ブロックチェーン1.0と呼ばれるものです。

基本的に暗号通貨を成立させるために作られたので、それ以外の機能は予定されてはいなかったようです。もちろん、これだけでも世紀の大発明と言ってよいと思います。

【ブロックチェーン2.0】「通貨」以外のトランザクション等もブロックチェーン記録する技術

ブロックチェーンで実現した暗号通貨ですが、その要素を分解すると「ハッキングが困難」で「信頼のおける管理者も不要」という特徴があります。ハッキングは外部から、管理者の不義は内部からのデータ改ざんを招きますが、ブロックチェーンは上記の特徴によって、「改ざんが実質不可能」という状態を実現します。

この二つの特徴を、通貨以外のことにも応用しようとする流れがブロックチェーン2.0です。

「改ざんされていないことを証明したいデータ(※)やトランザクション」がある場合に、ブロックチェーンは使えると気が付いた人たちが「公証」「登記」「所有権記録」「選挙(投票)」「トレーサビリティー」といったものに応用し始めました。有名なブロックチェーン2.0のネットワークは「Smart Asset BlockChain」と称される「NEM」です。

※正確にはデータそのものをブロックチェーンに記録するのではなく、改ざんされていないことを示すデータのハッシュ値と呼ばれる数値を記録する。

【ブロックチェーン3.0】プログラムもブロックチェーンに記録し動作させる技術

ブロックチェーンに「改ざんされていないことを証明したいデータやトランザクション」を記録するだけでなく、「改ざんされていないことを証明したいプログラム」を記録し、動作させるともっと便利だと思いついた人たちがいました。

ブロックチェーン3.0と呼ばれることが多いのは、この「ブロックチェーン上で動作するプログラム」を記録し、動作させられるもののことです。「Ethereum(イーサリアム)」が最も有名です。

プログラムがブロックチェーン上にあるとはどういうことかというと、「改ざんされていないので、必ずあらかじめ決めた通りの動作をすることが期待できる」ということです。

例えば、ある業界を挙げて、業界を効率化するプログラムを使いたいと思ったときに、そのプログラムを特定の1社が管理すると、競合他社は不安な気持ちになります。「管理を担当する会社が、自分の都合の良いように、プログラムの内容やアウトプットを改ざんするのではないか」と。この不安は、どの会社が管理することになっても同様に生じます。

これを、その業界の会社みんなで管理するブロックチェーン上にプログラムを記録し、動作させるようにしておくと、誰かが勝手に改ざんする危険をヘッジすることができます。

ブロックチェーン3.0とは、非金融領域での活用も指す

このブロックチェーン上で動作するプログラムを「狭義でのスマートコントラクト」と呼ぶことが多いです。「スマートコントラクト」自体は人の手を介さないで、契約を履行する、という意味です。原始的な例だと自動販売機がそうです。Ethereumの文脈では、Ethereumブロックチェーン上で動作するプログラムを「スマートコントラクト」と呼びます。

狭義でのスマートコントラクトによって制作されるアプリケーションには、最近よく聞く「Dapps」(Decentralized Applications、分散型アプリケーション)も含まれます。

既に実用化が進むDappsの例では、「DEX」(Decentralized Exchange、分散型取引所)が有名です。これは「管理者のいない仮想通貨取引所」を意味します。例えば「1ビットコインをDEXに送ると、あらかじめ決められたアルゴリズムに従って、その時点のレートを参考にした両替を行い、別の通貨を送り返してくる」というものです。

DEXの利点を整理してみましょう。どこかの企業が管理する取引所の場合、エンドユーザーはその企業を信用し、資産を預けることになります。しかしその信用を裏切る取引所も過去には存在しました。管理者が存在しないDEXは、「管理者を信用しなくてはならない」というリスクを減らす効果があるとされています。

電通がスポンサーに就任している「Neutrino(ニュートリノ)」は、このスマートコントラクトやDappsに特化した日本初のブロックチェーン3.0開発拠点です。

ブロックチェーン1.0、2.0、3.0

以上のように書くと、ブロックチェーンは1.0→2.0→3.0という時系列で拡張されてきたように見えますが、実際はそうでもありません。1.0が原点ですが、2.0と3.0の仕組みはおおよそ同時期に着想され、開発が進んだようです。

1.0より2.0、2.0より3.0が優れているというものではなく、それぞれ得意・不得意があり、用途によって使い分けるものです。

「改ざん不可能」というセキュリティーの堅牢性でいえば、元祖ブロックチェーンであるビットコインが優れていると思います。通貨以外のデジタルアセットを扱う場合は、NEMがアプリケーションやライブラリがそろっており、完成度も高く、使いやすいと感じています。

スマートコントラクトの代名詞であるEthereumは、現状はまだプログラミングが前提となっており、なかなか敷居が高いようです。今後、もっと便利に使えるアプリケーションやライブラリが増えてくると期待されます。

元祖ブロックチェーンであるビットコインでも新技術が次々と開発され、2.0や3.0と呼ばれる機能への対応も進んでいます。

機能的側面から見れば、1.0は「暗号通貨を成立させる」という金融インフラ技術でしたが、2.0や3.0の機能は“非金融業”にとっても非常に有意義なものです。特に、スマートコントラクトを実現する3.0では、そのプログラミングの実装内容次第で、今までは難しかったさまざまなビジネスを実現できる可能性があります。

そのため、ブロックチェーン3.0は2.0の要素も含めて、「非金融業におけるブロックチェーンの活用」を指す用語として使われることもあります。そして、これが冒頭に述べた「なぜ電通がブロックチェーンに取り組むのか」という問いへの答えにつながります。

単に「暗号通貨を成立させるための技術」であれば、電通として取り組む余地や意義は小さかったのでしょうが、2.0や3.0によって実現する機能は、新たな情報社会の基盤インフラとして、世の中の形を変える可能性を十分に秘めたものです。

これが、電通に限りませんが、さまざまなプレーヤーがブロックチェーンに取り組む理由です。

ブロックチェーン×電通で何ができるのか?

では、ブロックチェーンで実現される新たな社会の姿やビジネスの在り方とはどのようなものか、という点が重要なアジェンダになるのですが、現在それがはっきり見えている人は少ないようです。一部の天才にははっきり見えているのでしょうが、そのイメージは恐らく(現代とは非連続な発展なので)突拍子もなく、なかなか世に広がらないのかもしれません。

アナロジーとしてよく語られるのは20~25年ほど前のインターネット黎明期に、2018年現在の社会の姿を想像できたか、という点です。

当時、インターネットはまだ有線アナログ回線を用い、画像の読み込みに数十秒かかり、通信コストも膨大でした。メールや掲示板は便利でしたので、それなりに使われ始めていたと思いますが、まさか、スマートフォンやEコマース、SNSなどがこれほど普及し、生活スタイルを激変させるとは、ほとんどの人は想像もしていなかったでしょう。

20年もかからない気がしますが、のちのち振り返れば「2018年頃が、ブロックチェーン黎明期で、社会の転換点だった」と言われている気がします。

ブロックチェーン自体は、データベースやサーバーを管理するシステム等と同じ「ミドルウエア」と呼ばれるIT分野のインフラ技術です。それ自体は何らサービスを人々に提供する存在ではなく、あくまでもサービスを提供するアプリケーションを支える技術です。

そのため、「このインフラでどんなサービスがつくれるか」という考え方ではなく、「既存のビジネスや業務にブロックチェーンを掛け合わせるとどんなイノベーションを起こせるのか」という発想が必要だと考え、2018年3月1日に電通ブロックチェーンコミュニティー(以下、DBCC)を発足しました。

電通、ブロックチェーン技術のビジネス活用に向け社内横断組織を発足
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2018/0228-009477.html

 

DBCCは、電通社内各部署で自らビジネスにコミットし推進している社員が、ブロックチェーンの可能性を自らの領域に取り込んでゆくべく、緩やかに連帯し、情報やネットワークを共有、個々の取り組みを加速することを目的としています。

上記のリリースに名を連ねている電通ラジオテレビ局の岸本渉さん、電通デジタルの村山亮太さん、私蓮村が出会ったことが、DBCC設立につながりました。

次回はコミュニティー立ち上げの経緯や、電通におけるブロックチェーン活用の領域についてご紹介します。

DBCC発起メンバー。左から電通デジタル村山亮太氏、電通ビジネスD&A局蓮村俊彰氏、電通ラジオテレビ局岸本渉氏
DBCC発起メンバー。左から電通デジタル村山亮太氏、電通ビジネスD&A局蓮村俊彰氏、電通ラジオテレビ局岸本渉氏