loading...
MENU

多様性を生かす「社会的一体性」がデザインの可能性を広げる

frogが手掛けるデザインとイノベーションの現在・未来 №13

  • frog

2018/06/20

多様性を生かす「社会的一体性」がデザインの可能性を広げる

この記事は、frogが運営するデザインジャーナル「DesignMind」に掲載されたコンテンツを、電通CDCエクスペリエンスデザイン部岡田憲明氏の監修でお届けします。

障害のある人々を考慮して、デザイナーは世界をもっと変えることができる。

都市計画や製品・サービスの企画において、対象から外されていると感じる集団はまだ一定数います。2017年12月にfrogのサンフランシスコスタジオで開催されたディスカッション「Designing for Inclusivity」(多様性を生かす「社会的一体性」のためのデザイン)では、デザイン関係のパネリストや来場者が、この現状を変える方法について意見を交換しました。社会的一体性の推進は、デザイナーの道義的な共通認識としてfrogの2018年テックトレンドにも挙げられています。

私たちは、偏見や思い込みを仕事に持ち込んでしまいます。そのため新しいツールやサービスを市場に出す際に、主要なユーザーのニーズにのみ注目しがちです。しかし、重要なのはすべてのユーザーを社会的一体性に取り込むことです。このプロセスで、「排他」という大きな壁をつくらないよう考慮することが、デザイナーとしての責任だといえます。

ディスカッションでは、社会的一体性の高い世界とは、「障害」による不便さを、単なる医学的問題ではなく、多くの人を適切にサポートできないデザイン体系の不備だと個人、企業、組織が認識することである、と捉えていました。

サンフランシスコのfrogで開かれた「Designing for Inclusivity」のパネリストたち。左からメラニー・ウィリアムズ氏(frog)、ティファニー・ユー氏(Diversability)、ザーナ・サイモン氏(Urban Jazz Dance Company & Bay Area International Deaf Dance Festival)、ビクター・ピネダ博士(Pineda Foundation & World Enabled)。

イベントのパネリストであるビクター・ピネダ博士は「どうすればより多くの人に対応するデザインができるかを考える上で、デザイナーをはじめとするデザイン関係者を集めるチャンスだと思います」と語りました。社会開発学者であり、障害者の権利の擁護者でもあるピネダ博士は、プロダクトデザインにおいて社会的一体性という思考がもたらすプラスの波及効果を強調しています。「ある製品で何ができるのかということだけでなく、それができるようになったことでの社会認識の変化を、その製品を通じて考えています」

「社会的一体性」という言葉

ディスカッションの大きなトピックの一つは、「社会的一体性」を言葉で説明することでした。パネリストたちが各自の用語や定義を共有する中で、環境と相互作用が人間の生活を形づくる上で非常に重要であることが分かりました。

「障害とは何でしょう? 私にとっては二つの体験で定義されます。一つは疎外感、つまり自分が仲間に入れないという感覚です。二つ目は自立性の喪失ということです」と語ったのは、パネリストのティファニー・ユー氏。Diversabilityの創設者として「障害に対するイメージをコミュニティーの力によって再構築」することを目指しています。

文化的観点から見て、社会的一体性を重視したデザインは、現代社会における社会的公正の見直しとも結び付きます。企業は、あらゆる能力の人々を考慮した人間中心のデザインによる製品をより多くつくり、より多くの人に提供することで、社会的一体性を大きな潮流としていく重要な役割を担っています。

イベントでは出席者に対し、体験デザインの意思決定において、自分が普段どれほど考慮されていると感じているかを図示しました。

社会的一体性を実現するデザイン:三つの原則

世界を変えるためにデザイナーは何ができるでしょうか。パネルディスカッションを通して、社会を一体化する革新を実現する三つの原則が見えてきました。

1. 認識する:良いデザインとはユーザーを中心に置きますが、優れたデザインは、その中心の対象範囲を広げることができます。これには、経済的制約から特定体験における困難まで、障害のある人が直面するさまざまな障壁を考える必要があります。一日の生活を振り返ってみてください。階段を何段上りましたか? 音声対応の行き先案内がどれだけありましたか? 歯を磨くのに両手を使いましたか? 現状を認識すれば、可能性を鋭く見極めることができます。

2. 仲間になる:デザイナーが社会的一体性をより重視すれば、仕事の質を高めることができます。しかし、それだけでは、あらゆる障害に対し配慮するデザインプロセスを生み出すことはできません。パネリストのザーナ・サイモン氏は、賃金を払って雇用することが最初の進歩だと言います。「該当するコミュニティーから人を雇いましょう。彼らは仕事を探しているのに、求人情報などの入手手段を持たないために締め出されてしまっています。彼らの仲間になってください」。自分が雇用する立場になくても、コミュニティー内における戦略的なパートナーシップを考えることは、より良い答えを導き、身勝手なデザインを防ぎます。

3. 今すぐ変化を起こす:世界を良くするには、より良いものをつくる必要があります。自社のウェブサイト、アプリ、製品のアクセシビリティーの監査を検討してください。大きな変更がいくつも必要かもしれませんが、小さなことから始めましょう。分かりやすくてアクセシビリティーを考慮した行き先案内の設置、非識字者でも使えるビジュアルデザイン、ウェブサイトでオフィスのアクセシビリティーを詳しく紹介するなど、まずは行動を起こし、そこから拡大させましょう。

社会的一体性の将来性

人々に不備のあるシステムを押し付けるのではなく、提供する製品やサービスがどれだけ社会的一体性に到達したかを起業の成功の判断基準とすることは、企業にとっても素晴らしい可能性をもたらします。成長を目指す多くの企業にとって、社会的一体性を実現する製品・サービスでユーザー層を拡大していくことこそ意味があります。体験のクオリティーに重点を置くことにより、顧客とブランドとの関係を深め、より多くの顧客を引き付けることができるのです。

 
ディスカッションを見守る満員の来場者。

frogの使命は人間の体験を進化させることです。それには、その体験に対する幅広い理解が必要だと考えます。「Designing for Inclusivity」の目標は、デザイン関係者にこのディスカッションでの会話を強く意識させることでした。

私たちは人間のためにデザインします。それはつまり、さまざまな人のためにデザインするということです。そのプロセスの一環が、人と話すことであり、人から学ぶことなのです。私たちは光栄にも製品やサービスを世の中に送り出すという役割を担っています。このありがたさを軽んじてはなりません。

社会的一体性を実現するデザインのためのリソース

下記のサイトは、皆さんのデザインプロセスに社会的一体性の概念を取り入れるために必要な情報を入手する、貴重な出発点となるでしょう。

 

この記事の続きはウェブマガジン「AXIS」にてご覧いただけます。


メラニー・ウィリアムズMELANIE WILLIAMS

アソシエート・クリエーティブ・ディレクター兼デザインリサーチ責任者であり、frogのヘルスケア事業での中心的役割も担う。専門はインタラクションデザインやデザインリサーチ、ユーザー体験、製品開発など。シカゴ市民の安眠を助ける製品の試作からケニア奥地での妊婦インタビューまで、彼女の人間に対する情熱が真のユーザー価値とビジネスチャンスの発掘につながっている。

ジャスティン・リー JUSTINE LEE

ナレッジマネージャーおよびグローバルマーケティングチームの一員として、frogの八つのスタジオを行き来しながら仕事をこなす。少数派から生まれた斬新なアイデアや魅力的な人々へスポットライトを当てることに注力。2016年には、相互理解を促すことを目的に、異なる政治的観点を持つ人々を集め、食事をしながら意見交換をする「Make America Dinner Again」というイベントを共同企画した。