空港で大ヒット! ガチャビジネスがインバウンドにウケる理由
2018/08/10
海外から日本への観光客数は、オリンピック開催の2020年までに4000万人の政府目標に向け、インバウンドビジネスもますます盛り上がりを見せています。
そんな中、電通テックとタカラトミーアーツが展開するガチャブランド「パンダの穴」が手掛ける「JAPANESE CAPSULE TOY GACHA」が外国人観光客の間で大ヒット! 通常の3~5倍を売り上げ、メディア取材も殺到、海外でも「パンダの穴」のイベントが行われるなど、その勢いは止まりません。
なぜこれほどの人気を集めたのでしょうか。前編に引き続き、「JAPANESE CAPSULE TOY GACHA」の仕掛け人である、電通テックのシニアクリエーティブディレクター飯田雅実氏に聞きました。
外国人観光客の心をつかんだ「アイデア」と「デザイン」
子どものチープトイというイメージを払しょくして大人たちが反応したり、SNSで拡散されたりしたのは、クオリティーの高さが評価された結果だと考えています。そこは制作会社である電通テックの「ものがつくれる」という強み、「アイデア」と「デザイン」の力を最大限に活用しました。
・ヒットキャラを生み出すアイデアの力
われわれはキャラクターを持っていなかったので、何をつくるかということが一番の課題でした。それを解決したのがアイデアです。
例えば、動物であれば著作権はなく、みんなが知っていて好きな人も多い。では、その動物のアゴをちょっとシャクレさせたらどうだろう? そんな発想から生まれたのが人気シリーズの「シャクレルプラネット」です。
「考えない人」や「自由すぎる女神」も、考える人や自由の女神は認知度が高いので、キャラクターそのものを使わずとも、アイデアをプラスすることで認知度の高い新しいキャラクターをつくることができました。
空港で、最大のヒットになったのは、「パラ斎藤さん」という、まったくのオリジナルのキャラクター。実は映画でおなじみの世界的人気キャラクターよりも売れたそうです。
このようにゼロからヒットにつながるキャラクターが生まれる背景には、膨大な数のアイデアから絞り込んで商品化していることが挙げられます。十数名の企画者が参加し、プレゼンするのは多いときで90案ほど。プレゼンに持ってくる前に、それぞれがさらに多くのアイデアを出していることを考えれば、相当な数のアイデアから一つの商品が生まれていることになります。
・多くの人を惹きつけるデザイン力
デザインにこだわることができるのも制作会社の大きな強みです。ガチャの場合は何百商品も並んだ中から一商品を選んでもらうという過酷な状況です。そのため、どう目立たせるかが非常に重要で、デザインは大きな力になります。
例えば、購買の導入になるポスタービジュアル。通常、メーカーの方々は外部のデザイナーに発注していると聞きますが、われわれは企画者が自らデザインし、それを広告業界の一流カメラマンに撮っていただいています。さらに、社内にコピーライターがいるので、ネーミングやキャッチコピーにもこだわることができます。
ガチャ業界の中で、これはかなり贅沢なことだと思っています。実際、購入者の半数はこのポスタービジュアルが購入のきっかけになっています。
このように、アイデアのある商品を、デザインやグラフィックワークでさらに宣伝していくという仕組みがあることで、多くの外国人観光客に訴求することができました。
クリエーターが考える“日本らしさ”の最前線
「JAPANESE CAPSULE TOY GACHA」が海外の方にウケる背景には今の「日本らしさ」ということが挙げられます。これはまさに狙っていたことで、“JAPANESE”CAPSULE TOY GACHAとネーミングしているのも、今の日本カルチャーを海外の方にプレゼンテーションしているというような気持ちでつくっているからです。
その結果、今の日本らしいコンテンツを海外の方が面白がって買っていくというビジネスモデルができていると感じます。
とはいえ、私が感じる“今の日本らしさ”とは桜などをモチーフに使った古典的なものではなく「今の時代の感覚で、少しふざけたことを、一生懸命まじめにクオリティーを上げてつくっていく」というものです。
パンダの穴は、は、動物が寝ているとか、ちょっとシュールで、一風変わったものが多いですが、海外のフィギュアの場合は既存のキャラクターが多く、ただ立っているだけでポーズの種類も少ない。パンダの穴のようなものは他国にはほとんどなく、今の日本のひとつの特徴だと思います。
オモチャを超えて“癒やしアイテム”としても波及!
現在は空港以外にも設置場所を増やしており、もっとも厚い購買層は20代の女性の方。会社の帰りに買うという人が多いようです。ガチャビジネスを始める前は男性がターゲットになると考えていたので、これは驚きでした。
女性たちはオモチャというより“癒やしアイテム”として購入しているようです。自分のデスクの上にちょこんと置いておき、目に入ると「クスッと笑えるので癒やされる」。そんな声が多く聞かれます。
元々、ちょっとバカバカしくて笑ってしまう、そういうテイストをパンダの穴では大事にしてきました。
私は世の中にはものすごく大切なものと、どうでもいいけど笑ってしまうものがあると思っています。
後者はなくてもいいと思われがちですが、バカバカしいものは自然界にはなく、これは人間が長い年月を掛けて開発した遊び心の部分で、なくてはならないすごく大事なもの。今のように閉塞感がある時代は、ガチャのように安価で手に入るちょっとした笑いみたいなものは意外と重要なのではないでしょうか。
ちょっと変な時代には、ちょっと変なものが丁度いいといいますか、それを面白がっていただけるといいなと思っています。
大ヒット中のJAPANESE CAPSULE TOY GACHA、この先どこへ向かう?
現在の課題として、海外展開でのコインの問題が挙げられます。国によっては何枚も入れなくてはいけなかったり、投入口が合うマシンを開発しなくてはいけなかったり、電子マネーの発達によりそもそもコインをあまり使っていなかったり…。
そのため、プリペイドカードやスマホのペイを利用できるようなマシンの導入も今後は考えています。
まずはアジア圏、それからアメリカやヨーロッパに拡大し、世界各国の人に「日本のちょっとクスッとできるコンテンツ」として紹介していきたい。20年には海外からかなりの方が日本を訪れるので、その時にさらにガチャを知ってもらって、知名度をより高めていきたいです。