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メディアビジネスにおける「ラジオ」の新しい可能性No.1

radiko(ラジコ)って、ただのラジオアプリだと思ってない?

2018/11/27

音声ビジネスの未来を考える

声に出すだけで、やりたいことができてしまう。そんな世界が、すぐそこまでやってきています。世界中さまざまな分野の企業が注目し、技術開発や事業展開を進めているのが「音声ビジネス」です。

ところで、電通は音声ビジネスの関係する分野で、今どんな取り組みをしているのでしょうか?音声といえば、電通のビジネスで真っ先に思いつくのがラジオメディア。私自身がradiko.jp(以下、ラジコ)のプロモーションを担当するようになってから、その思いは一層強くなりました。

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ラジコは、PCやスマホでラジオが聴けるサービス。さらに、タイムフリー機能を使えば過去1週間以内に配信された番組が聴けたり、ラジコプレミアム会員に登録すれば日本全国のラジオ局が聴き放題になります。

2018年6月、ラジコのブランド認知を広めるためにひとつの映像をつくりました。全国民放ラジオ92局の協力のもと、各局のジングルをマッシュアップしたオリジナル楽曲を制作。さらに、ラジコのロゴを生かしたグラフィカルな世界に、各局のロゴをデザインしたアニメーションムービーです。

その時、ラジコの業務推進室長である坂谷さんから「ラジコオーディオアド」という新しいターゲティング広告を始めるよ、という話を聞きました。「ラジオ広告なのに、ターゲティング広告?」。そんな疑問が頭に浮かびましたが、ラジオ広告の進化は聞けば聞くほど面白い話で、ビジネスの可能性を感じました。

そこでこの連載では、メディアビジネスにおける「ラジオ」の新しい可能性というテーマのもと、ラジオ広告における新しいソリューションを紹介していきます。今回は、ラジコオーディオアドを通してラジオ広告の未来について考えてみたいと思います。

届けたい人に、届けたいメッセージをしっかり届けられるラジオ広告

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「もともとは電通のラジオ局にいたので、ラジオ本来の魅力も、そして、広告ビジネスとしてラジオが置かれている環境もよく知っています」という坂谷さん。

「ラジオって、結局誰が聴いているの?そういうデータとかないの?」と、クライアントにラジオ広告を提案するたびに質問されてきたといいます。

ビデオリサーチによる首都圏でのラジオ聴取率の調査は2カ月に1度。特にクライアント担当者がラジオをほとんど聴いたことのない場合、聴取率の数字やラジオ広告の効果について納得してもらうまでのハードルがとても高いと感じていたそうです。

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そんな環境も踏まえて、2018年7月24日からラジコが実証実験をスタートさせたのが「ラジコオーディオアド」。同じラジオ番組を聴いているのに、あなたが耳にするラジオCMと、隣の人が耳にするラジオCMの内容がまるで違う。そんな世界が、ラジオの中に生まれたわけです。(現状、ラジコオーディオアド配信枠は、ラジオ局が持っている番宣や局報などの自社枠のみで、しかもライブ配信のみ。過去1週間の番組が聴ける「タイムフリー配信」には未対応だそうです)

ラジコオーディオアドを使えば、これまで放送局単位あるいは番組単位でラジオCMを流してきた広告主が、ターゲット単位で細かくCM素材を打ち分けることができるようになる。コミュニケーションしたい人にだけ、届けたいメッセージをしっかり届けられる(しかもその結果が、データでしっかり反映される)。

これは、ラジオ広告をつくってきた私にとっても、大きな衝撃でした。

広告予算をなるべく効率よく使い、狙ったターゲットに確実にアプローチしたい。そう考える広告主にとって、これまでのラジオでは不可能だった新しい広告モデルがラジオ業界に加わったわけです。

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※地上波ラジオでクライアントが提供するCM枠での差し替えは現状行っておらず、ラジオ各局が番宣・局報等を実施している自社枠でのみ差し替え

でも、と思います。それって、デジタルのバナーと何が違うんだろう、と。坂谷さんは、大きく二つの違いがあるのではといいます。一つ目は、全国の放送局が制作する良質な番組コンテンツの間に入ること。二つ目は、チャンネルをころころ変えられにくいというラジオの特性。

その二つが相まって、ラジコオーディオアドはスキップされる可能性がとても低く、伝えたい内容をしっかりと届けることができる、とのこと。確かに私も、ラジオでCMが流れてきたから番組を変えようと思ったことは一度もありません。

より確実に広告メッセージをターゲットに届けられる。それは、ラジコオーディオアドの一番の価値なのかもしれません。

スマートスピーカーが、ラジオをもっと身近に

さらに、皆さんご存じ、スマートスピーカーの登場は、ラジオが家の中に帰ってくる大きなきっかけになるはず。振り返ればちょっと前まで、リビングにはラジカセやコンポなどラジオを聴ける環境がそろっていました。しかし、音楽配信の盛り上がりとともに、それらのデバイスがリビングに置かれることは少なくなり、時を経てスマートスピーカーという形で、その環境が再び戻ってきたわけです。

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現在は、スマートスピーカーにおけるラジコの使われ方は午前6時〜8時台がいちばん多いそう。朝のリビングを想像すると、納得のデータです。ちなみに、Amazonのスマートスピーカー「エコー」の2018上半期Alexaスキルランキングで、なんと第1位はラジコなんだそうです。

そう考えると、スマートスピーカーがどの家にも当たり前のように置いてある時代になれば、ラジオの価値もそれに合わせて大きく見直される可能性がありそうです。

ラジコオーディオアドがもたらしてくれる、ラジオ広告の新しいカタチ。これだけでも、電通の新しいビジネスチャンスが眠っているように思いますが、ラジコの本当の可能性は、実はそれだけではありません。

例えば、あなたに気になるパーソナリティーがいたとして「●●●●が出演してるラジオ番組かけて」とスマートスピーカーに話しかければ、放送局の垣根や放送日時さえも超えて聴くことができる。さらに、パーソナリティーに加えてゲスト情報、そこでのトーク内容がラジコにデータとして蓄積されていくことで、やがて近い将来、番組だけでなく、アーティストの気になる発言や新曲情報、ライブ情報だって音声で教えてもらえる日が来るかもしれない。さらにその先には、そのライブのチケットだって、声だけで買えるようになる時代もやってくるのでは、と思います。

そしてスマートスピーカーだけでなく、クルマの中など、生活の中で音声技術が搭載される場所が増えていけば、その分だけラジコが使ってもらえる場所が広がっていく。

ラジオが聴けるパソコン・スマホの中のアプリケーションから、世の中の情報を集約し、さまざまな人が声を使ってその情報を活用できるオーディオプラットフォームへ。それが、ラジコの先に広がっている音声ビジネスの真の姿といえるかもしれません。

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最後に。「新しいビジネスをつくらなければ」そんな声をよく耳にします。もちろん、そのやり方は人の数だけあると思いますが、昔からあるものに、これから伸びる分野を掛け合わせた時に何ができるか。そんな発想が、新しいビジネスを生み出すきっかけをくれる。

ラジコは、そのことを私たちにあらためて教えてくれている気がします。そして、ラジオメディアをはじめとする音声ビジネスの分野には、そのチャンスがたくさん転がっていると思うのです。

次回は、データ分析によるラジオ広告の可視化について紹介していきます。