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勇者に学ぶ「戦略0.0」No.1

今さら聞けない「戦略ってナンだ?!」

2018/12/18

変化の時代こそ、「最先端」より「基本のキ」

はじめまして。クリエーティブ・ストラテジストの工藤と申します。「戦略」という武器で、企業やチームが抱える困りゴトを解決するのが仕事です。

戦略家としてのキャリアスタートは、「どうすればより魅力的な広告になるか?」を考える「広告制作の戦略」。そこから、PRやプロモーションを統合する「コミュニケーション戦略」、商品開発や事業企画を含む「マーケティング戦略」など、徐々に戦略の射程範囲は広がっていきました。

最近は、「企業の経営改革」や「次世代の日本を支えるスタートアップ企業のブランディング」、「地方都市の街づくり」といった戦略を考える日々を過ごしています。

CEOやマーケッター、クリエーター、ジャーナリストに経済学者…etc。そんな方々と共に、業界も業種も超えて、さまざまなタイプの戦略と向き合う毎日の中で、気付いたことがあります。

「会社を揺るがす大問題から、今晩の献立まで。ありとあらゆる問題解決の『基本のキ』は、実はまったく同じカタチ(構造)である」

そして同時に、次のような疑問を抱くようにもなりました。

「『最先端』の情報が次から次へと湧いてくるビジネスの現場では、本来は大事であるはずの『基本のキ』が、軽視されがちではないか?」

特に、時代の流れを読み、「企業やブランドのこれから」を創る企画職(プランナー)の方々ほど、どうしても「最先端」に気を取られがち。

「これからは変化の時代だ!」
「情報爆発の時代、昨日までの当たり前は、明日の非常識だ!」…etc.

こんな強いセリフが、強迫観念を駆り立てる。その結果、真面目なビジネスパーソンほど、次々と押し寄せる「最先端」に悪戦苦闘することになってしまう…。嗚呼、なんとモッタイナイ! 

そこで、常に上書きされてしまう「最先端」は排して、どんな問題にも応用できる問題解決力を磨く、戦略づくりの「基本のキ」だけを1冊『勇者に学ぶ 難題に立ち向かう「戦略思考」』(発行:日本経済新聞出版社)にまとめました。

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〇〇戦略ブームと“終わりなきモグラたたき”

日々書籍やニュースで「〇〇戦略」という言葉を見ない日はありません。

■これからのビジネスには、「AI(人工知能)戦略」が欠かせない
■○○○大学式「戦略的コミュニケーション」のススメ
■マーケティングを本質から変貌させる「データ2.0戦略」…etc.

ある出版関係者いわく、「戦略という硬い言葉がここまでジャンルを選ばず使われるなんて、一昔前にはあり得なかった。まさに『戦略ブーム』ですね」とのこと。

しかし、ここで一歩立ち止まって考えてみたいと思います。本当に、「〇〇戦略」は、僕らを幸せにしてくれているでしょうか? 

お受験戦略、転職戦略、話し方戦略…。こうした「○○戦略」というフレーズは、さまざまな知識を「一問一答」形式のハウツーとして教えてくれます。例えば「プレゼン戦略」では「プレゼンの秘訣は…である」ということが示され、「就活戦略」では、「就職活動の決め手は…だ」を教えてくれます。

そんな「〇〇戦略」は、役立つ情報を簡単に得られる便利さがある半面、病気の治療でいえば「対症療法」のようなもの。目の前の状況に対応しているにすぎません。対症療法のみに頼っていては、まるで“終わりなきモグラたたき”のように、課題に追われる毎日に陥ってしまいます。

「僕らに足りないのは、マーケティングか?戦略か?」

ある経営者の方と企画合宿をした際、こんな話で盛り上がりました。
「いま僕らに足りないのは、マーケティング戦略のうち、『マーケティング』の方か?『戦略』の方か?」

その会社は経営陣以下、現場マネージャーも含めて「マーケティング戦略が社内に浸透しない」という課題意識を持っていました。その対応として、MBA教育に定評のある外部講師を雇って、マーケティング戦略の勉強会を開いていたそうです。

社員は熱心に参加し、国内外の「最先端」事例を学び、知識を蓄えていきました。しかし、どうも、肝心の自社のマーケティングプランが上手く作れない…。

そんなモヤモヤの中、開かれた企画合宿でした。初日の夕方、「戦略づくりの型」を利用したワークショップを開く中、経営者の方が「コレだ!」と声を上げたのです。

ゲームマップ
【本書に登場するフレームワーク「戦略ゲームマップ」】

足りなかったのは、「マーケティング」(知識)ではなく、「戦略づくり」(方法)のほうでした。

必要な発想は「急がば回れ」。超大量の「最先端」が飛び交う今だからこそ、あらゆる戦略づくりの「基本のキ」となる「戦略0.0」をきちんと身に付けるべきです。

ただ困ったことに、華々しい広告やプロモーションのアイデア創作と比較すると、「戦略づくり」は、色も形もない、とても地味な作業です。

でも、いや、だからこそ「戦略0.0」の構造と作法をきちんと理解することは、他人とは異なるアイデアで結果を出したいビジネスパーソンたちの、強い味方になるはず。

次回以降では、特別な予備知識や道具は使わずに、紙一枚とペンさえあれば、すぐ実践できる「戦略づくりの型」の一部をご紹介。

「戦略とは『制限時間内に、誰かの願いをかなえる方法』である」という定義のもと、勝ち負けを競う既存の戦略論より“戦略”の守備範囲を広げて、あらゆる問題解決に通用する戦略づくりの方法をご紹介します。
(つづく)