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JAXA宇宙飛行士 野口聡一氏 「21世紀型宇宙飛行士の役割と未来をつくる力」第1回

2014/01/20

「21世紀型宇宙飛行士の役割と未来とつくる力

 ― 国際社会への貢献を目指して」 第1回

JAXA宇宙飛行士 野口聡一氏

 
野口聡一氏(JAXA宇宙飛行士)

今、400キロ上空で地球を周回している国際宇宙ステーション(ISS)には若田光一宇宙飛行士が搭乗している。半年に及ぶ長期滞在中の後半となる今年3~5月には、ロシア、米国の5人の宇宙飛行士を率いてコマンダー(船長)としての任務を果たそうとしている。有人宇宙開発で日本人宇宙飛行士はこれまで数々の経験を積み、ついに、世界15カ国の協力で運用する“宇宙基地”のリーダーを務める時代になった。今後も新たな日本人ミッションクルーのフライトが予定されている中で、これからの宇宙飛行士にはどのような役割と資質が求められるのか? 現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で宇宙飛行士グループ長を務める野口聡一宇宙飛行士に話を聞いた。

日本人が世界をリードする時代へ

毛利衛さんが日本人宇宙飛行士として初めてスペースシャトルに搭乗し、宇宙に行ってから20年以上がたちます。その後、私を含め何人もの日本人が宇宙に飛び立ち、微小重力下でのさまざまな実験などに取り組んできました。2008年にISSでの日本の実験棟「きぼう」の運用が開始されてからは、ISSの組み立て作業の他、実験・保全作業のためのロボットアームの操作や、船外活動をこなしたり、さらには宇宙での長期滞在の経験も積み重ねてきました。

JAXA宇宙飛行士の20年
©JAXA/NASA 毛利、向井、土井、山崎、野口、若田、油井、大西、金井
©JAXA/GCTC 古川、星出(敬称略)
*資料提供=野口氏

そして今、ISSに搭乗している若田宇宙飛行士は、約半年にわたる滞在期間中の後半に、日本人で初のコマンダーとしての役割を果たそうとしています。ロボットアームの操作、船外活動、そして宇宙飛行士のトップレベルの任務であるコマンダーと、日本の宇宙飛行士は、有人宇宙飛行・活動において求められる中核的な任務をほとんど経験し、ハードウエア的にもソフトパワーとしても、世界の宇宙飛行士をリードする立場になりつつあると言ってもいいでしょう。

最初のISS滞在中、船外作業をする野口氏(2005年8月)
最初のISS滞在中、船外作業をする野口氏(2005年8月)

スポークスパーソンとして果たす役割

そもそも宇宙飛行士というと、飛行前に過酷な訓練をし、宇宙船に搭乗してからは厳密に定められた任務を着々とこなす、そんなイメージを持っている人も多いかと思いますが、それは宇宙飛行士の役割の一部にすぎません。日本が宇宙を目指す理由を説明したり、子どもたちに宇宙について熱く語りかける宇宙飛行士の姿は、皆さんも直接、あるいはメディアを通じて目にしたことがあると思います。私個人では、ツイッタ-による発信も続けており、おかげさまで約50万人のフォロワーの方に読んでいただいています。このような広報・啓発活動の他にも、後輩・同僚宇宙飛行士の訓練支援や、国内の宇宙関連事業を担う民間企業の方々と協働する開発支援活動も重要な任務です。そして、日本人宇宙飛行士の役割としてこれから一層重要な意味を持ってくるのが、JAXAの今後の事業活動を踏まえたスポークスパーソンとしての役割です。

 

昨年、アラブ首長国連邦のドバイで開かれた国連のシンポジウムに参加したときに話題になっていたのは、超小型衛星の需要が今後ますます高くなってくるだろうということでした。超小型というと10センチ四方くらいの大きさですが、今は技術開発が進み、かつての商業衛星クラスの機能を持つようになっています。加えて、開発・打ち上げ費用も低減できます。

 

特に、これから経済が発展していく中東やアフリカなどの開発途上国には高いニーズがあります。そのような各国の宇宙開発関係者が集まる場で、JAXAの実力をアピールするのも私たちの役割の一つです。ご承知のように、12年、星出彰彦宇宙飛行士が、日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」で運ばれた超小型衛星を、ロボットアームを使って放出しました。若田宇宙飛行士も今回の滞在中に、ベトナムと東京大などが共同開発した超小型衛星を放出しています。高い成功率を誇るロケット打ち上げ技術と共に、日本の超小型衛星の開発・放出技術は、今では世界の最高レベルと言っても過言ではありません。

第2回へ続く 〕

ISS「きぼう」の実験棟での作業をする野口氏(2010年1月)
ISS「きぼう」の実験棟での作業をする野口氏(2010年1月)