2018年のインターネット広告媒体費は1兆4480億円に。モバイル+動画広告の伸びに注目
2019/04/10
D2C、サイバー・コミュニケーションズ(以下CCI)、電通の電通グループ 3 社は、電通が 2019 年 2 月に発表した「2018 年 日本の広告費」の調査結果のうち「インターネット広告媒体費」の内訳を、広告種別、取引手法別、デバイス別などの切り口で分析し、さらに 2019 年の予測を加えた「2018 年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」を発表しました。CCIの梶原理加が解説します。
<目次>
▼インターネット広告費は日本の総広告費の26.9%に到達
▼広告種別、取引手法別、デバイス別に見たインターネット広告媒体費
▼著しい「ビデオ(動画)広告」の伸長
▼2019年のインターネット広告媒体費はどうなる?
▼まとめ:インターネット広告市場の健全な発展のために
インターネット広告費は日本の総広告費の26.9%に到達
2018年の日本の総広告費は6兆5300億円。そのうちインターネット広告費は1兆7589億円で、全体の26.9%を占める規模にまで成長しました。
インターネット広告費の中身は、大きく二つに分けられます。一つ目が「インターネット広告媒体費」で1兆4480億円、二つ目が「インターネット広告制作費」で3109億円です。今回は前者のインターネット広告媒体費について詳細分析を実施しました。
なお、2018年の分析に加え、2019年にはインターネット広告の市場がどのくらいの規模になるかという予測も行っています。
広告種別、取引手法別、デバイス別に見たインターネット広告媒体費
今回の詳細分析では、インターネット広告媒体費1兆4480億円の内訳について、広告種別、取引手法別、デバイス別に分析をしました。
●広告種別―検索連動型広告とディスプレイ広告で全体の約8割に
広告種別では、インターネット広告媒体費全体の1兆4480億円のうち、「検索連動型広告」が39.4%の5708億円、「ディスプレイ広告」が38.9%の5638億円で、合わせると約8割を占めています。
注目したいのが「ビデオ(動画)広告」で、2017年には全体の9.5%に当たる1155億円(※)でしたが、2018年には全体の14.0%に当たる2027億円まで増えてきています。
※2018年「マスコミ4媒体由来のデジタル広告費」がインターネット広告媒体費の推計対象に追加されたため、2017年は参考値。
●取引手法別―運用型広告が全体の約8割を構成
取引手法別では、「運用型広告」が79.5%の1兆1518億円と、全体の約8割を占め、まさにインターネット広告取引の主流となっています。
さらに、取引手法別の広告費の内訳を広告種別で見ると(上図)、「運用型の検索連動型広告」が全体の39.4%の5708億円と非常に大きなボリュームを占め、「運用型のディスプレイ広告」が28.0%の4049億円が続きます。また、ビデオ(動画)広告についても12.0%の1737億円と「運用型」の比率が非常に高くなっています。
●デバイス別―モバイル広告費は初めて1兆円を突破
デバイス別では、「モバイル広告」が全体の70.3%の1兆181億円、「デスクトップ広告」が29.7%の4298億円という結果になっています。
デバイス別と広告種別の掛け合わせで見ると、「モバイル広告の検索連動型広告」が27.7%の4012億円、「モバイル広告のディスプレイ広告」が27.6%の3996億円です。市場の多くを占める検索連動型とディスプレイ型の広告で、モバイル広告の比率が高くなっていることが分かります。
ビデオ(動画)広告についても、やはりデスクトップに比べてモバイル広告の比率が非常に高くなっています。
著しい「ビデオ(動画)広告」の伸長
ビデオ(動画)広告の伸長についてもう少し掘り下げてみましょう。
前述の通り、2017年にはインターネット広告媒体費全体の9.5%に当たる1155億円(※)でしたが、2018年には14.0%の2027億円になっており、この1年間でビデオ(動画)広告費が大きく伸長してきました。
※2018年「マスコミ4媒体由来のデジタル広告費」がインターネット広告媒体費の推計対象に追加されたため、2017年は参考値。
背景としては、TVerやAbemaTVといった動画メディアの成長や、Instagram StoriesやYouTubeなどの動画SNSが引き続きユーザーの視聴を集めていることに加えて、TikTokといった動画共有アプリが若い世代を中心に人気となっていることなど、ここ数年で顕著になってきた「静止画から動画」というインターネット利用全体のトレンドがあるでしょう。
そしてもう一つ、ウェブメディア自体のインプレッションがこれまでのように増えていかない中、媒体社がよりインプレッション単価の高いビデオ(動画)広告に切り替えることで、収益拡大を目指しているという背景もあると考えています。
ユーザー側からいえば、今は誰もが肌身離さずスマホを持ち歩いており、いつでもどこでも動画を視聴できます。それどころか自分たちで撮影し、SNSで動画をシェアする環境も整い、生活の中でさまざまな形で動画に親しむ、動画を楽しむ機会が非常に増えています。
一方広告主から見ると、環境が整って動画による豊かなクリエーティブ表現が可能になり、「ビデオ(動画)広告がブランディングにも寄与する」という期待が高まっています。
2019年のインターネット広告媒体費はどうなる?
インターネット広告媒体費は、2018年に総額1兆4480億円だったものが、2019年には前年比115.9%の1兆6781億円まで成長すると推定しています。
ここからはデバイス別の変化や、注目のビデオ(動画)広告の予測を紹介します。
●デバイス別の推移―引き続きモバイル広告費がリードする
2018年にはモバイル広告費が1兆円を超えましたが、2019年には前年比122.7%という非常に高い成長率で1兆2493億円へ拡大すると見込んでいます。
一方デスクトップ広告は、2018年には4298億円でしたが、2019年にはほぼ横ばいの前年比99.8%の4288億円で、一定の市場規模をもって推移すると予測しています。
●ビデオ(動画)広告市場の推移―モバイル動画広告費は2000億円超えへ
広告種別の中でも、2018年は2027億円だったビデオ(動画)広告費は、2019年には前年比130.8%の2651億円と非常に高い成長を遂げると予測しています。
ビデオ(動画)広告の内訳をデバイス別に見ると、2018年でもモバイル広告が非常に大きな比率を占めていましたが、2019年にはさらに拡大し、モバイルのビデオ広告が、前年比139.3%で2000億円を超えてくると予測しています。また、デスクトップ広告も、2018年の484億円が2019年には前年比103.7%の502億円と堅調に推移すると予測しています。
まとめ:インターネット広告市場の健全な発展のために
最近はテレビに差し込んでインターネットに接続するメディアストリーミング端末が注目されています。また、ラジオをスマホで聴取する層が増えてくることも考えられます。今後デバイスがさらに多様になる中で、「これまでのマスメディア」なのか、「インターネット」なのかの境目はますますなくなっていくでしょう。
そのようにメディア環境が大きく変化するなか、電通グループ3社が力を合わせて取り組んだ「インターネット広告媒体費 詳細分析」の目的は、非常に範囲の広いインターネット広告市場をさまざまな角度から捉え、その全体像を描くとともに、より健全な広告市場の発展をめざすところにあります。
例えば、運用型広告が全体の約8割を占めるようになり、ビデオ(動画)広告のさらなる成長が期待される状況を迎えたいま、ブランド毀損のリスクを排除して広告を配信する「ブランドセーフティー」への取り組みがますます重要になってきています。このように、広告費の比率の変化はさまざまな変化を示唆してくれるでしょう。
広告費の詳細な内訳を推定し、分析することが大きなトレンドを知ることにつながり、広告主と生活者の間で、より良い広告コミュニケーションを実現する一助となれば幸いです。