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「未知との対話」を楽しむソーシャルエンターテインメント

今、コンテンツビジネスが面白い!No.1

2019/06/25

「未知との対話」を楽しむソーシャルエンターテインメント

これまで電通は、テレビ放送創成期から各放送局と映画、アニメなどを主軸にコンテンツビジネスを展開してきました。そこからさらに前進するために、時代の変化に果敢に飛び込み新しいコンテンツを創造し、活動領域を広げていきたいと考えています。

本連載では、コンテンツビジネス・デザイン・センター(以下、CBDC)で新領域のコンテンツ事業を手掛ける社員が登場。事業に取り組んだきっかけや思い、未来への展望などについて語ります。

第1回は、CBDCのコピーライター/プロデューサーである阿部広太郎氏。自身が手掛けた「未知との対話」をキーワードとしたソーシャルエンターテインメント、「ダイアログ・プロジェクト」の事例から、コンテンツビジネスの魅力を紹介します。

コンテンツの生みの親、育ての親になる

CBDCのコピーライター/プロデューサーの阿部広太郎です。以前はクリエーティブ局で約10年間、コピーライターとして広告の企画、制作をしていました。

コピーライターの仕事は、商品やサービスが完成してからバトンを受け継いで、それをどんなメッセージとともに世に送り出せばいいのか―。リレーで言うならアンカーとして、いかにいい形でゴールを切るかという部分で勝負してきました。

そんな僕が、2017年からCBDCへ。今の僕の立ち位置は、先ほどのリレーの話で例えるとスタート地点か、あるいはスタートラインに立つ前から始まります。企画すら固まっていない中から、「そもそも、どんなレースに出ようか」「ゴールまで走るのをやめて自転車で行く?」「それとも、空飛んでみる?」など、あらゆる可能性を模索して作戦を練ったり、実際に第一走者と並走していったり…そんなイメージです。

もう少し具体的に言うと、何もないところからコンテンツを生み出す0から1を生む仕事。もしくは、すでに存在するコンテンツを10や100に大きくしていくことを仕事にしています。自分では、前者を「生みの親」、後者を「育ての親」だと捉えていますが、これこそがコンテンツビジネスの魅力だと感じています。どちらにせよ親になること。子であるコンテンツに情熱と愛情を注ぎ、その結果、コンテンツを共有できる人が増えていく。それを実感するのが、何よりの喜びです。

プログラムの出口が、新しい世界への入り口に

今回ご紹介する「ダイアログ・プロジェクト」は、ダイアローグ・ジャパン・ソサエティが手掛けるソーシャルエンターテインメント。電通として事業に出資するのはもちろん、CBDCのチームとしてクリエーティブディレクションを担い、その中で僕自身はクリエーティブディレクターを務めました。

このコンテンツには三つのプログラムがあります。舞台は、「暗闇の中」「静けさの中」「年齢を重ねた後」といった、それぞれの参加者にとっては 非日常的な空間。少人数のグループに分かれて、さまざまな方法で「対話」していきます。

ダイアログ・イン・ザ・ダーク  

これは、「暗闇の中」での対話を体験するプログラムです。どんなに目を凝らしてもまったく何も見えない真っ暗闇の空間を、暗闇のエキスパートである視覚障がい者 の方のアテンドにより、進んでいきます。

参加者は「白杖(はくじょう)」という視覚障がい者用の杖を持ちますが、暗闇の中、頼りになるのはアテンドの案内や、グループメンバーの声、自分の手や足の裏の感覚のみ。誰もが、「見る」こと以外の全ての感覚を研ぎ澄まして人との対話に集中していきます。

ポイントは、ただ単に声を掛け合って歩くだけではないことです。例えば暗闇で輪になって語り合ったり、鈴が入ったボールでキャッチボールをしたり。飲み物を飲んだりも。体験を通じて「見えないことで見えることがある」ことを実感していきます。

ダイアログ・イン・ザ・ダーク
ダイアログ・イン・ザ・ダークでは、グループを組み、白杖を持って暗闇の中に入ります。

ダイアログ・イン・サイレンス 

このプログラムでは、「静けさの中」の対話を体験します。参加者はヘッドセットを着けて外からの音を完全に遮断。アテンド役の聴覚障がい者の方とともに、言葉の壁を超えた時間を過ごします。

私たちは「思いを口に出してこそコミュニケーションは成立する」とどこかで思い込みがちですが、静寂な空間の中でも十分「会話」できるんです。例えば、喜怒哀楽を顔だけで表現したり、ジェスチャーで身近なモノや動物を表現したり。

最初は照れがあって上手に意思の疎通ができなくても、だんだんと心の壁が取り払われて初対面の人同士でも、母国語の異なる人でも、仲良くなっていきます。静寂の中で、集中力、観察力、表現力を高め、だんだんと解放感のある自由を体験していきます。

ダイアログ・ウィズ・タイム 

最後に紹介するコンテンツは「年齢の積み重ね」、つまり「生き方」との対話。アテンド役は70歳以上の高齢者です。戦後の激動の時代を経験し、今でも夢を追い続けている人…。経験を積んだ人にしか語れない話を聞き、人々が思い描きがちな「老い」に対するネガティブな価値観を打ち壊し、「年を重ねることとは何だろう?」「アンチエイジングではなく、グッドエイジングなのではないのか?」などと、自身の未来に出合うきっかけにしてほしいと思っています。

さらに、参加者に「何歳になったら高齢になると思いますか」「人は何歳になっても成長できると思いますか」などといった質問を多数投げかけ、年齢を重ねることに対する自分の考えをあぶり出すような体験も用意されています。

こうした約90分の体験をした人から感想を聞いてみると、「人と人とが向き合うって、こんなに可能性があることなんだ!」「暗闇や静寂は怖かったけれど、その中にとても安心できるものがあった!」といった驚きの声が多数。また、普段コミュニケーションを取るときも「ちゃんと相手の声に耳を傾けられているかな」と気を付けようという意識が劇的に高まると教えてくださいます。

実は、僕が初めて「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を体験したときも、まさに雷に打たれたかのような衝撃を受けました。コンテンツの出口が新しい世界の入り口だったと感じたのです。同時に、未知の世界に飛び込んでいくことは、本来とても楽しいことなんだと再確認しました。それ以来、「未知との対話」というキーワードを大事にしています。そして、本当に心から人にお薦めできるこのコンテンツを全力で、一緒に広めていきたいと思いました。

一人でも多くの人に体験してもらうために、心地よい違和感をつくる

クリエーティブディレクションで最もこだわっているのは、ワンキャッチ、ワンビジュアルで「未知との対話」へのワクワク感を伝えることです。「何だろう?」という疑問を「なるほど!こういうことか!」と納得できることを意識しました。ちょっと「何だろう?」と考える時間を持つことで自分の心に残ると思うんです。僕はそれを「心地よい違和感」と呼んでいます。

ダイアログ・イン・サイレンスのポスター
ダイアログ・イン・サイレンスのポスター

例えば「ダイアログ・イン・サイレンス」では、人差し指を口元に立てる「おしずかに」のポーズをとったビジュアルに、「おしゃべりしよう」というコピーを組み合わせました。一見ちぐはぐなこの二つの要素で、「音のない世界でおしゃべりって?」と興味を持ってもらう。

ダイアログ・ウィズ・タイムのポスター
ダイアログ・ウィズ・タイムのポスター

また、「ダイアログ・ウィズ・タイム」では、赤ちゃん、少女、成人女性、高齢の女性がある場所を歩いているというビジュアル。実は木の年輪の上なのですが、一瞬「何だろう?」と考えてもらうことを意識しました。そこに「未来に会いに行こう」というコピーで、「自分の未来?どういうことだろう」と興味を持ってもらう構造です。

ダイアログ・ビジネスワークショップのメインビジュアル
ダイアログ・ビジネスワークショップのメインビジュアル

さらに「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」は、学びの場としての役割を強調した企業向け「ダイアログ・ビジネスワークショップ 」も展開しています。そのクリエーティブディレクションも、ワンコピー、ワンキャッチで。会話の吹き出しを「=(イコール)」の符号に見立て、「暗闇の中での対話は、誰もが対等になれる」というコピーを据えました。

2020年、 ダイアログ・ミュージアム「対話の森」がオープン

2019年の秋にはミュージアムで活躍するアテンドを育成する「ダイアログ・アテンドスクール 」が開校します。

6月25日にアテンドを募集する新聞広告を出しました。

新聞広告
「ダイアログ・アテンドスクール」アテンド募集の新聞広告
「障がい者と高齢者は、決して弱者ではありません。むしろ、不便な生活の中で、人と関わり、人が本来持つ温かさを知っている。だからこそ、これからの日本に必要な流れをつくる優しい変革者なのではないかと。」 (広告本文から抜粋)

このスクールで新しいロールモデルをつくりましょう、というメッセージを伝えたくて、「見えないも、聞こえないも、歳をとるも、すごい能力に、変えることができるんです。」というコピーを書きました。

そして、2020年にダイアログ・ミュージアム「対話の森」がオープンします。

ここでは、老若男女、障害のあるなし関係なく、さまざまな方たちが交流し、ダイアログシリーズを体験します。普段の生活では出会えない人たちと対話することで、自分らしさや新しい発見ができる場所になることを目指しています。

「ダイアログ・アテンドスクール」で学んだ、より多くの魅力的なアテンドたちの導きによって、たくさんの方に「未知との対話」を体験してもらえたらうれしいです。どうぞご期待ください!