今、コンテンツビジネスが面白い!No.2
「有明アリーナ」運営という、新たな挑戦
2019/09/05
電通のコンテンツビジネスを手掛けるコンテンツビジネス・デザイン・センター(以下、CBDC)で新領域に挑戦する社員の取り組みを紹介する本連載。第2回は、ライブ・エンターテインメント事業開発部の人見秀司氏が、有明アリーナのビジネス構想を語ります。
各業界のリーディングカンパニーが集結、コンセッション方式による日本初のアリーナ
東京2020競技会場のために新設される有明アリーナ。オリンピックではバレーボール、パラリンピックでは車いすバスケットボール競技が開催される、東京都が所有する施設です。今回は、電通として新しい試みとなるアリーナビジネスついてCBDCの人見秀司がお話しします。
有明アリーナは日本初の「コンセッション方式」で運営するアリーナとして注目されています。「コンセッション」とは、公共施設の運営権を、民間企業に売却することです。空港や道路などの公共インフラでは、国内でも多数事例がありますが、アリーナのような稼働率の需給予測が立てにくい公共施設での採用は今回が初めてとなります。
それでも、東京都がコンセッション方式を採用した理由は、民間企業のノウハウや創意工夫を最大限活用することで、都民サービスを向上させるとともに価値のあるレガシーを創出し、有明アリーナを「東京の新たなスポーツ・文化の拠点」とするためです。
この事業は、代表企業である電通、構成員であるNTTドコモ、日本管財、アミューズ、Live Nation Japan、電通ライブ、アシックスジャパン、協力企業であるNTTファリシティーズ、クロススポーツマーケティング、三菱総合研究所の計10社によるコンソーシアムで実施します。
運営会社の「株式会社東京有明アリーナ」(https://www.ariake-arena.tokyo)は、コンソーシアムの代表企業と構成員の出資で設立された特別目的会社(SPC)です。2021年6月から2046年3月までの25年間、アリーナの運営業務を行います。
最先端の通信インフラが「スマートアリーナ」を実現させる
1万5000人を収容するメインアリーナの床は、木床ではなくコンクリートとなっており、スポーツのみならず音楽興行などの多様なイベント対応が可能になります。ここからは、私たちが計画している有明アリーナの構想をお話しさせていただきます。
メインエントランスに一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが大型ビジョンとプロジェクションマッピングです。イベントごとに迫力のある映像が映し出され、非日常空間を演出します。
また、観客席には車いす用のアメニティー席や、VIPテラス席なども設置。アリーナを訪れる誰もが、それぞれの目的に合った楽しみ方ができる工夫を施します。
さらに、来場者の利便性を向上させるスマートフォンを活用したアリーナアプリも導入予定です。NTTドコモのバックアップにより、高密度Wi-Fi、将来的には5Gを導入するなど、最先端の通信環境を提供し「スマートアリーナ」を実現させます。
魅力的なコンテンツを発信するプラットフォーム
有明アリーナの運営コンセプトは“世界に選ばれる、地域に愛されるアリーナ”です。「箱貸しからコンテンツ編成へ」を合言葉に、会場貸し出しの稼働率を確保するだけではなく、年間を通して魅力的なコンテンツを呼び込み、編成することでスポーツとエンターテインメント、公共性と収益性のバランスの取れたコンテンツ編成を実現します。また、既存の大会や音楽イベントを誘致するだけでなく、新たなコンテンツを創造し、発信するプラットフォームとしてのアリーナの機能を拡充させます。
いまや、スマートフォンであらゆる情報を取得でき、YouTubeなどであらゆる動画を視聴できる時代です。何でもインターネット経由で見られるからこそ、自分の目でスポーツを観戦する、自分の耳で歌手の歌声を聴くといった「体験価値」の需要が確実に高まってきています。アリーナとして、いかにその体験価値を最大化し、ビジネスにつなげていくかが、私たちの腕の見せ所です。
何より大切なのはアリーナを起点とした「有明レガシーエリア」の街づくり
本事業で何よりも大切なことは、レガシーを有明アリーナ内にとどめることなく、アリーナの外に波及させ、有明レガシーエリアの街づくりに貢献することです。
有明アリーナを中心に新しい交通網や水辺を活用したにぎわいイベントなど、さまざまな企画を検討しています。
また、有明アリーナを基点にスポーツボランティアの組織化も計画中です。ボランティアマインドが高まっているタイミングを捉え、地域住民や学生たちが一丸となってスポーツ大会などを支えることで、街全体を活性化できたらと考えています。
今後、有明アリーナがさまざまな国際競技大会での実施会場として選ばれるために、積極的かつ継続的な設備投資をするとともに、魅力的なコンテンツを編成し、ボランティアマインドを育て、エリア全体を活性化させていきたいと思います。競技会場としてのハード面のレガシーだけではなく、ソフト面のレガシーもキッチリ残していきたいと思います。