今、コンテンツビジネスが面白い!No.3
eスポーツの壁を壊せ!全世代が感動するコンテンツを目指して
2019/10/29
電通のコンテンツビジネスを手掛けるコンテンツビジネス・デザイン・センター(以下、CBDC)で新領域に挑戦する社員の取り組みを紹介する本連載。第3回は、金原玄樹氏が、「eスポーツ」ビジネスへの取り組みを紹介します。
新たな若き才能を発掘する「STAGE:0」
はじめまして、CBDCの金原と申します。昨今、耳にすることが多くなった「eスポーツ」という言葉。単にトレンドとして乗るということではなく、中長期視点で取り組む新たなビジネスの舞台として、さまざまなクライアントから相談を頂く機会が今、急速に増えてきています。私たちは2年ほど前からこのeスポーツのポテンシャルに注目し、あらゆる取り組みを行ってきました。
eスポーツは、ジェンダーや国境の垣根なく参加できる競技として、世界でおよそ3億8000万人(2018年 ※1)の観戦者・ファンがいるとされています。一方で日本はゲーム大国でありながら、市場規模においては全世界の2%程度しかなく、世界で活躍する日本人プレーヤーはごくわずか。フィギュアスケートや卓球と同様に、若い世代から新たなスター選手が次々と誕生し、世界に羽ばたいていけるような環境が必要となっています。
※1
newzoo 2018 GLOBAL ESPORTS MARKET REPORT
(https://asociacionempresarialesports.es/wp-content/uploads/newzoo_2018_global_esports_market_report_excerpt.pdf)より
そこで、「君はまだ、自分の本当の脳力を知らない。」をキャッチコピーに全国から才能ある高校生を発掘し、世界レベルに通用するプロゲーマーを巣立たせる、国内最大級のeスポーツ“甲子園”を目指して立ち上げたのが「STAGE:0(ステージゼロ)」。
昨年6月から全国7ブロック(北海道・東北・関東・中部・関西・中四国・九州沖縄)での地方大会、8月14日・15日には舞浜アンフィシアターで決勝大会を開催。合計で全国1475校、1780チーム、4716人の高校生が参加しました。また、決勝大会の様子をライブ配信し、映像視聴者数は2日間合計で136万人(※2)を記録しました。
※2
2019年8月15日集計。決勝大会開催中の「Twitter」「Twitch」「Youtube」視聴者数の総計
仲間と共に助け合い勝利を目指す高校生たちの姿はとても輝かしく、スーパープレーが飛び出すと会場がどっと沸き上がる一体感からも、新たなスポーツ文化の誕生を感じました。
参加した高校生たちのご家族、学校の先生方からも「こんなに大きな大会だとは思っていなくて驚いた」「子供たちが真剣に仲間たちと頂点を目指す姿に感動した」「校内で表彰したい」「これからも応援していきたい」などなど、たくさんのポジティブな声を頂いています。
大会の数日後には、テレビ東京系列でeスポーツ大会としては史上初となるプライム帯での2時間弱の特番を放送。SNS上には、番組視聴をきっかけに「eスポーツの魅力に気づいた」「自分も始めてみようと思う」といった声が広がりました。
さらにSNSでは、フォートナイト部門で準優勝した高校生から投稿された、学校に準優勝を祝う横断幕が掲出されたという画像が話題になりました。
こういった一つ一つのムーブメントが起きることで、中高生だけでなく大人世代の目にも留まり、eスポーツに対するイメージを変え、共感を呼ぶコンテンツへと成長させていくことができるはずです。その萌芽をしっかりと見いだすことのできた「STAGE:0」は、非常に意義のある大会になったのではないかと思います。
唯一無二の大会を急ピッチでつくれたワケ
この大規模な大会を、構想から1年弱という短い期間で実現することができた要因は、「最強の実行委員会」を結成できたことです。
電通社内では、各専門部署のメンバーを横断的に束ね、それぞれの領域でのスペシャリストを集結させました。
そして、この構想の理念に共感する社外パートナーとして、地上波初のプライムタイムのeスポーツ番組「有吉ぃぃeeeee!~そうだ!今からお前んチでゲームしない?」を一緒に立ち上げたテレビ東京と実行委員会を組成し、各地方大会の主催には各エリアのローカル放送局、新聞社にパートナーとして加わっていただきました。
この他にも制作会社、運営会社、それぞれの分野で一流の仕事をするメンバーと巡り合うことができました。 他に類を見ない実行委員会を組織した後、実際の活動として積み上げてきたのは大変地道な作業ばかりでした。
メディアパートナーを中心に、各地域の高校へ電話や直接面会してのアプローチや、教育委員会や地方自治体へ後援支援のお願いなど、草の根的活動を続け、少しずつ大会の認知と参加者の募集を進めていきました。
また、賛同いただいたゲームパブリッシャーの大会の告知協力、地方局での特番制作や新聞紙面での取り上げ、インフルエンサーを巻き込んだコンテンツ発信などを、大会本番まで途切れずに実施することで盛り上がりをつくりました。
それぞれのセクションで背負ったミッションと目標に向かって全員で奔走する、まさに総力戦。会場が満員の観客で埋まり、その中心で高校生たちがしのぎを削る、そんな最高の舞台をビジョンとして共有し、走り抜けた結果、短い準備期間での大会開催を実現することができたのです。
次なる挑戦は、世界で活躍するヒーローをつくること
電通は、2018年の夏に日本eスポーツ連合(JeSU)のマーケティング専任代理店に就任させていただき、JeSUのパートナーとなりました。
電通が培ってきたスポーツビジネスやメディアとのネットワークなど、多くのリソースを活用しながら、JeSUのスポンサープログラムの作成、スポンサーセールス、eスポーツ番組の立ち上げなど、日本のeスポーツの振興・発展の仕組みをゼロから立ち上げています。
19年8月にはアジアの若年層に絶大な人気を誇るシンガポールの総合格闘技団体「ONE Championship」とジョイントベンチャーを立ち上げ、アジア全土にeスポーツのネットワークを構築するプロジェクトが始動しました。電通グループのグローバルの各拠点、エリアを超える取り組みとしてeスポーツを推進しています。
さらなる私たちの目標は、世界で活躍するヒーローをつくる、というコンセプトをより強く体現できる場をつくること。それと同時に、少しずつeスポーツの関心層を広げ、社会的地位を上げ、文化にしていくこと。
この先、第2回の「STAGE:0」に挑戦するのはもちろん、さらに新たなeスポーツ事業を、われわれの得意とする、多くのパートナーを巻き込んでつくるという方法で、国内外含めて企てていきたいと思っています。