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ADFESTから見えた、クライアントリレーションの新たな形

2019/06/27

ADFESTから見えた、クライアントリレーションの新たな形

「ADFEST(アドフェスト)」は1998年に創設された、アジア太平洋地域で最大の広告祭の一つです。今年は「TMRRW.TDAY 」(明日、今日)をテーマに3月20~23日の4日間、タイのパタヤで開催され、34カ国・地域の63都市から1120人が参加しました。今年は賞の増設などがあった上、新しい試みとして、「TMRRW BIZ SCHOOL(トゥモロー・ビズ・スクール)」が開催されました。これは、広告の神髄であるクリエーティビティーに、マーケターのビジネス視点を取り入れるための4日間のセミナーで、広告賞の受賞歴豊富な業界のエキスパートが講師を務めました。

海外拠点との協業やサービスデザインに携わっている電通グローバル・ビジネス・センターに所属の段希子が、セミナーのレポートを通じて、これからの広告業界に求められる新たな視点を紹介します。

トゥモロー・ビズ・スクールとは?

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dentsu Xグローバルプレジデントの中村光孝氏によるセミナーの様子

トゥモロー・ビズ・スクールは、クリエーティブとビジネスのシナジーの創造を学ぶことを目的としたセミナーです。参加者は、クライアント側のマーケターをはじめ広告に携わる人たちで、今回は15人の参加者が集まりました。

そして、広告賞を受賞した広告のプロたちが講師としてセミナーを実施。世界100カ国以上で事業を展開する広告会社グループ「ピュブリシス・グループ」のEコマース部門ヘッド、クリスティン・ワン氏による中国Eコマースの最前線や、韓国の広告会社グループ「チェイル・ワールドワイド」のジャックス・ユン氏によるテクノロジーとヒューマニティーの融合したクリエーティブに関するセミナーなど計8コマ行われました。

新フレームワーク「MAP」を活用した、ビジネス目線の広告設計

dentsu X※1 グローバルプレジデントの中村光孝氏も登壇し、これからのオリエンのあり方について述べました。ここでのオリエンは、クライアント側による課題の説明を指します。クリエーティブのショーケースをメインとしているセミナーが多く見られる中、中村氏のセミナーはクライアントとそのビジネスに寄り添うものでした。

テーマは、「A Brief for tomorrow」(クライアントは、本当にビジネスをドライブできるようなオリエンをできているのか?)というもの。クライアントのマーケティング責任者を対象にしたアンケートデータを用いて、クライアントがエージェンシーに向けて、どのようなオリエンをすればビジネスにつながるようなマーケティングを提案してもらえるのか、ということを説明しました。その内容を一部ご紹介します。

「デジタルの時代に入り、コンテンツのタイプやメディアの役割、データの使い方が多様化し、クライアントが広告に求めているものも変わってきています。求められているのは、広告を通じ消費者がブランドとのつながりを感じられるような体験の提供や、購買行動につながるブランドコミュニケーションなど、より消費者との関係性にフォーカスした目標です。

さらに、従来の表層的なメディアでの露出や競合との差別化が機能しなくなっています。このため、クライアントも様々な専門性をもつエージェンシーと付き合い、広告やメディアの効果を測る数多くの評価基準やツールを使い分けたいと考えています。

“従来の”といったような切り口ではなく、クライアントの社会的意義や、消費者が抱えている問題の解決などにフォーカスしたアプローチが大切です」

このように、中村氏は、そのソリューションとしてMAP(Motivation Attention Planning)というdentsu Xのプランニングフレームワークを紹介しました。MAPは、結果としての消費者の行動だけではなく、その元となるモチベーションに注目し、タイムリーに最適なコミュニケーション立案へと導くフレームワークです。MAPでは、企業やブランドが抱える課題や問題点を、カテゴリーや競合分析からだけではなく、日々変化する社会・経済的なトレンドへの考察をベースにして明らかにしていきます。

例えば、製菓会社にとっての真のチャレンジはマスメディアでの広告の内容でも、競合が出している施策でもなく、社会がスナック菓子に対して持っているバイアスをいかに変えられるかということなのかもしれません。MAPはそのチャレンジを見いだし、マーケティングでどのように解決できるかを提示するツールとなっています。

そして、中村氏は、MAPが従来のアプローチと最も異なるのは、コミュニケーション上の目標が、企業やブランドのビジネス成長にしっかりとつながることにプライオリティーを置いている点だと説明しました。

中村氏はセミナーを通じ、ビジネスの成長を主要目的としたオリエンにおいて、クライアントにとって、エージェントに一括して提案してもらう重要性と、それを実現できるツールの紹介を通し、エージェンシーとクライアントのより積極的で新しい関係の必要性を語りました。

クライアントと広告をつなげる「トゥモロー・ビズ・スクール」の展望

私自身、普段の業務は、クライアントと密接なパートナーシップが必要なプロジェクトに関わっており、クライアントはマーケティングコミュニケーションの領域を超え、ビジネスの結果に貢献できるよう広告会社により成果を求める傾向にあると感じています。クライアントは広告会社に対し、受発注の1対1の関係以上に、様々な企業とのリレーションをフル活用し、ステークホルダーとの間を取り持つなど、新たなビジネスチャンスの提供を求めているのです。

一方で、広告賞の祭典では、クライアントとエージェンシーのあくまで「1対1の受発注」の関係で作られた作品ばかりが目立ちます。クライアントとエージェンシーの相互作用も、クライアント同士の相互作用もほぼ感じられないもので、実際アドフェストに参加していたクライアント側のマーケターたちもその点にフラストレーションを感じていました。

この点を課題として考え、広告の祭典であるアドフェストをクライアントとの関係構築の場として捉えるという新しい試みとして、トゥモロー・ビズ・スクールが開講しました。

今後、クライアントが広告に求めているものの全体像をより把握していくことで、広告をつくる側は広告賞を業界内での存在感をアピールする場として活用するだけではなく、クライアントを巻き込み、ビジネスにつながるような新しい広告賞の存在意義を模索していくことができるのではないでしょうか。

※1 電通グループのメディアエージェンシーで、約50カ国に拠点を展開する。