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“忘れてもらうこと”にもお金が必要となる時代に

2019/07/03

デジタル化が進み、膨大なデータがストレージやクラウドに蓄積され続ける世界で、個人情報やプライバシーの問題をどのように扱うべきか、いまだに適切な回答は出ていません。 

デジタルデータのストックは、中長期的にはわれわれの生活にポジティブな影響を与えてくれるでしょう。

例えばヘルスデータの蓄積は、将来的には健康寿命を延ばすための秘訣を示唆してくれたり、疾病予防のための思いもかけない方策を教示してくれるかもしれません。また、自動車走行データの蓄積は、事故多発地区における注意喚起、災害時における適切な走行ルートの提示などに役立つでしょう。 
 
一方で、ウェブ閲覧・動画視聴をはじめとするさまざまなデジタル・フットプリント(行動履歴)を、どこまでマーケティングデータとして活用してよいか、デジタル上のプライバシーはどこまで守られ、かつ配慮されるべきか。ネットやSNSを通じたコミュニケーションとプライバシーの境界線はいまだに曖昧です。 
 
個人情報の問題は、本人が生きている間だけでなく、死後、SNSやクラウドのストレージデータに個人情報が残り続ける、いわゆる「デジタル遺品」の扱いについても課題が残ります。理想的には遺言や後見人を通じて適切に処理されるべきです。

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そんな中、残された人々がフェイスブックで表示される誕生日に故人へのメッセージを送るといった、SNSがある種のデジタル墓標の役割を果たすといった現象も起きています。最近では、エフェメラルSNSと呼ばれる一定時間で投稿内容が消えるSNSも登場していますが、痕跡を残したい欲望と消し去りたい欲望の葛藤を示す現象であるともいえるでしょう。
 
このように考えると、中長期的にはデジタル諸問題に関する適切な法整備も必要になってきます。近年では、個人情報を第三者機関に預託し、適切に運用してもらう「情報銀行」というコンセプトがEC発で生まれてきてもいます。

いずれは、これらの個人情報とプライバシー問題を、適切にアドバイスし、コントロールしてくれる、「パーソナル・デジタル・キュレーター」といった職種も登場してくるのではないでしょうか。デジタル上から「忘れてもらう」ためにも、お金を払う必要が生じる時代になっていくことでしょう。

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