loading...
MENU

米国の対日政策に影響を与えるシンクタンク

知らなかったでは済まされない!パブリックアフェアーズNo.5

2019/07/16

米国の対日政策に影響を与えるシンクタンク

これまでの連載では、「なぜ企業の取り組みにPA(パブリックアフェアーズ)活動が必要か?」という命題に対しての検証、すなわち政策関係者と企業の間における認識ギャップの存在や、ルールメーキングについて解説してきました。そしてPA活動を成功させるには三つのポイントに留意することが重要であるとし、前回はその新しいモデル「イノベーションPAモデル」について説明しました。

今回は、5回連載の最終回になります。米中貿易摩擦や日米通商交渉に代表されるように、米国の突然の政策変更に当たって、日本企業が影響を受けるケースが出てきています。電通パブリックリレーションズでは、米国のシンクタンクであるNBR(National Bureau of Asian Research:全米アジア研究所)と協力関係を締結し、米政権の対日経済政策などに関するリサーチや討議を行っています。

米政権の政策決定に影響を与えるアクターのひとつであるシンクタンクについて、実際に現地ワシントンD.C.でシンクタンクと政策に関するラウンドテーブル(円卓会議)を通じて意見交換を行った、電通パブリックリレーションズPA戦略部の許光英が解説します。

米国の政策決定における重要なアクターであるシンクタンク

シンクタンクの定義はさまざまですが、ペンシルべニア大の定義では、「政策立案者と一般市民が公共政策についてのより良い意思決定を行うために、国内・国際問題の政策志向の調査・研究および助言を行うための機関であり、永続的な組織の形をとるもの」と定義されています。

シンクタンクは世界中に存在し、特に米国では大小1000を超えるシンクタンクがあるといわれていて、経済・貿易や安全保障、移民などさまざまな分野における研究が行われています。

米国の政策決定過程においてシンクタンクの役割は重要であり、公共政策の立案および社会課題の解決に向けた研究・提言をしているため、立法、行政、司法、メディアに続く“第5の権力”と呼ばれることもあります。日本のシンクタンクとの大きな違いは、非営利、独立系が多いということや、元閣僚・元政府高官の参画が非常に多いことなどが挙げられます。

米国の政府・政治家は、このような圧倒的な調査力・考察力・思考力を持ったシンクタンクを活用して、世界の動向を把握し、自国に有利な政策活動に結びつけています。米国は二大政党制であり、政権移行が起きるたびにシンクタンクと政権を行き来する研究者や行政官は多く、人材の流動性によるダイナミックな政策立案は日本が見習うべきシステムであると考えられます。

アジアに特化した研究と政策提言を行うシンクタンク「NBR」と協力

電通パブリックリレーションズでは、米国のシンクタンクNBRと協力し、米国の対日経済政策について分析を行っています。NBRは、インド太平洋に及ぶアジアに特化した研究を行い、トランプ政権にも積極的に政策提言を行うなど、近時、注目されている米国のシンクタンクです。NBRは、非営利団体、そして党派に属さないシンクタンクで、ワシントンD.C.とシアトルに拠点を構えています。専門分野としては、安全保障、経済、通商、エネルギー、テクノロジー、メディカルを得意としています。

当社としては特に、経済と通商関係において、米国の視点から見た対日政策、そして米国の本音はどこにあるのかを探りながら、日本企業として的確な次の一手をどう打つべきかというコンサルティング活動を行っています。

通商問題においては議会・議員も重要なアクター

米国の政策決定においては、大統領はもちろんですが、議会も重要な働きを持っています。米国の連邦政府は、立法府、行政府、司法府から成り、この立法府において、毎年、数千といわれるほど多くの法案が連邦議会に提出されます。法案が起草されて、委員会・議会を通過して、最終的に大統領の署名により法律として成立するのはその内のわずか一部にすぎません。

USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)も、まだ議会で批准されていないため、実効段階にはありません。5月に電通パブリックリレーションズとNBRで行った経済政策ラウンドテーブル(円卓会議)では、米国の議員にとっての重点産業は、農業、自動車、航空機、医薬品であるという指摘がありました。この中で、日本にとっては農業と自動車が最重要課題であり、茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー通商代表の主導する二国間貿易協議でもこの二つをまず検討することが決まっています。

日本企業や関連団体は、シンクタンクなどを利用して、米国議会や議員に対する情報収集・分析も行い、日米貿易協定発効前に今後の方針策定や対策を取れるようにすることが求められます。ケースによっては、地元選出の有力議員へのロビイングや地域コミュニティーとの共生を意識したパブリックアフェアーズ活動を行うことも重要なことです。

今後の展望

2020年のトランプ大統領が再選を目指すキャンペーンでは、すでに野党・民主党の大統領候補者たちが手を挙げ始めています。そのため、米国の通商交渉(中国、カナダ、メキシコ、日本など)は、2019年中に終了するだろうと予想されます。

電通パブリックリレーションズは、今後もNBRとの経済政策ラウンドテーブルを通じて、米国の対日政策を早期に把握し、日本の企業・団体が迅速にアクションを起こせるような仕組みの構築を支援していく考えです。その第1弾として、「ワシントン政策分析レポート」を作成いたしました。日米経済関係、トランプ政権のエネルギー政策、貿易問題などについて概説しています。

今後も継続的にアップデートしていきますので、ぜひご覧ください。

また、米国における政策変更や規制強化・緩和などの局面で、日本企業の対応は米国企業と比較してどうしても遅れがちです。当社では、パブリックアフェアーズ専門会社とも提携関係にあることから、日本企業の米国における対応方針の立案や効果的な対策の実行などについても積極的なサポートを行う態勢を強化しています。

「ワシントン政策分析レポート」をご覧になりたい方は、こちらをご確認ください!