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イノベーションに関する政策立案の際に 国会議員はどのような情報を求めているのか?

知らなかったでは済まされない!パブリックアフェアーズNo.2

2019/02/15

イノベーションに関する政策立案の際に
国会議員はどのような情報を求めているのか?

近年、インターネットやAI、ロボットなどの技術革新により、ビジネス環境に大きな変化が生まれています。企業にとって、優れた製品・サービスを生み出すだけでなく、法整備を促すなど新しい市場のルール形成にも取り組む必要性が増しています。

このような環境下で求められるのが、新しいルールを提案し、そのルールがどのように社会課題の解決に貢献するのか、分かりやすく伝える能力です。自社を取り巻く環境を把握し、さまざまなステークホルダーとの対話を行う「パブリックアフェアーズ」の取り組みが、企業に不可欠な時代となりつつあるのです。

本連載では、これからの企業が取り組むべきパブリックアフェアーズのポイントを紹介していきます。電通パブリックリレーションズ・東大・ホットリンクの3社は、“解決することで、社会・経済・生活が大きく変化し、より良くなる課題”を「社会イノベーション課題」と定義し、イノベーションを促す政策の立案時に必要な情報について調査を実施しました。

連載第2回は、この調査結果を基に、政策立案時に国会議員が必要とする情報や、企業が議員に情報提供を行う際に注意すべきポイントを解説していきます。

現職の国会議員を対象に調査を実施

2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」。IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどの革新的な技術によって、日本が直面する社会課題を解決し、新たな成長を実現する重要性が述べられています(※1)。このようなイノベーションを実現するために求められる政策について、現場の企業からも政策関係者に情報提供する必要性が増しています。

それでは、国会議員の側では、政策立案時にどのような情報を必要としているのでしょうか。今回、「デジタル・ソサエティ推進議員連盟」の協力を得て、衆参両院の約700人の全国会議員を対象とした調査を行いました。このうち、回答を得られた64人の集計結果を紹介していきます(※2)。

※1:平成30年6月15日「未来投資戦略 2018 ―『Society 5.0』『データ駆動型社会』への変革―」 1〜2ページ

※2:調査に回答した国会議員の所属先は、与野党約半数ずつでした。

経済効果だけでなく、国民の生活に及ぼす影響も重視

図1は、イノベーションを起こす政策立案時に重視する観点について、国会議員に三つずつ選んでもらった結果です。上位から見ると、日本の成長戦略の柱として「日本の国際競争力」「経済効果」を重視する議員が多いだけでなく、「国民の幸福度」「国民の健康・安全」についても約半数の議員が重視していることが分かります。

イノベーションを促す政策において特に重視している観点

さらに、国会議員が関心を持つイノベーションの分野について、自由回答で質問を行いました。回答に含まれていたキーワードの抜粋結果が表1となります。「少子・高齢化社会」や「教育・子育て政策」の分野におけるイノベーションに、関心を持つ議員が多いことが分かりました。

現在関心のあるイノベーション領域

つまり、国会議員は経済的な観点からだけではなく、国民の生活の向上という観点からも、イノベーションに期待を寄せていることが分かります。

客観的なデータに基づくエビデンスを求める国会議員は約8割。足りているのは2割以下

それでは、企業から国会議員に対して、どのような形で情報を提供すると効果的でしょうか。本調査では、国会議員がイノベーション政策を考える際に必要とする情報と、情報源を質問しています。

図2の横軸は情報の必要度を表し、右側に位置するほど、国会議員が必要としている情報であることを示しています。

この結果から、国会議員にとって必要性が高いのは、「基礎情報・データ・統計」(84.4%)、「科学的な分析・解説」(78.1%)、「経済効果などの試算結果」(75.0%)となりました。つまり、約8割の国会議員が客観的なデータを求めていることが分かります。

国会議員が、客観的なデータを求めている理由として考えられるのが、EBPM(Evidence-Based Policy Making)への関心の高まりです。内閣府は「EBPM推進室」を設置して、政策立案時のデータ(エビデンス)活用を推進しており(※3)、その必要性が国会議員にも浸透しつつある可能性が考えられます。

一方で、このような客観的な情報が不足していることも、調査結果から明らかになりました。図2の縦軸は、国会議員が必要とする情報の充足度です。「基礎情報・データ・統計」(18.5%)、「科学的な分析・解説」(8.0%)、「経済効果などの試算結果」(12.5%)について、足りているとの回答は2割以下でした。必要とされるデータほど、不足している傾向が分かります。

なお、この調査結果について、データや統計自体ではなく、多忙な国会議員に対する分かりやすい解説が不足していると解釈することもできます。

別の設問からも、この問題は浮き彫りになっています。イノベーション政策立案時の課題について複数回答で質問したところ、最も回答割合が高かったのが「政策を立てるための情報(エビデンス)が不足している」(62.5%)でした。「政策立案をサポートする専門性を持ったスタッフが足りない」(56.3%)が続いています(図3)。

イノベーション政策立案時には、エビデンスとなる客観的なデータが求められており、企業側からも、客観的なデータやその説明を示しつつ、政策提言を行うことが必要と考えられます。

イノベーションを促す政策を実現する上での課題

※3:「政策の企画立案をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化した上で政策効果の測定に重要な関連を持つ情報やデータ(エビデンス)に基づくものとすること(EBPM)が求められている」と述べられています(平成 30 年4月「平成30年度内閣府本府EBPM取組方針」 2ページ)。

国会議員が政策立案時に最も信頼している情報源は、「国会図書館」「勉強会・研究会」「有識者」「関係省庁」

それでは、国会議員に情報提供を行う際には、どのような情報源を活用することが効果的でしょうか。国会議員がイノベーションを促す政策を考える際に、利用している情報源を質問しました。

図4の横軸は国会議員による情報源の利用割合で、右側にいくほどよく利用されている情報源となります。割合が高いのは「新聞・テレビ・ラジオ・雑誌などの報道」(82.8%)、「関係省庁」(81.3%)、「勉強会・研究会」(76.6%)の順番となりました。

さらに、利用している情報源の信頼度についても質問を行いました(※4)。縦軸で上に位置するほど信頼度が高く、「国会図書館」(85.7%)、「勉強会・研究会」(77.6%)、「有識者やその論文」(69.8%)、「関係省庁」(69.2%)の順番となりました。

国会議員に政策提言を行う際には、「勉強会・研究会」のように直接議員と話すことができる場の設定や、「有識者やその論文」などの信頼性の高い情報源を活用することが重要と考えられます。

なお、最も信頼度の低い情報源は、「SNS・ブログ・動画共有サイトなど」(14.8%)、次いで「ネットニュース」(17.1%)となりました。本連載の第1回でも取り上げたように、ソーシャルメディア上には、さまざまな社会課題に対する国民の声が存在しています。

企業がネット上から新製品開発のヒントを得ているように、今後の政策立案のヒントが眠っている可能性もあるため、政策のニーズを伝えるデータとしてさらに深掘りし、整理し、政策立案者に届けていく取り組みが必要と考えられます。

※4:本調査結果は特定の組織や個人の信頼度を取り上げたものではなく、国会議員による評価の傾向を示しています。

国会議員に対する情報提供の三つのポイント

本調査結果から、国会議員への情報提供に必要と考えられるポイントを三つ挙げます。

1.ソーシャルバリューの伝達

イノベーションを促す政策を検討する際に、国会議員は経済効果だけではなく、国民生活にどのような影響を及ぼすかという点にも関心を持っています。企業側も、イノベーションの技術的要素だけでなく、国民の生活に与えるインパクトを示していくことが必要となります。

2.エビデンスの提示

政策を検討する際に、国会議員はデータに基づく客観的なエビデンスを必要としています。しかし、データに基づく分かりやすい説明は、不足しがちな状況にあります。企業が政策提言を行う際にも、客観的なエビデンスを用いて説明することが求められます。

3.エンゲージメントの構築

信頼性の高い情報提供を実現するためには、国会議員と直接話すことができる勉強会・研究会の場や、有識者の力を借りることが有効と考えられます。

なお、民主主義の国家では、有識者の意思は選挙結果によって示されます。政策が実現することで、どれくらいの規模の有権者が恩恵を受けるのかを示すことも、国会議員の関心を喚起しイノベーションを推進する上で、重要な要素と考えられます。

【調査概要】

•調査主体:東京大大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 坂田・森研究室、企業広報戦略研究所(電通パブリックリレーションズ内)、ホットリンク

①社会イノベーション課題推定AI(人工知能)・ビッグデータ分析

•調査概要:「未来投資戦略2017」およびTwitterのデータを基に、「社会イノベーション課題を推定するAI」と、「ソーシャルメディア上のコミュニティーを推定するAI」の二つのAIを開発。さらに、Twitter上の「①つぶやき数の多さ」「②つぶやきの特定のコミュニティーへの集中度」に基づき、18課題を4グループに分類した。
•分析対象:2017年7月のTwitterのつぶやきをランダムサンプリングした数千万件以上のデータ

②国会議員調査

•調査方法:デジタル・ソサエティ推進議員連盟の協力のもと、国会議員(衆参両院)全員に調査票を送付。調査票またはオンライン上で回答を得た。
•調査期間:2017年12月9日~2018年4月8日
•回収数 :計64人(衆議院議員43人、参議院議員21人)