知らなかったでは済まされない!パブリックアフェアーズNo.4
パブリックアフェアーズ活動を成功に導く、「イノベーションPAモデル」の三つのポイント
2019/06/13
これまでの連載では、「解決することで、社会・経済・生活が大きく変化し、より良くなる課題」を“社会イノベーション課題”と位置づけ、「なぜ企業のイノベーションにPA(パブリックアフェアーズ)活動が必要か?」という命題に対しての検証、すなわち、政策関係者と企業との間における認識ギャップの存在や、ルールメーキングについて、解説してきました。
今回は、PA活動において留意すべきポイントとなる新しいモデル「イノベーションPAモデル」について、電通パブリックリレーションズ・パブリックアフェアーズ戦略部の中憲仁が紹介します。
イノベーションPAモデル
電通パブリックリレーションズが、過去に規制改革を果たしたPA活動の成功事例を研究し、当事者らにヒアリングなどの実施・分析を重ねてモデル化したものが「イノベーションPAモデル」(図表1)です。
このイノベーションPAモデルは「ソーシャルバリュー」「エビデンス」「エンゲージメント」が重要な三つのポイント。
1.ソーシャルバリュー(社会価値):
「ソーシャルバリュー」とは、“社会価値”のことを指します。PA活動においては、その活動が社会の利益・発展に寄与できるのか、という視点が不可欠です。世論を感じ取り、社会の要請・文脈に沿ったストーリーを構築し、中・長期的な視点で提言できるかが重要です。
よく見られるケースとして、自社の利益創出や利権確保を押し付ける、自己中心的な「陳情型」ストーリーの構築が挙げられます。ソーシャルバリューの訴求もなく、社会課題の解決に向けたアプローチもないようなストーリーでは、世論の支持はおろか政策関係者も聞く耳を持たないでしょう。ソーシャルバリューがあって初めて生活者の理解、世論の支持を獲得できるのです。
2.エビデンス(証拠・証左):
「エビデンス」とは、社会価値の正当性を裏付け、議論の俎上に載せるための証拠・証左のことです。以前、連載第2回で紹介したように、国会議員はイノベーションを促す政策を実現する上での最も大きな課題として、“エビデンス不足”を挙げています(図表2)。
同調査の結果から、国会議員が必要としているエビデンスには三つのパターンが存在することが分かっています(図表3)。
3.エンゲージメント(関係構築):
「エンゲージメント」とは、政策をつくるルールメーカーや、広く国民に伝えるためのメディア関係者との信頼関係や共通見解を構築するための活動です。具体的には、上記のソーシャルバリュー、エビデンスを基に、陳情活動やプロモート活動などの理解促進活動を図ることを指します。
パブリックアフェアーズが解決できること
次号では、PA活動における海外情報収集の重要性、米国シンクタンクについて紹介します。