「Commerce Marketing Conference―顧客体験(CX)がブランドの価値を変える」
が開催。Vol.4
2019/09/26
7月29日、電通ホールで開催された「Commerce Marketing Conference―顧客体験(CX)がブランドの価値を変える」。今回は、その第4部の模様を紹介する。
第4部:
電通グループ各社のソリューションとは? Vol.1
今回のカンファレンスは、電通ソリューション開発センター内に新たに発足したコマースマーケティング部の知見やネットワークを基に企画されたものだ。当日はiProspect、Dentsu Isobarなど電通グループのグローバルのネットワーク(第4部)、さらに電通デジタル、電通テック、電通ダイレクトマーケティング、電通リテールマーケティング、電通tempoなど国内の多様なグループ会社のソリューション(第5部)も紹介された。
Chief Business Transformation Officer Emmanuel Flores 氏は「2019年にはグローバルでのEコマースの売り上げは3.45兆ドルに達し、2020年までには4.21兆ドルに達するといわれている。また、この金額は2019年のリテールにおける売り上げ全体の14.7%と予測されている。さらに中国では、全体売り上げの33.6%をEコマースが占めている」と話し、欧米そして中国を中心に進化をするEコマースの現状について紹介した。
また一様に市場が伸びているとはいえ、Eコマース市場の動向は画一的ではなく、国別に違いがあることが分かっているという。Flores 氏は、日本について「中国に次ぐ、アジアパシフィックで2番目に大きなEコマース市場を形成している。その購入者数は今後5年スパンでは大きく変わらないが、購入者1人当たりの購入額が2022年までに2.7%伸びるといわれている。世界的に見ても、オポチュニティーの大きい市場といえる」との見解を示した。
iProspect,Global Director of Commerce Nate Shurilla 氏からは欧米のクライアントで進む、コマースマーケティングにおけるデータ利活用について説明があった。iProspectでは「国や商品カテゴリー別にコンタクトポイントが異なるので、その違いを踏まえてコマース全体をカバーできるフレームワークをつくっている」という。また「日本企業もEコマース領域のデータをもっと利用すべき。消費者が残したデータは、消費者が何を探し、実際にどのショップで、どの商品を買ったのか、ビッグピクチャーを理解するために役立つ」と説明した。
2社共同のプレゼンテーションを行った理由について、Flores 氏は「2社がタッグを組むことで顧客開拓からCRMまで、Eコマース全体をカバーしたサポートが可能になる」からと説明。さらに「マーケットプレイスにおけるマーケティングを得意とするiProspect と、オウンドサイトやソーシャルメディアを活用したマーケティングを得意とするisobarの両社の連携で、企業に対してEコマースマーケティング全般のサポートを提供することができる」と続けた。
また第5部では「電通グループのソリューション」をテーマに電通の根本淳氏、電通テックの水谷拓志氏、電通リテールマーケティングの倉田哲宏氏、電通ダイレクトマーケティングの清水宣行氏、電通デジタルの三橋良平氏が登壇し、各社のソリューションについて説明。
根本氏は「生活者側に劇的にデジタルシフトが起き、サプライヤーサイドが生活者の生活を全力でサポートし、貢献することがブランド価値を高める時代になった。そのため、電通では、コマース領域強化のため、1月にコマースマーケティング部を創設した」と述べた。
また、「こうした時代に来場者の皆様の課題に向き合う三つのフェーズがある。一つ目は、データをモニタリングすること。二つ目は、データを活用して行動をモデリングすること。三つ目は、データを踏まえ、いまだかつてない感動体験を織り込んだCXをデザインすること。このデザインのフェーズではOMOの設計が非常に重要になり、思い付きではないデータドリブンであることは重要事項。CXの運用をきちんとやりきることがクライアントの皆様のビジネスに貢献することであり、大事な肝だと考えている」と述べた。
また、電通グループとしては、三つの領域でイノベーションを起こしている。
「一つ目は、決済周辺領域です。欧米での研究から導かれている係数を日本市場に当てはめると、Eコマースでいわゆるカート落ちが7兆円ある中、決済に関する摩擦を減らし、またはなくすことで、3.3兆円は売り上げを向上できる可能性があります。
オフラインでは、接客、接遇など、会話やコミュニケーションを通じて商談をまとめることが当たり前ですし、ショッピングカートを使うお店は一部です。本当に今のオンライン上のセルフサービス型のショッピングカート方式は、買い物に最適なのかと考えています。われわれが得意なコミュニケーション領域からイノベーションを起こして、3.3兆円分の摩擦を減らし、なくすことで、クライアントの皆さまのビジネスに貢献できると思っています。
二つ目は、オンラインとオフラインの境目がなくなってきている中、オンラインでは、左脳を刺激する検索クエリを起点としたマーケティングが当たり前になっている一方で、右脳領域、つまり感情領域を刺激するような方法論やツール、ケーススタディーが少ないと考えています。オフラインの買い物においては、『気持ち買い』も含め、エモーショナルな部分を起点にした購買行動があるように、オンライン、オフラインの境目をなくし、気持ちよく、楽しく買い物ができるようにしていきたいとわれわれは考えています。この領域でも、様々なメディアで感動体験をつくってきたわれわれの強みを生かせると考えています。
三つ目は、メッセージングアプリやデバイスの普及で、電話以外の選択肢が増えている中、もっと前向きな顧客とのコミュニケーションをつくるイノベーションを起こしていきたいと考えています。決してクレームを言うつもりではなく、ある問題をウェブだけでは解決できないお客さまが電話で問い合わせしようと思っても、お客さま相談センターの電話番号を見つけるのに小一時間かかる体験はブランドを棄損していると考えます。
これらの領域含め、クライアントの皆さまの課題に向き合わせていただく上で、われわれは、電通グループの資源を最適に組み合わせて提案させていただきたいと考えています」と述べた。
続いて水谷氏が「コマースマーケティングのロボティクス活用」を説明。電通ではリテールコマース領域にAI、IT、ロボ化が加速すると考えていると述べた。「特に、顧客獲得から店頭什器、バックエンドのロジスティクスの仕組み、あるいは顧客データがつながっていく状況の中で、店舗は無人オペレーションに近づいていく。また、決済はスマート化していく。次世代店舗化していく中で、ロボットが役割の中心を担うのではないかと考えている」と述べた。
また実際に中国企業が開発したロボットを使い、アパレルの店舗内のシーンでのデモンストレーションを行った。Tシャツを探している顧客がロボットに問いかけると、API接続をしながら在庫を見に行ったり、あるいはチャットボットで商品データベースを探しに行くなど、顔認証でCRMシステムにつなげて顧客と認識する、というものだ。
「ロボットのマシンの中にすべてのツールが入っているわけではなく、基本的にはクラウドでさまざまなAPIとつないでいる。現在、日本ではまだ稼働していないが、中国国内では上海芸術館でナビゲーションをしたり、警備・監視の手伝いをしている。また、広州空港では顧客からの質問を回答したり、フライト情報を提供するなど、実際にリテール領域のロボ化は実現性を持っていると考えている」と述べた。