「Commerce Marketing Conference―顧客体験(CX)がブランドの価値を変える」
が開催。Vol.5
2019/09/30
7月29日、電通ホールで開催された「Commerce Marketing Conference―顧客体験(CX)がブランドの価値を変える」。今回は、第4部につづいて行われた第5部の模様を紹介する。
第5部:
電通グループ各社のソリューションとは? Vol.2
倉田氏は「流通と共同開発した売り場と連動しているデジタルマーケティングプラットフォーム」を紹介。
「リアル店舗におけるデジタル広告の課題として、①どのクリエーティブが実際に有効であったのか、②店舗に送客ができたのか、③デジタル広告を見て購入したのか、という声をよく聞きます。その上で、広告配信やページ接触の効果検証は多くの企業で実践されており、店舗への来店に関しては、ある部分のメディア出稿量を多めにすれば確認できるところまで来ている。ただ、広告を見た人が購買したかまでは、実践できていないと考えられる。つまり、EC(市場の10%前後)では広告接触から購買までの検証ができるが、リアル小売り(90%強)では購買までの検証はできていないのが現状だと考えている」と述べた。
そのため、倉田氏はデジタルマーケティングプラットフォームの構築をしている。「協業している流通企業から会員の購買データを預り、デバイス付きの位置情報データを用い、Cookieデータとマージすることで、直接アドプラットフォームで広告配信をすることが可能にする仕組みを作った。協業先の流通企業限定になるが、リアル店舗における売り場と連動したデジタルマーケティングプラットフォームの提供ができるようになっている。購買データからしっかりターゲティングができたり、そこから来店、購買、再購入までを購買データを用いて特定できるのが、一番大きなメリットになっている。特徴としては、売り場と連動しているので、広告出稿量を増やしても、売り場が整っていなくて効果が出ないという課題に対して、実際に売り場の展開までをセットにソリューションとして開発している」と述べた。
次に電通Tempoの園原直氏は「デジタル時代の販売促進とは~チラシがおしえてくれたこと」をテーマに同社のソリューション・プロモーション事例について解説した。
「このソリューションを開発したのは、全国展開のホームセンターからの要望がきっかけで折込チラシの補完としてウェブバナー広告を出稿したいが、アニメーション型のバナー広告を、店舗ごとにクリエイティブを変え、商品と価格を差し替えて配信したい。そのご要望に応えて、全店舗、店名・商品・価格の差し替えを実現させました。制作費を抑えつつ、全店舗別版の自動大量生成アニメーションバナー広告を実現しました。
静止画と比較してCPM、CPCで効果が出ており、グーグルのスタービジットの数字で80.2%上がりました。また、チラシ原稿からも生成できます。最終決定した価格、商品などを自動フォーマットとして生成をし、入稿、構成、配信設定、来店計測をレポーティングできます。折込チラシのスケジュールで配信することも可能です」と述べた。
また、別のホームセンターの事例では、「自動生成のウェブバナー広告と連動する形で、LPも店舗ごとに生成したい。毎週配信の内容と合わせてコンテンツを更新しながらデモグラフィックに分類して出し分けをしたい、という要望がありました。そこで、原稿ひとつでさまざまなニーズに答え、自動でコンテンツ差し替え可能な自動生成・動的LP最適化システムDLPO(Dynamic Landing Page Optimization)を開発しました。こちらも、折込チラシと同様に、原稿から簡単に生成できます」と解説した。
清水氏は「ライブコマースソリューションLIVE★X(ライブクロス)」を紹介。タレントだけでなく一般にも広がっていると述べた。
「電通ダイレクトマーケティングでは、インフォマーシャル制作、SNS活用ノウハウを活かして、若者向けにライブコマースの勝ちパターンを構築していく。」と述べた。
また、「中国では2015年ぐらいからライブコマースが浸透しており、購入率が非常に高い。市場規模は4400億円(2018年)であり、ネット人口(7.3億人)の約半数がライブコマースで購入経験がある。日本では、日経TRENDY2018年ヒット予測第2位に取り上げられるなど認知は上がっているものの、まだまだこれからの市場と考えている。認知者のうち購入経験者は14%、回答者全体の4%。しかし、タレントが視聴者とオリジナルスウェットを製作・販売し、1000万円を売り上げるといった実績も出てきている」と紹介。その上で、「通信キャリアが動画見放題プランを開始、各ECモールにライブコマース機能が実装されるなど、ライブコマース市場の拡大を後押しする要素は多いと分析している」と述べた。
最後に三橋氏は『デジタルコマースチームが担うEコマースブランディング』を説明。「ウェブ×スマートフォン×検索環境が整い、人々は自分が欲しいときに欲しい情報を取得できる『常時検索社会』となったことで、消費しきれないほどの情報の海が生まれた結果、自然と知った、知人友人や第3者メディアの情報を重視する『自然情報主義』となる。これが人の消費行動に大きく影響を及ぼし、『消費者が購買を主導』する時代(消費者主導の時代)へとつながった」と述べた。
そこで電通デジタルでは、商品・サービスならではの理想の体験価値は何なのか、そしてなぜそれが良いのかを探索したと語り「オンオフをまたいだ売れる仕組み作り、つまり、チャネル設計と体験設計、LTV向上(ブランド作り)、商品・サービスならではの、顧客体験(特にスマートフォン利用者)をオウンドEC、プラットフォームEC、店舗などのチャネルを活用して設計する E-commerce Brandingが重要だと考えた」と述べた。
その考え方として、「一つ目は入り口と売り場構築・整備です。SNSやコンテンツなどを活用した体験価値向上やオウンドEC構築、Amazon、Rakuten等の売り場整備のプランニングを実施します。二つ目は、既存顧客に向けてのアプローチです。既存顧客との接点を活用した体験価値向上施策。ECサイト改善やアプリ改善、サービス開発など既存顧客に向けた体験価値向上のアプローチをします。三つ目は、継続購入に向けてのアプローチ。既存顧客との接点を活用した継続購入施策、既存顧客に向けて最適な接点、メッセージ、タイミングでアプローチ、ファン化を促進します。この三つの手法を組み合わせたブランディングを提供しています。テクノロジー×アイデアで、新しい体験価値・サービス・ブランド・ビジネスをつくります」と述べた。
電通・コマースマーケティング2部長の根本淳氏は「グループ会社のリソースも組み合わせながら、認知から購入、さらには購入後に至るまでのカスタマーエクスペリエンス全体のデザインをサポートする体制が整った」と話し、コマースマーケティング領域の事業に力を入れていく方針を示した。
最終回となる次回は、「ブランドマーケターがいま、コマースに注目する理由」と題された第6部の模様を紹介する。