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船の遠隔自動運転も!「MaaS」の実証実験をやってみた

2019/10/01


最近耳にするようになった「MaaS」(マース)という言葉。「モビリティ・アズ・ア・サービス」の略称で、陸海空の交通手段を連携させ、検索〜予約〜支払いまで一括してパッケージングした移動サービスのことです。自動運転技術との親和性も高く、近い将来に実現が期待されています。

これまでも複数の交通手段を乗り継いで、目的地までたどり着くというのは当たり前の話でしたが、そのためには例えば目的地への到着時刻から逆算して、フェリー会社の予約サイトで空席を調べて購入。さらに逆算して最寄り駅からの電車の時間をスマホアプリで検索し、駅で切符を購入して乗車…といったように、面倒なスケジュール立てが必要でした。

多くの交通が連携すればとても便利なサービスになるはず!ということで、9月上旬に実証実験をやってみました。

アプリ一つで自動車から船に乗り継ぐ

今回は「自動車」と「船」がテーマ。東京都・汐留にある電通本社を車で出発し、日の出埠頭にある船着場から乗船するというルートですが、この船を遠隔操作で“自動運転”します。

汐留・電通本社

まず出発地から車に乗ると、車に備え付けられたタブレット型端末に出発地から到着地までのルート案内が表示されます。車のカーナビ画面のようですが、よく見ると、車から船に乗るまで一連のルートが入っています。

今回は実証実験ということで人が運転しましたが、将来的にはひとつのMaaSアプリで行き先を指定すると、家の前に自動運転で車がお出迎え。車はユーザーの乗車を感知すると自動で発進。途中、船や電車などの乗り継ぎも同じアプリで乗り降りができ、駅からはまた自動運転車が最適な時間やルートで目的地まで送ってくれる、という夢のようなシステムです。今回の実験内容はそうした将来の実現に向けたもので、今の「Uber」が少し先に進んだ感じでしょうか。

タブレット

日の出埠頭に到着し、ターミナルラウンジへ。デジタルサイネージに今回乗船する船に関する表示がありますが、ここでは切符を購入することなく、そのまま船着場へスルー、これがストレスフリーですね。MaaSでは待ち時間もなくなるんです。

デジタルサイネージ

「らいちょうI」は東京海洋大学の電池推進船。そう、電気自動車ならぬ、電気自動船なんです。フル充電で3時間程度は航行可能です。MaaSの取り組みは、こういった「エコ」への対応とも連動する可能性があります。

らいちょう
そして東京湾へいざ出航!離岸・着岸はどうしても有人操縦で行いますが、途中からいよいよ遠隔操縦の“自動運転”へ切り替え。
らいちょう

船は遠隔操縦の“自動運転”で進む

船に付いているWi-Fiアンテナやカメラを頼りに、陸上の管制室で代わって操縦します。今回の管制室は付近の建物の一室。通信環境にもよりますが、東京湾でも半径2km程度は通信圏内です。
遠隔操縦
遠隔操縦
遠隔操縦に変わると、操縦士が手を離した状態で船が進んでいきます。ただ進むだけではなく、波に対して適切な角度での運行などを、少し離れた管制室から目視、カメラ映像、各種データを確認しながら行っています。
船側の操縦士

今回は実証実験なので、船側の操縦士と管制室が互いに連携しながらの運転でしたが、将来的には無人操縦が実現する予定です。

船は湾内を一周して埠頭に戻りましたが、近い将来は2地点間を船で移動して、着いた先の船着場にはもう次の車が待っている…なんてことも可能でしょう。

らいちょう

技術的にはすでに実現可能な段階に

冒頭で述べたように、交通手段や運行会社がバラバラだと、ユーザーはそれぞれの会社に対して予約や支払いを行うことになります。船着場やインフラの整備は必要ですが、技術的には各社の運行システムを連携させたり、船を部分的に無人操縦できたりといった段階まで来ています。

例えば勝どきから品川方面まで、これまでは電車で20〜30分かかっていたものが、船でショートカットすれば実は5分で着くとか。あるいは港付近で食事をした後、その場から無人操縦の船でショートカットしたのち、自動運転車を乗り継いで家まで帰るような、移動の「一括予約」もできるようになるでしょう。

今回の実証結果を踏まえて、船着場予約管理システムをはじめとする各種ソリューションの開発など進め、MaaS事業を推進していきたいと思います。