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「逆レコメンド機能」が新しい自分をつくる

未来を予測するキーワードNo.5

2019/10/07

「逆レコメンド機能」が新しい自分をつくる

1歳半の男の子が手にしているのはお母さんのスマホ。数あるアプリの中からYouTubeのアイコンをタップすると、手慣れた様子でスクロールし、好きなコンテンツを視聴。それを見ながら同時に他の動画を探し始め、飽きるとすぐに次の動画を楽しみます。

これは今の未就学児ママたちにしてみれば、もはや当たり前の光景です。忙しいママたちにとって、今やYouTubeは欠かせない子守アイテムのひとつになっています。

電通メディアイノベーションラボが東京大大学院情報学環の橋元良明教授と共同で行った調査によると、0歳児の23%もがスマホに接触しており、スマホ接触のある0歳児の2人に1人はYouTubeを視聴していることが明らかになりました。(※1)

※1
「0歳児からスマホ」の時代 ~東大共同調査からの報告 参照
 

このように、物心つく前からいつでもどこでも好きなコンテンツに触れられる環境が当たり前の、スマホネイティブな平成最後の世代(もしくは令和世代)ですが、懸念されるのは彼らの趣味嗜好の形成です。

例えばかつて、CDやレコードを購入する際、ジャケットのデザインのみに引かれて買う「ジャケ買い」という行動がありました。ところが今は、音楽、本、洋服、ニュースに至るまで、あらゆるものがECで買えるようになりました。ECでは、過去の購買(閲覧)履歴や協調フィルタリング(※2)に基づき「あなたにオススメ」や「この商品を買った人はこんな商品も買っています」という形でレコメンドされます。

※2=協調フィルタリング
多くのユーザの嗜好情報を蓄積し、あるユーザと嗜好の類似した他のユーザの情報を用いて自動的に推論を行う方法論
 

YouTubeにおいても同じアルゴリズムで、一度見た動画に似たコンテンツが次々表示されていきます。こうなると、先ほどのようなスマホネイティブ世代は、まだ自分は何が好きなのかを自覚しないうちから、無意識に間接的なフィルターバブル(※3)の中で、価値観や嗜好が形成されてしまうのではないでしょうか。

※3=フィルターバブル
各ユーザーが見たくない情報を遮断する機能により、自分が見たい情報しか見えなくなること
 

情報過多で膨大な選択肢がある現代において、レコメンドやマッチング、パーソナライズやキュレーションなど、効率よく好きなものに出合える便利な機能を否定するわけではありません。しかし一方で、初めて訪れるショッピングモールなどで感じる、まだ見ぬ世界に「何かありそう!」というワクワク胸躍る感覚や、「この手があったか!」という自分の価値観が拡張される新鮮さがネット空間の中でも味わえたら、ちょっとすてきではありませんか?

最近ではSpotifyで一度も再生されたことのない曲のみを流すアプリなども出ていますが、今後はさらに発展し、個人の好みを分析し、あえてそれまでの興味の範囲では交わるはずのなかった新しい出合いを提供してくれる「逆レコメンド」という視点のサービスが出現してくる可能性があります。

イラスト

そうなれば、とかく個人の嗜好で閉ざされがちだったネット空間においても、意外な発見や予期せぬ文化を知るきっかけが生まれます。その体験は、情報にあふれた現代社会の中で新しい自己を形成する上でも、他人任せではない「見極める目」を育てる大切な栄養になるのではないでしょうか。

未来予測支援ラボ:http://dentsu-fsl.jp/