loading...

チャンスはSDGsにある!No.4

SDGs17の目標で「生活者7つの共感クラスター」を発見。あなたは何タイプ?

2019/10/10

全体の傾向、都道府県別、女性など、いくつかの視点で生活者におけるSDGsの実態を見てきましたが、「いざ、SDGsに取り組んでみよう!」となったとき、どの目標から取り組もうと考えますか?第4回の連載では、SDGsの17目標ごとの注目トピックスをご紹介します。

多くの人に共感されたSDGsの目標

SDGsにおいて達成すべき目標は大きく17項目設定されていますが、グローバル視点で考えられているものなので、日本における日常生活からは遠く感じられるものもあるかもしれません。日本の生活者にとって関心が高いのはどの目標なのでしょうか?まだ「実践」には至っていない人も多いので、SDGsについて説明した上で、「このような考え方に共感しますか?」という質問で確認してみました。

それぞれの目標の共感され度合(複数回答可)は図表1のようになります。

全体でスコアが高かったのは、「3.すべての人に健康と福祉を」(64.7%)、「2.飢餓をゼロに」(57.8%)「6.安全な水とトイレを世界中に」(57.7%)「1.貧困をなくそう」(56.8%)、「7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」(50.5%)で、半数以上の人が「この考えに共感する」と回答しました。なぜこれらの目標は共感されやすいのでしょうか?

“生きるための根源的な問題”が共感の理由

上位三つのいずれかについて、それぞれの目標を「一番共感できる目標」に選んだ人に、なぜそう思うのか理由を問うと以下のような回答が得られました。

■3.すべての人に健康と福祉を
“あらゆる活動の根幹になるものだから”(50代男性 会社員<技術系>)
“いつまでも健康で文化的な生活をすることは誰にとっても大事なものだから”(10代男性 学生)
“どの国のどんな人でも、健康で元気でなければ働けない。健康であるということは、安全な食料もあり水もあるということ”(60代女性 専業主婦)

共感度第1位の「目標3」は、すべての基本である、誰にとっても大切、どの目標にも関わる、などの理由で共感されていました。

■2.飢餓をゼロに   
“人間としての最低限度の生活確保”(70代男性 無職)
“そういう世界になれば紛争も少なくなるのでは”(50代女性 パート・アルバイト)
“飢餓で亡くなっている世界の子供たちのテレビを見たとき、衝撃的でショックを受けたから。かわいそうだから”(10代女性 会社員)
“アフリカなどの食料が足りない国がある一方で日本のように食料が余って捨てている国もあり、生まれた国によって最低限の生活の水準が違いすぎるから。せめて食事だけでもと思います”(40代男性 会社員)

共感度第2位の「目標2」は、生きるため・平和のために重要なこと、報道を目にして心が痛む、廃棄が多い日本との極端な差を感じて、などの理由で共感されていました。

■6.安全な水とトイレを世界中に
“まずは感染症など病気を防ぎ、安全に生活できるように衛生面を整備する事は大事だと思う”(30代女性 会社員)
“一番不平等である気がしたので”(10代男性 学生)
“気候変動によってその量が減っており生命活動に直結する深刻な問題。戦争の火種にもなりかねない(40代男性 会社員(技術系))

共感度第3位の「目標6」は、健康に直結する衛生に格差を感じるから、大きな環境問題のひとつとして、水資源が将来的に不安、などの理由で共感されていました。

これらの回答から、共感されやすい目標は、「誰にとっても生きるために最も必要であると考えられる」ものであることが分かりました。また、情報源となっているメディアが取り上げる社会課題の影響が強いことも読み取れています。

企業などの事業に直結しそうな目標は、あまり共感されない?

逆に、全体でスコアが低かったのは、「12.つくる責任つかう責任」(31.7%)、「17.パートナーシップで目標を達成しよう」(34.2%)、「11.住み続けられるまちづくりを」(34.5%)「13.気候変動に具体的な対策を」(35.7%)、「9.産業と技術革新の基礎をつくろう」(36.4%)などで、図表2のようになりました。

SDGsの17目標に関する共感度(下位5位)

これらの目標は、多くの事業に直結する課題であり、企業や自治体にとっては取り入れやすいかもしれませんので、ここから着手する、という考え方もあります。その際に、本調査の結果を鑑みると、ブランディングや販促にも活用する目的で生活者に対して取り組みをアピールする場合は、例えば前述の「共感されやすい目標」とセットにして取り組む、などの工夫でより効果(共感)が高まる可能性があります。

共感する目標の傾向から、七つの「共感クラスター」を抽出

ところで、共感する目標は一つとは限りません。いくつかの目標に同じように強く共感する、という人もいるでしょう。そこで、目標への共感の仕方に傾向があるのかどうか、クラスター分析を実施して検証してみました。その結果、七つの「共感クラスター」が発見できましたのでご紹介します。

SDGs目標の七つの共感クラスター
1.「健康第一」タイプ

「健康であること」に共感することが特徴の、全体(一般)にもっとも近いクラスター。
特徴:女性がやや多い(56.7%)。

2.「格差反対」タイプ

「貧困をなくすこと」「飢餓をなくすこと」「不平等を減らすこと」の三つに特に共感するクラスター。
特徴:男女ほぼ同率/世界の貧困問題や格差問題を解決するために時間や手間をかけてよいと思う人の割合が高い(61.0%、全体 +12.4ポイント)。

3.「エコ実践」タイプ

「再生可能なエネルギー」「気候変動の対策」に共感する人が多く、「清潔な水と衛生」「新しい技術とインフラ」に共感する人も多く含むクラスター。節電節水、省エネ、エコ家電の導入などを実践。
特徴:男性が多い(60.8%)/60歳以上がやや多い(40.2%、全体 +9.8ポイント)/無意識実行層がやや多い(26.6%、全体 +6.0ポイント)。

4.「まず教育」タイプ

「質の高い教育」に共感し、「健康であること」「適切な良い仕事と経済成長」に共感する人の割合もやや高いクラスター。
特徴:男女ほぼ同率/「国や企業が社会問題や環境問題の解決に取り組むことは、科学技術やテクノロジーの発展につながると思う」人の割合がやや多い(82.6%、全体 +6.4ポイント)/「社会問題や環境問題を軽視する国や企業は、世界からバッシングや批判にあうと思う」人の割合がやや多い(79.2% 、全体+6ポイント)。

5.「飢餓撲滅」タイプ

「飢餓をなくすこと」に共感し、「質の高い教育」「清潔な水と衛生」にもやや共感するクラスター。
特徴:女性がやや多い(56.8%)/60歳以上がやや多い(37.6%、全体 +7.2ポイント)/専業主婦がやや多い(23.6%、全体 +5.4ポイント)。

6.「自然賛歌」タイプ

「清潔な水と衛生」「気候変動の対策」「海のいのちを守ること」「陸のいのちを守ること」の四つ、地球の資源・環境系の目標に共感する人の多いクラスター。
特徴:女性がやや多い(56.0%)/中部エリア居住者がやや多い(25.0% 、全体+6.8ポイント)/解決するために、今の生活レベルを落としてもよいと思う人が多い(56.0%、 全体+13.4ポイント)/自治体への期待が高い人が多い(91.6% 、全体+13ポイント)/自治体やNPOの活動に参加・協力したいと思う人の割合が高い(63.9%、全体 +10.8ポイント)。

7.「低関心」タイプ

どの目標に共感する人も少なく、共感するものがひとつもない人を35.3%(他のクラスターは0%)含むクラスター。目標達成のために自分やライフスタイルが変わることを嫌う。
特徴:男性が多い(59.7%)/未婚が多い(44.0%、全体 +10.2ポイント)/子供なしが多い(56.5%、 全体+12.0ポイント)。

「年代」「職種」「役職」「居住地域」で共感する目標に違いが!

また、共感した人のデモグラフィックに特徴が見られた目標もいくつかありました。

例えば、「年代」に差が見られたもの、「職種・役職」に差が見られたもの、「居住地域」に差が見られたもの、などがあります。

「年代」で共感に差があった目標

今現在、課題として実感しやすいことであったり、昔との変化を感じていることであったり、世代やライフステージの特徴がよく出ていると思います。
 

「職種」「役職」で共感に差があった目標

有職者の場合は、自分が仕事で向き合っている課題と親和性の高い目標に関心を持ちやすい、といえそうです。取り組む際の「協力者・組み先」のヒントになるかもしれません。
 

「居住地域」で共感に差があった目標

エリアの状態に関連しているのか、あるいは、地元企業の影響もあるのか、居住地域でも少し差が見られました。

SDGsをビジネスチャンスに生かすには?

SDGsをCSRにとどまらない「チャンス」として考えるときに、まず、取り組むべき目標は、企業や団体、組織の中心となる事業ドメイン、主力商品・サービスに関連の深いものであることが前提、取り組みやすいものからが基本、となると思いますが、より一層、それを世間で受け入れられる活動にしていくことを考えると、主要顧客・ステークホルダーの特性やSDGsの目標の組み合わせで相乗効果が図れそうかどうか、などの視点も視野に入れておくと良いかもしれません。

また、個人で実行する場合もそうですが、「SDGs認知が低く理解を得られない」ということが取り組みの障壁になっている場合は、今までに挙げたようなさまざまな切り口で課題と価値観を共有できる仲間を探し、各目標から理解を促進していくというのもひとつの手段だと思います。