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日本はデザイン後進国? 経営にこそ、デザインが必要な理由。

一億総デザイン思考時代。日本初!「CIID Winter School」開催No.1

2019/10/25

日本はデザイン後進国? 経営にこそ、デザインが必要な理由。

2018年5月、経済産業省・特許庁が「『デザイン経営』宣言」を発表しました。これは、「デザインを活用した経営手法『デザイン経営』を、もっと積極的に活用していきましょう」というもの。しかし、実際に事業に取り入れるのは難しいと感じている方も多いのではないでしょうか。

電通ビジネスデザインスクエア(以下BDS)では、デンマーク・コペンハーゲンの教育機関「CIID」(Copenhagen Institute of Interaction Design)と連携し、デザインの手法やアプローチを学ぶことができる「CIID Winter School」を2020年2月に日本で開催します。今回は、今なぜ「デザイン」が「経営」に求められているのか、BDS坂巻匡彦氏に語ってもらいました。

「デザイン」は、ブランド力向上とイノベーション力向上の役に立つ?

こんにちは、BDSの坂巻です。まずは「デザイン経営」の文脈で語られる「デザイン」の役割をお話しします。前出の「『デザイン経営』宣言」には、デザインは、“ブランド力向上”と“イノベーション力向上”の役に立つ、ということが書かれています。

ブランド力向上は、「デザインで見た目を美しくすること」「UXデザインで体験価値を向上させること」「ブランドの価値を一貫したメッセージとして伝えること」など、その理由が想像しやすいと思います。

一方、イノベーションの役に立つのはなぜか、と聞かれるとその理由を説明するのは少し難しいかもしれません。「『デザイン経営』宣言」には、デザインは、誰も気付いていないニーズを発見するのが得意だから、というようなことが書かれています。これは、「デザイン思考」に影響を受けた考え方です。

「デザイン思考」とは、デザイナーの考え方をフレームワーク化して「これを使うと、みんなデザイナー的な考え方ができるよ」というもの。

マーケティング的なアプローチでは、全体を俯瞰して、ターゲットをセグメントして…というアプローチになると思いますが、「デザイン思考」は、

共感→定義→アイデア開発→プロトタイプ→テスト

というアプローチをとります。

まずは、現場に行って、課題があるであろう人になりきり、その人に共感することによって課題が何なのかを定義するのです。そこから、その課題を解決するためのアイデアを出し、アイデアを試すためのプロトタイプをつくります。このサイクルを繰り返すことで、より正しい課題を発見し、より正しい答えを導き出していくのです。

ここまでお話しすると、デザインがイノベーション力向上に役立つことがイメージしやすくなったのではないでしょうか。

「デザイン思考」を現場の人たちに実装する時代

なぜ今「デザイン経営」が重要になってきたのか、ここで少しデザインの変遷を振り返ってみましょう。

1960~70年代、イノベーションは「技術革新」の名で呼ばれており、新しいテクノロジーを誕生させると市場で競争優位を獲得できました。しかし、多くの人が新しいテクノロジーを追い求めていくと、新しいテクノロジーをつくり上げること自体が当たり前になってしまい、それだけでは勝てなくなっていきます。

そこで、次はプロダクトの外観、見た目で競争優位をつくるデザインが重要になっていきました。みんなが見た目を気にするようになると、今度はそれも当たり前になってしまい、じゃあ今度は違う方法でイノベーションを起こしていこうと、「デザイン思考」という「イノベーションのためのデザイン」が生まれました。

かつての「デザイン思考」は、まだ分かりやすい解くべき課題がたくさんあり、デジタルもそこまで普及していなかった20世紀という時代だったからこそ、一定の成果を出すことができたのだと思います。そして、ここまでは、トップダウンのアプローチで実行可能でした。

その後、2000年、2010年代に入ると世の中はどんどん複雑化していき、「VUCA(ブーカ)の時代」といわれるようになりました。
・Volatility(変動性が高くて)、
・Uncertainty(不確実性が高くて)、
・Complexity(複雑性が高くて)、
・Ambiguity(曖昧性が高い)
…つまり、「先のことが全然分からない!」ということです。

また、2000年以降はデジタルの時代になっていき、事業への参入障壁が下がったため、デジタルサービスであれば、多くの人が参入できるようになりました。デジタルサービスは、顧客体験の質の高さがビジネスの成功に大きな影響を与えます。

同時多発的にさまざまな事業が起こり、不確実性が増す今、企業が競争優位を確立するためには、サービスを早いスピードで生み出し、改善していく必要があるので、トップダウンではなく、ボトムアップ的なアプローチで、現場のみんながさまざまなトライアルをし、ある種アメーバ的に良い方向へ向かっていくことが大事です。

そこで、「デザイン思考」がまた違った形で注目を集めるようになりました。

企業の現場の人たちにサービスデザインやプロトタイピングといった「デザイン思考」を実装し、みんなが新しい挑戦をし続けることによって、競争優位をつくっていこうという流れになってきているのです。今では、世界の有力企業の多くがデザインの手法を経営に取り入れています。

「デザイン思考」で人や社会などさまざまなものとの関わり合いを考えるときには、先ほど触れた、“課題のある人への共感”と“課題の定義”の部分が最も重要です。海外ではバックグラウンドの違う人と仕事をする機会が多いため、それぞれが共感して分かったことをポストイットなどで貼って、その言葉の意味を明確にしたり、深掘りをして合意形成をする作業を以前から行っていました。

一方、日本は日本人同士で仕事をするケースが多く、ある程度共通認識がある前提で会議が進んでいくため、言葉の意味することを明らかにしたり、深掘りをしていく「デザイン思考」的アプローチのニーズが多くはありませんでした。

そういった文化的背景が、日本で「デザイン経営」の実践を遅らせている要因のひとつかもしれません。

今、「デザイン」に社会視点が重要なわけ

SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境、社会、ガバナンス)などの概念が世界的に重要視されている今、企業は生活者や自分たちのためだけに経済活動を行うのではなく、社会全体としていい環境をつくっていくこと、すなわち「ソーシャルグッド」と「エコノミカルグッド」を両立させることが不可欠になりました。

また、イノベーションを起こすために、他社とコラボレーションする企業も増えてきていますが、そういった活動は、社会を巻き込んだ活動、ソーシャルイノベーションにすることが成功条件の一つ。そのため、デザインの手法も「社会を意識したもの」である必要があるのです。

そこで、今回BDSでは、ソーシャルイノベーションを起こすのが得意な国・デンマークのコペンハーゲンにある「CIID」というデザインスクールを日本に呼び、デザインの手法やアプローチを学ぶスクールを開催することにしました。対象は、新規事業担当者やデザイナー、学生の方などです。

CIIDのイメージ図

「CIID」は「デザイン思考」「テクノロジー」「社会との関わり方」、三つの要素のバランスが良く、特に「社会との関わり方」を考え、イノベーションを起こしていくアプローチを学ぶのに最適なスクールです。

私たちBDSも今回のスクール開催を通じて、彼らのソリューションやアプローチを日本に実装していくチャレンジができれば、と考えています。「CIID」やBDSで行われる「CIID Winter School」の詳しい情報はまた次回。興味のある方は、ぜひスクールに応募してみてください。

「CIID Winter School」インフォメーション