ONE JAPAN in DENTSU 「辞めるか、染まるか、変えるか。」No.1
大企業は本当に変われるのか? 企業が「人と社会の間に立つ意味」を考える
2020/03/25
イノベーション。
この言葉はいまや、聞かない日はないといっても過言ではないくらい、あらゆる業界や組織に浸透しています。
ところが、現状を見渡すと「新しいことをやってはいけない」「イノベーションを起こせない」という“空気”を感じている人は少なくありません。そうした日々の“モヤモヤ”にあらがい、組織に革新をもたらすべく、各社で若手社員が中心となって組織した「有志団体」が活動しています。
そんな中、「辞めるか、染まるか、変えるか。」を合言葉に、大企業の若手・中堅社員を中心とした50の企業内有志団体が集う実践コミュニティ「ONE JAPAN」が2016年に発足しました。
電通からも「電通若者研究部(ワカモン)」が加盟し、ONE JAPANが掲げる「若手・中堅社員主導の大企業変革やイノベーション実現」に向けて、同じ志を持った大企業の若手社員と共にさまざまな活動を行っています。
遅ればせながら、私はこの電通若者研究部としてONE JAPANに所属している吉田と申します。もう一つのわらじである電通ビジネスデザインスクエアのメンバーとしての活動も踏まえ、日々の研究成果を元に、若手世代と年長世代の関係性をよりよくする企業の変革プロジェクトを手がけています。
さて、話をONE JAPANに戻します。
加盟する大企業の現場社員の視点と、大企業の変革に伴走してきた電通の視点。「クライアントと代理店」という関係性をリセットして、この2つの視点を混ぜ合わせることで、新しい「大企業の可能性」を見いせるのではないか── そんな仮説をもとに、「ONE JAPAN in DENTSU 辞めるか、染まるか、変えるか。」と題したディスカッションを連載形式でお届けします。
今回のテーマは「大企業は本当に変われるのか?」。
まずはONE JAPAN共同代表の山本将裕氏を迎え、2019年10月に電通で開催した、同テーマのイベントの模様を振り返ってみたいと思います。
受発注の関係から、オープンな議論が生まれる共創関係に
イベントを終えて、山本氏が抱いた思いを聞きました。
「これまでは有志団体だからできる強みを追求してきましたが、今回のイベントで改めて『個人が直接、企業や団体、社外の同志とつながることができる時代』の到来を感じました。
『クライアントと広告会社』あるいは『依頼する側とされる側』という関係性には、当事者だけでなく第三者の視点が入るメリットもあります。現在の日本の大企業に求められているのは『立場を超えた共創関係』と、それによるイノベーションの促進。こうした場で企業の垣根を越えてオープンな議論が生まれることは、非常に有意義だと思います」
“直結”の時代、企業は「打席の提供者」になることが価値
日頃、「関係性のデザイン」を標榜してさまざまな案件に携わっている身として、今回のキーワードは「直結化」だと感じました。
テクノロジーの発展によって、「企業を介さずに社会と直結する個人」「エージェンシーを介さずにメディアやクリエイターに直結する企業」など、あらゆるシーンで直結が起こりやすい社会になりました。そんな中で、個人は、企業は、どう変われるのでしょうか。
個人はどんどん「社会と直結できる場」を増やして、社会との直結を自ら体感していくのがポイントになるでしょう。SDGsに象徴されるように、「企業と社会のつながり方」を抜本的に見直す機運が高まる今、「企業を介してしか社会とつながっていない個人」は2つの意味でリスクが高いといえます。
企業が気づいていない、社会との新しい繋がり方を提案できなければ、人材としての価値が今後下がっていく懸念が一つです。そして、所属する企業が社会との繋がり方を間違ってしまっている場合、共倒れ的に自分も社会との繋がりを誤ってしまう可能性も考えられます。
自分はこの社会でどうありたいのか、何をしたいのか。
その視点を持つことが、社会とのつながり方を模索する企業に対して「社会との新しいつながり方を提言できる、価値ある個人」になれるかどうかの分かれ目になるはずです。
企業の立場で考えれば、「個人が社会と直結できる時代」になっても「個人と社会の間に、企業が介在する価値」を生み出すことがポイントです。
現在は、特に大きい組織であるほど、「遅い」「回りくどい」「政治が大変」といった企業であることの負の側面が目立ちやすい時代です。なぜなら、多くの場合は「直結化が前提ではなかった時代」の組織のあり方が引き継がれているからです。
不確実性が高まり未来が読めない時代において、企業に属することは必ずしも正解だと断言できない人も増えています。そのため、個人にとっての企業の価値は「人生のリスクを低減するセーフティネット」から、「人生のやりがいやチャンスを拡張してくれるバッターボックス」へと、シフトが起こっていくはずです。
シンプルに言えば「そこにいることが、面白いかどうか」。それぞれの個人にとってライフワークだといえる仕事が、大企業というバッターボックスからどれだけ生み出せるか。企業に伴走する立場である電通としても、時代に合った大企業のあり方を一緒に模索していきたいと思います。