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リモートワークにクリエーティビティーをNo.2

2020/06/11

離れていても仲間をリードできる。「最強」のチームマネジメント術とは?

コロナ禍によって、図らずも日本社会に浸透したリモートワークの常態化が、私たちの働き方に新たな課題を突きつけています。前編では、オンラインミーティングで創造的なコラボレーションを生み出すためのポイントを紹介しました。

後編では、部下やチームメンバーと物理的に離れている中でも、円滑なコミュニケーションを実現するためのチームマネジメントのポイントを紹介します。

リモートワークでは、チームリーダーからは、物理的に離れた場所にいるメンバーをコントロールできていないのではないかという不安が、メンバーからは、自分の働きが見えていないのではないかという不安が生まれがちです。また経験の浅いメンバーには、先輩や上司にちょっとした相談をこまめにすることが難しい、という悩みも存在します。物理的な距離のギャップを埋めながら、チームワークの質を高めていくスキルが今、求められています。

四つの象限からチームメンバーの特性を俯瞰する

リモート環境において、チームリーダーにまず求められるのが、メンバー全体を俯瞰する視点です。オフィスにいれば誰が何をしていて、どんな課題を抱えているのかが自然に目に飛び込んできますが、離れているとそれらが分かりづらく、チーム全体のコラボレーションでパフォーマンスを最大化していく視点が欠落しがちになります。また、各メンバーとのコミュニケーションの量と質に個人差が生じやすくなるので、注意が必要です。

<図1:メンバーの特性に合わせたアプローチ>
図1:メンバーの特性に合わせたアプローチ

上記の図1は、メンバーを四つの類型に分類し、それぞれの特性に合わせたアプローチを検討するための図です。

縦軸は、「パフォーマンス軸」。現状の業務において十分な成果がでているかどうかで分類します。横軸は、「インテグリティー軸」。インテグリティー(Integrity)とは日本語に訳しづらい概念ですが、本稿においては、「業務の進め方や周囲とのコミュニケーションにおける誠実さ」という意味でお考えください。この四つの軸でチームメンバーの特性を分類し、それぞれに即したコミュニケーションを取ることで、メンバー全体のパフォーマンスを最大化させていきます。

1.「パフォーマンス高&インテグリティー高」のメンバーは、管理し過ぎないこと。

仕事の成果が十分に出ていて、上司や周囲のメンバーにも誠実なコミュニケーションを取ることができる「模範生」ともいえるメンバーです。このような人材に対しては管理をするというよりも、チームのロールモデルとして、そのナレッジやノウハウを他のメンバーに共有したり、経験の浅いメンバーを指導する役割を担ってもらうのがよいでしょう。また、本人のロイヤルティーをより高めていくために、意向をくみ取りながら「次のステージ」を見せてさらなる成長を促していく配慮が必要です。

2.「パフォーマンス高&インテグリティー低」のメンバーは、相談に乗ること。

仕事の成果は出しているものの、上司への「報・連・相」が十分でない、あるいは周囲への配慮やナレッジの共有の意識が不十分なメンバーがこちらに相当します。いわゆる「仕事ができていればそれでいいんでしょう」と言いたげに思えるタイプです。このような人材は、実は仕事に対し、不満や不安を抱えている可能性があります。また、何らかの理由で仕事の成果が出せない状況に陥ったとき、後述の3の象限に移行してしまうリスクもはらんでいます。リーダーは十分にコミュニケーションを取り、現在の業務への不満や、今後のキャリアへの不安を引き出しながら、適切なアドバイスを与えていくことが必要です。

3.「パフォーマンス低&インテグリティー低」のメンバーは、モニタリングすること。

仕事の成果が十分でなく、かつ他のメンバーとのコミュニケーションにも問題を抱えている層で、周囲から問題児扱いされることも多いメンバーがこちらに相当します。このタイプの人材は放置すると、本人のストレスが高まるだけでなく、周囲のメンバーに悪影響を及ぼすリスクが高いと考えられます。リーダーはこのようなメンバーに対しては、積極的に個別指導を増やす、あるいは外部へのミーティング時には必ず同伴するなど、意識してモニタリングをする頻度を高め、きめ細かい指導を通じて成長を促していく労力が不可欠となります。

4.「パフォーマンス低&インテグリティー高」のメンバーは、孤立させないこと。

現在は成果が出ていないものの、仕事に取り組む姿勢や、日々の周囲とのコミュニケーションについては誠実に遂行しているメンバーです。このタイプの人材は、適切な環境と指導を与えることで、次第に成果が伴ってくる可能性が高いと考えます。リーダーは、現状のパフォーマンスをもって周囲から軽んじられてしまい、孤立することがないように配慮することが必要です。また、このタイプの人材に必要なことは、欠けているスキルに対する具体的な改善指導です。そのために、上記1のタイプをメンターとして、学習機会を与えることも有効です。

行動計画はSMARTに

各メンバーとの個別コミュニケーションにおける留意点を下記に整理したのが図2です。

<図2:行動計画はSMARTに>
図2:行動計画はSMARTに

リモート環境においては、リアルでのコミュニケーション以上に、チームメンバー間の明確な役割分担と、きめ細かい意思疎通を必要とします。

チームの成果と個人の成果やモチベーションを同じベクトルに向けるためには、抽象的な課題意識や感情論ではなく、個別の具体的な事象をもとに話し合うこと、また、目標設定に当たっては測定可能な指標について合意しておくことが必要です。

そして、メンバーの現状の力量を踏まえて、難しいけれども達成可能なビジョンや目標を共有すること、かつそれらが、そのメンバーの資質やキャリア志向とかみ合ったものであるときにこそ、エンゲージメントが高まるのです。

最後に、「いつまでに何を達成するのか」という具体的な期間設定も、中長期目標と短期目標に区分した上で入念なコミュニケーションを行い、合意することを忘れないようにしましょう。

ミーティング以外での、チーム力の高め方

チーム力を高める場は、業務に関するミーティングや個別の面談だけとは限りません。必要に応じて以下のような手法で、メンバー間の相互理解を促進し、チームワークを高める工夫をするとよいでしょう。

1.「オープンチャットルーム」の設置

曜日・時間を決めて定期的に、チームメンバーが誰でも気軽に雑談ができる場を設置します。話す内容は、必ずしも仕事に関するものだけでなくても構いません。リモート環境において多くのチームメンバーは、他の人は何をしているのか、自分は取り残されていないかといった不安を多かれ少なかれ、抱えています。カジュアルな雰囲気で近況の情報交換をし合うことは、チーム内の心理的安全性を高めていくために効果的です。

2.「オフィスアワー」の設置

定期的に実施することはオープンチャットルームと同様ですが、こちらは「若手や経験の浅いメンバーが、上司や先輩に相談する」目的に特化した時間です。リモート環境では、業務上のちょっとした不明点を身近な先輩に教えてもらうことが難しく、また教える側も、部下や後輩がどんなことにつまずいているのかを把握しづらい状況です。定期的に相談に乗る時間を設けることで成長を促進するだけでなく、精神面のコンディションを把握する良い機会にもなります。

3.リーダー自身が、組織のビジョンや自分の考えを積極的に発信

リモート環境において、組織内の連帯感、各メンバーの帰属意識をどのように維持、強化するかは大きな課題です。そのために、チームをリードする立場の人材は目先の業務の効率的な推進だけでなく、組織全体の方向性やその中での自部署、チームの役割などをリアル以上に意識して、自分の言葉で発信していく必要があります。そのような場は従来、年頭あいさつや全社ミーティングなど、オフラインの社内イベントで主に設けられてきましたが、今後はリーダーのオンライン環境での発信力が、組織文化を強化するために非常に重要になってきます。筆者はインターナルコミュニケーションを専門領域のひとつにしていますが、コロナ禍の影響を大きく受けている今だからこそ、企業ビジョンの具現化に向けて従業員の連帯感を高め、主体的な行動を促進したいという相談が増えています。

リモートワークはもともと、多様な人材が自分らしく働ける場の実現に向けて推進されてきました。しかしそれは同時に、企業トップをはじめとする組織のリーダーに対して、組織文化の強化に向けたプレゼンテーション、ストーリーテリングのスキルとマインドセットにおいて、リモート環境に適応した形でアップデートすることが喫緊の課題であることも意味しているのです。


制作協力:バルーン・コンサルティング