ファイナンス×マーケティングでファンづくり、始めてみませんか?No.1
スタートアップと電通で創る「資金調達×ファンづくり」の仕組み
2020/08/17
膨大な情報と商品にあふれる現代。それは企業にとって、商品やサービスを生活者に届けることが難しい時代です。
少子高齢化で潜在顧客も年々減少する中で、企業が安定成長していくためには、どうすればいいのでしょうか。
そのひとつの答えが、今回紹介するスタートアップのファンズと電通が共同開発した、
すなわち「ファイナンス」と「ファンコミュニティ」の融合です。
個人投資家と企業をつなげる新しいファンコミュニティ施策を開発・展開するファンズの藤田雄一郎氏、柴田陽氏、そして同社へ電通から出向中の高井嘉朗氏に、「今あるべき新しいファンづくりのかたち」「スタートアップ×dentsuの新しいあり方」について語ってもらいました。
おカネを通じてコミュニティをつくる。時代に即した資金調達のかたち
高井:最初に読者の皆さんに、電通とファンズの関係を説明します。電通が主催したスタートアップアクセラレーションプログラムの「GRASSHOPPER」のピッチイベントでファンズがグランプリを取り、担当だった私がファンズに出向して、一緒に新サービスを開発することになったんですね。
藤田:お世話になっております(笑)。最初に、当社のサービス「Funds」のサービスの説明をした方がいいのかな?
「Funds」は「貸付ファンドのオンラインマーケット」です。個人投資家が「貸付ファンド」という仕組みで間接的に企業に貸し付けを行い、金利を原資とした配当を得ることで資産形成ができる。企業側は銀行や証券会社を介さずに個人から直接資金調達ができる。双方に新しい選択肢を提示するサービスです。
※Funds
Fundsは、個人が1円から上場企業グループへ貸付投資ができるオンラインプラットフォームを提供。これまで上場企業を中心とした12社が組成する約30のファンドを募集。(2020年8月14日現在)。
ファンズHP:https://funds.jp/
参考URL:https://funds.jp/lp/fin-community-marketing/
今の日本人にとって「資産形成」は大きな課題と思っており、誰もが将来に不安を抱えずに生きていける社会をつくりたい。でも世の中、ハイリスクハイリターンな金融商品や、あるいは逆にほとんど利益が得られない定期預金の両極端で、その間を埋めるような資産形成の選択肢が必要だと感じていたんです。それでクラウドファンディングのサービスなどをやっていたところ、アメリカでスタートアップをいくつも成功させた柴田が帰ってきたタイミングで出会いまして。
柴田:私はいくつかスタートアップをやってきましたが、「次やるなら、生活者の大きな課題に取り組みたい」と思っていました。今の世の中は、生活者個人が自分で老後資産を築いていかなきゃいけない。これは従来の日本人のライフスタイルからすると、革命的な変化ですよね。そこで、万人向けの資産形成サービスはできないかと思っていたときに、クラウドファンディングのスペシャリストである藤田に出会ったというのが私側からの経緯です。
高井:そこがファンズの出発点ですね。さて、今回は、これからの企業に必要となるものとして、「個人投資家からの資金調達」と「ファンコミュニティ」を融合させた「FinCommunityMarketing」が生まれた背景をお話しします。
電通とファンズはGRASSHOPPERというプログラムで出合ったわけですが、コンセプトを示唆して終わりではなく、事業共創するため、私がファンズに出向することになったんですね。電通側の狙いとしては、新しい領域でのマーケティングプラットフォームの構築と、スタートアップの事業成長に貢献するために出向という形で電通の人間が入るという、二つの新しい試みにチャレンジさせてもらいました。
藤田さんはこれまでマーケティング支援事業やクラウドファンディングサービスに取り組んでこられましたが、今の日本企業に何が必要だと感じていますか。
藤田:企業が安定的な成長を見込むためには、熱心に企業活動を応援し、継続的に商品やサービスを購入してくれる“ファンづくり”が重要かつ不可欠だと考えています。
世の中に大量のモノや情報があふれているから、商品のスペックや機能だけを訴求しても、生活者は見向きもしてくれません。そこで多くの企業は、生活者に共感や愛着を持ってもらうために商品やサービスに対する思いなどのストーリーを積極的に発信しているのが、現在の状況です。
しかし、なんの関係も接点もない企業の声に耳を傾けるほど生活者は寛大ではありませんよね。だから、まず「何らかの関係」をつくり、企業の発信に「耳を傾けてもらえる態勢」をつくることに価値があるんです。われわれのやってきた「Funds」の仕組みは、投資をする生活者と企業の間に「関係」を生みますから、企業の発信するストーリーが受け取られやすくなる。
高井:この「Funds」をより発展させたサービスをつくるために、「GRASSHOPPER」にご参加いただいたのですね。
藤田:金融の仕組みづくりだけであれば自分たちだけでできました。しかし、企業のマーケティングに活用していくかというコンセプトづくりや、つくったコンセプトを世の中に提示し広めていくためには、われわれスタートアップだけでは難しい。
「この仕組みをうまく使えば、個人と企業の関係づくりができる」という感覚はあったのですが、新しいマーケティング手法として確立するためには、その方面に長けた企業と組んだ方がいいとは話していました。それで、GRASSHOPPERに参加したんです。
GRASSHOPPERで思いのたけを伝えたところ、電通チームの皆さんは献身的に考えてくださって、約2カ月半のプログラム期間中に、「FinCommunity Marketing」というコンセプトが生み出されました。
電通との事業共創・出向という「スタートアップ×dentsuの新しいあり方」
高井:GRASSHOPPERでファンズがグランプリを獲得したのは私もうれしかったです。生活者が「投資」を通して、企業のファンコミュニティを形成するというのは、新しいマーケティングプラットフォームとして非常に可能性を感じました。電通としてはこの成長性に寄り添って共創できたらいいなと感じましたね。
電通からGRASSHOPPERに関わっていたクリエーティブの樋口景一さん(当時)、蓬田さん、山根さんのお力で、「ファイナンスとファンコミュニティ」を掛け合わせるというコンセプトができました。これを、コンセプトだけ渡して終わるのではなく、電通自体も一緒になって、事業開発支援から新しいソリューションづくり、そしてビジネスシナジーを生んでいくために、今回のような「スタートアップへのビジネスプロデューサーの出向」という形を取らせてもらいました。
クライアントに向き合っているビジネスプロデューサーがスタートアップに出向するという前例がなかったため、上長の天野さん、同じくビジネスプロデユーサーの堀切さん、星野さん、安武さんには多大なるサポートをいただき、実現することができました。
柴田:電通のクリエイティブチームやビジネスプロデュースチームとファンズをつないでくれる高井さんは、共創のとても大きな価値のひとつです。例えば、私たちが電通のクリエイティブチームに直接ディレクションするのは難しいですが、そこをうまく高井さんがまとめて交通整理をしてくれる。でもそれは高井さんの役割の一部でしかなくて、FinCommunityMarketing事業を丸ごと引っ張ってくれていますね。
藤田:いわば、FinCommunityMarketingの“事業長”のような存在ですね。
柴田:今回、FinCommunityMarketingをより広く伝えるために、プレスリリースの発表やウェビナーを開催することになりましたが(記事末参照)、その全体戦略から登壇者の出演依頼・イベント当日の流れの構築、イベント告知などのプロジェクト推進まで一手に担ってくれて、心強いばかりです。加えて、スタートアップと電通が組むことの大きなメリットは、電通のクライアントにアクセスできること。スタートアップのサービスを大きな企業に届けるのは難しいことですが、その面でも大変力になってもらえています。
藤田:それも大きいですね。サービスを企業にセールスするに当たって、すでに高井さんたちを通して電通のクライアントを紹介いただきましたが、提案の際に、われわれはどうしてもファイナンスを切り口に提案しがちなんです。そこに高井さんたち電通の人がいると、マーケティングの要素をどのように組み込むと伝わりやすいのかなど、アドバイスをもらえるのはありがたいです。
柴田:電通が言語化をしてくれたFinCommunityMarketingという言葉が、今後ビジネス界のひとつのカテゴリーとして確立されるよう、一緒につくり上げていきたいですね。
藤田:それにしても高井さんはGRASSHOPPERのときから、あふれんばかりの“ファンズ愛”を示し続けてくれていますよね(笑)。高井さんの熱によってファンズ社内も感化され、今は完全に「同じ釜の飯を食う仲間」のような存在です。
大企業とスタートアップの連携では、一体感を実現するのは難しいなという印象がありましたが、愛情と覚悟を持って飛び込んできてくれたおかげで、同じ目標に向かっていけているという実感があります。
高井:ありがとうございます。電通にはいろんな人材がいますから、スタートアップにとって必要なことをプロデュースしていきたいと思っています。今、私は「スタートアップ×dentsu」の新しいあり方として、部分的な関わり方ではなく、「電通のビジネスプロデューサーが、スタートアップに出向し、スタートアップの一人のメンバーとして完全にコミットする」という形に挑戦しています。
これまでメディア、マーケッター、ビジネスプロデューサーなどいろんなことをやらせてもらってきたことが、ついに全部発揮できるチャンスが来たなと(笑)。ただ、電通ってやはり領域が細分化されているなと感じましたね。スタートアップに実際に来てみると、知識だけじゃなくて、全領域でエグゼキューションすることが必要になってくるし、私も実践の場で学ばせてもらっています。
藤田:すごいなと思うのは、関係性として完全にファンズの中の一人として関わってくれていて、我々からするともう「電通の高井さん」じゃなくて「高井さん」なんですよ。こうやって、電通の責任を持ったまま、スタートアップの一員としていろんな判断をしていかなきゃいけないのはリスクも大きいし、すごい勇気だなと。でも、得られるメリットもその分大きいはずなので、これからこういう形は増えていくんじゃないかと思います。
高井:ありがとうございます。出向者だからこそファンズのためにとにかく最善を尽くす、それが結果として電通のためにもつながってくると信じています。
コロナ禍の時代にこそ力を発揮するファンマーケティングのあり方
高井: FinCommunityMarketingについては、これからウェビナーなども通じて広めていきますが、少しだけ概要をお話いただけますか?
藤田:生活者個人個人との新たな関係づくりを希望する企業に対して提供する、「ファイナンスとファンコミュニティを組み合わせた、企業ファン形成のためのマーケティング手法」です。
一般的なマーケティングは、「もうニーズが顕在化している生活者」にアプローチし、店舗に来てもらう、あるいは購入してもらうものです。しかし「Funds」では、まだその企業の製品やサービスに対して興味がない人に対して、「投資」を切り口にまず関係をつくります。
企業が求めるファン像や目的に応じたオリジナルファンドを組成し、投資の運用期間中に、企業側からさまざまなコミュニケーションを取ることで、徐々に製品やブランドを好きになってもらい、応援したり、購入したりしてもらう。この「潜在顧客へのアプローチ」は、大きな特徴です。
柴田:すでにいくつか実施例があって、ウェビナーでも紹介しますが、いずれも好評で高い効果が得られていると思います。個人投資家、企業の双方から大変評判が良かったですよね。
高井:実際に、「Funds」ユーザーにアンケート調査を行っても、約9割が「投資先企業に好感を持つ」「応援したくなる」と答えています。この心理をマーケティング活用できれば、投資家も企業も幸せになるというのがFinCommunityMarketingの本質ですね。
柴田:そうやって関係を作れた生活者は、企業の情報の拡散を手伝ってくれることも期待できるファン層だと考えています。
藤田:その理由として、「Funds」の個人投資家は、20代~40代が比較的多く、購買意欲も購買力もある層が中心なんです。彼らは情報感度が非常に高く、自分で検索をして新商品を購入して使用し、SNSで発信します。
高井:今、コロナ禍の中で、大企業からは「キャッシュが大事だから新しいことに資金を出しづらい」との声も聞こえてきています。その中で、このFinCommunityMarketingは、資金調達と同時にファンづくりができるのはポイントですよね。
柴田:企画自体は昨年から動き始めていたのですが、結果的には、まるでwithコロナ時代を見据えたような切り口だったと思います。「生活防衛」という保守的で安全重視な雰囲気の中で、信頼できる企業と長い目線で付き合っていきたいと考える生活者との関係構築に活用していただくとよいのではと考えています。
今度のウェビナーは、「コロナ時代を見据えてのファンづくり」がテーマです。企業経営者やマーケティング担当者で、ファンづくりで頭を悩ませている方や、新しいことをやりたいが、メッセージが届いていかないという方に何かヒントを提供できると思っています。また、日本で初めてとなるファイナンスとファンコミュニティと組み合わせた仕組みに興味のある方にもぜひ聞いていただきたいと思います。
高井:ありがとうございました。ぜひ詳細はウェビナーでお話しいただければと思います。
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