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スペースポート(宇宙港)の時代は、もう目の前に!No.3

2020/08/28

「スペースポートシティ構想図」に込めた思いとは?

有人宇宙船が発着する「スペースポート(宇宙港)」を日本につくる。そんなプロジェクトが今、進行中なのをご存じですか? 

どんなスペースポートをつくろう?

スペースポートを中心に、周辺の街はどのように発展していくだろう?

実現に向けた第一歩として、本プロジェクトを推進する、一般社団法人Space Port Japan(スペースポート・ジャパン、以下SPJ)と電通は、さまざまな企業や団体を集めてワークショップを実施。そこで出たアイデアをまとめ、「スペースポートシティ構想図」を6月に発表しました。

今回は、構想図を手掛けたクリエイティブディレクターの徳田祐司氏と建築家の豊田啓介氏が登場。SPJを立ち上げた片山俊大氏が構想図のポイントや本プロジェクトへの思いを聞きました。

spc

構想図で大切にしたのは、「リアル感」と「未来感」

片山: SPJの片山俊大です。SPJは、日本にスペースポートをつくるプロジェクトを推進していて、多くの企業や自治体などにSPJの会員として参画いただいています。今回お話を伺う、元電通で、デザインエージェンシー・canariaの徳田さんと、建築デザイン事務所・noizの豊田さんと一緒になって、この「スペースポートシティ構想図」をつくりました。
 
徳田:こんにちは。普段の仕事では、クリエイティブディレクター・アートディレクターとして、さまざまなプロジェクトのビジョン構築やデザインコンセプト開発を行っています。今回のプロジェクトでは、電通と共に、ブランディングをはじめ、ワークショップの企画を考え、構想図のクリエイティブディレクションを担当しました。

豊田:私は建築家として「スマートシティ」などの街づくりに携わることが多いのですが、その一環として本プロジェクトのお話を頂きました。具体的には、徳田さんや電通と協力し、スペースポートシティ構想を形に落とし込み、構想図の表紙3Dパースと、内部の構造図(ダイアグラム)を描きました。

構想図

■「スペースポートシティ構想図」(完全版)
https://www.spaceport-japan.org/concept

片山:この構想図をつくった経緯を簡単に説明すると、宇宙産業の領域では今後 10年以内に世界で数万人が宇宙旅行をするという予測もあり、世界の多くの国々で、その発着地点であるスペースポートの建設が進められています。

ところが、われわれがSPJを設立した2018年時点では、日本にスペースポート実現に向けた活動が乏しかったため、宇宙飛行士の山崎直子さんたちと共にこの団体を立ち上げました。SPJは、宇宙旅行ビジネスにおいて日本がアジアのハブになることを目標にしています。

プロジェクトの第一歩として、SPJの会員企業などが集まってワークショップを開催し、どんなスペースポートをつくりたいかアイデアを出し合いました。「スペースポートに訪れるさまざまな人をイメージして、どのように過ごすのかストーリーを考えてみよう」という徳田さんのアドバイスで、アイデアの幅がぐんと広がりましたね。

徳田:スペースポートシティには、事業創出の前提として、宇宙に行く人だけではなく、見送る人や遊びに来る人など、さまざまな人々が訪れることを想像しようと。そのためにはどんな施設が必要か、アイデアを出して活発な意見交換が行われました。ワークショップで「シティ(街)」という概念が生まれたことも、イメージを広げる大きなきっかけになりました。空港のようなものをつくるのではなく、新たなインフラをつくるんだと。そして、僕の最大のミッションは、スペースポートシティに対する皆さんの思いをデザイナーとして構想図に集約することでした。

豊田:僕は、構想図作成の段階から加わったのですが、皆さんがすでにいろいろ議論されていて、「何もない土地にポツンと建物が立っているのではなく、ウオーターフロントで、都市の一部になっていて……」など、詳細なアイデアも出ていました。そのイメージを一枚の絵に起こす役割を担うのは、非常に面白いチャレンジでしたが、ハードルはかなり高かった。アウトプットは一枚の絵ですが、単なるイメージ図ではなく、細かい部分を見て、「これは何?」と聞かれたら、きちんと説明できるものでなければいけない。一枚の絵の背後に相応の設計が必要で、例えるなら、小説を一冊書いたけど、世間に出せるのはわずか1ページの書評、といった感じでした。

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リモート取材時の様子(豊田氏)

片山:この構想図を実現するに当たり、お二人が特に苦労された点はどの部分ですか?

徳田:「未来的な雰囲気」と「リアルな雰囲気」のバランスをうまく取ることですね。あり得ないようなものを描くと現実味がないし、かといってリアル感が強過ぎると新鮮味を失ってしまう。

豊田:このことは、徳田さんや電通からも何度も言われましたね。空想の世界の建物ではなく、テレビニュースの朝のライブカメラに映っていても違和感のないものにしてほしいと(笑)。今回の建物の屋上が緩やかにうねるランドスケープのようになっているのも、朝日の低い光でうまく陰影が映えるようにという意図も込められているんです。

徳田:豊田さんが制作した完成予想図のパースには人や車など細部まで描かれていて、もうスペースポートシティが実在しているように感じました。朝、目覚めたら、昨日までなかったものが完成していたような……。

豊田:まさに新しい一日の始まりのような、朝のまばゆい光をイメージしながらデザインを進めました。

徳田:noizさんのパースが上がってきたときは、みんな「すごい!」と驚嘆していましたね。建物だけでなく、周りの道路や湾に架かる橋を見て、スペースポートシティ構想はただ宇宙港をつくるだけでなく、周辺のインフラ整備などさまざまな事業が創出される壮大なプロジェクトだということが、世の中に伝わるものになったと思います。

スペースポートシティは、地球と人類の可能性を見つめ直す場所

片山:スペースポートシティ構想図ができて、本プロジェクトも次のステップに入っていきます。お二人は、本プロジェクトについてどんな思いをお持ちですか? 

徳田:宇宙旅行ができるようになると、地球で暮らしながら地球を見る目に加えて、宇宙から地球をリアルかつ客観的に見られるもう一つの目、 いわゆる“アナザーアイ”を、いよいよ一般の人も手に入れることができると感じています。

片山:宇宙飛行士の山崎直子さんは、宇宙へ行ったことで人生観が変わったとおっしゃっていました。特に、地球に戻ってきたときに風や緑の匂いを感じて、これまで当たり前だと思っていたものが大変貴重であると気付き、「地球はすごい!」と痛感したそうです。

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リモート取材時の様子(片山氏)

徳田:その体験は、何物にも代えがたいものになるに違いありませんね。宇宙に行くことで、地球や人類の未来を想像しながら、これから何をやっていくべきか問い直す、“アナザーアイ”を手に入れることができる。しかも、NASAの宇宙飛行士など限られた人だけでなく、子どもたちも手に入れられる時代が来ます。

豊田:地球や人類の可能性を見つめ直すという点では、スペースポート自体も、モノ(フィジカル)と情報(デジタル)が重なる共有基盤“コモングラウンド”となれる可能性があります。例えば、遠隔地にいる人がロボットを通して、宇宙を体験できるといったような……。宇宙をより効果的に体験できるユニークなものをつくり、新たな可能性を爆発的に広げていける。この点にも、多くの企業や人々が興味を持ってくれるのではないでしょうか。

宇宙に行くか行かないか、1か100かではない中間的な旅行の体験というビジネスチャンスもありますね。宇宙には行かなくてもスペースポートシティを訪れることで、自宅ではできないハイブリッド体験ができたり、実地プラスアルファの高度な体験ができたり。コモングラウンドがあることで、アバター来場のようなチャンネルもたくさんできます。

片山:確かに。スペースポートは、宇宙への行き帰りに利用する施設だけでなく、まさにフィジカルとデジタルが重なるコモングラウンドであるべきですよね。

徳田:世界中でスペースポートをつくる動きが進んでいるけれど、僕たちが日本につくろうとしているのは何なのか?その意味をしっかり明快にし絵にすることで、人々のスペースポートに対する期待が全く違うものになってきます。要するに、一般の空港に行くのとは全然違うということです。

片山:豊田さんや徳田さんがおっしゃった、リアルとバーチャルを掛け合わせると可能性は無限に生まれます。ただあまり行き過ぎるとSFの世界になってしまう。産業やビジネスにどのように落とし込めるのかという視点を持って絞っていく作業も必要です。「やろうと思ったらできるな」という世界に落とし込む。それがさまざまなビジネスにもつながっていくはずです。

豊田:これから新しいビジネスモデルを構築しないといけないのですが、そのためにはビジョンや理論構築、R&Dがとても大事になってきます。でもそれは、一業種や一企業ではできません。徳田さんのようにビジョンとして落とし込んでくれるプレーヤーがいることはすでにアドバンテージなので、技術的なロジックや技術開発を担う研究者などが加わると、他国にはないものができると思います。

片山:おかげさまで、スペースポートシティ構想は反響も良く、一緒にやりたい方も増えてきていることを実感しています。最後にお二人からメッセージをお願いします。

豊田:まだ存在していない価値体系のビジョンをちゃんとつくって、それを具体的な形に落とし込むためには、既存の枠組みや既得権益を超えて、領域横断が必要です。ぜひ多くの方に参加していただきたいですね。

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リモート取材時の様子(徳田氏)

徳田:今の日本の状況は、国力が下がっています。しかし日本はものづくりの国であり、“実装する力”はたくさんあるはずです。スペースポートシティ構想は、関係者だけでなく、子どもたちも含め、たくさんの人たちが夢を見ることができる素晴らしい事業になるはずです。ぜひ一緒に実現させましょう。Join us!

 

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