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スペースポート(宇宙港)の時代は、もう目の前に!No.2

2020/08/04

日本の宇宙港を、みんなで考えてみた!

有人宇宙船が発着する「スペースポート(宇宙港)」を日本につくる。そんなプロジェクトが今、進行中なのをご存じですか?前回は、このプロジェクトの概要をお伝えしました。

どんなスペースポートをつくろう?

スペースポートを中心に、周辺の街はどのように発展していくだろう?

スペースポートをカタチにする第一歩として、本プロジェクトを推進する、一般社団法人Space Port Japan(スペースポート・ジャパン、以下SPJ)と電通は、さまざまな企業や団体を集めてワークショップを実施。そこで出たアイデアをまとめ、「スペースポートシティ構想図」を6月に発表しました。

今回は、SPJを立ち上げた片山俊大氏と山崎直子氏、ワークショップのファシリテーターを務めた電通ビジネスデザインスクエアの国見昭仁氏が登場。ワークショップの様子やスペースポートシティ構想に懸ける思いを語りました。

3人

日本をアジアの宇宙旅行ビジネスのハブに

片山:日本にスペースポートをつくろうというオールジャパンの試み。とはいえ、私たちが立ち上げたSPJについて知らない方もまだまだいらっしゃいます。まずは、“自己紹介”しないといけませんね。

山崎: SPJは2018年に設立された組織です。国内外の企業や団体、政府機関などと連携し、有人宇宙船が発着できるスペースポートを日本につくる活動を行っています。現在40社以上の企業や地方自治体、大学の研究室などが会員になり、プロジェクトに参画しています。

人工衛星はロケットで、すでに日本からたくさん打ち上げられていますが、有人宇宙船はまだ飛んでいません。2年前にSPJを立ち上げたときは、一種の危機感がありました。他国では、ヴァージンギャラクティックやスペースXといった企業のロケットや宇宙船が開発終盤に差し掛かっていて、「宇宙船を使っていろいろな国々を短時間で結びますよ」といった構想を出しているのに日本は環境整備が立ち遅れている。日本にスペースポートを複数つくることで、日本がアジアにおける宇宙旅行や二地点間輸送ビジネスのハブになることを目指しています。

片山:日本でも海外でも、民間企業からロケットが次々打ち上げられるなど、宇宙産業は今、盛り上がっていますよね。本プロジェクトに興味を持つ企業も増えていて、SPJには、航空宇宙産業関連の他にも、不動産会社や保険会社など、さまざまな企業や団体に参画いただいています。

山崎:これは日本ならではのユニークな点です。アメリカやヨーロッパには、宇宙産業に関するコンソーシアム(共同事業体)はたくさんあるのですが、航空宇宙産業がより発達しているからなのか、あくまでもその産業に特化している面が強いんです。もちろんたくさんのベンチャー企業なども入っていますし、M&Aや技術交流も活発ですが、宇宙と無関係の異業種が参加しているケースがまだあまりないんです。その点、日本の場合は宇宙関連企業をコアにしつつも、多様な分野の人たちも参加してネットワークづくりをしているというのは、大きな強みになっていく気がします。

国見:今回実施したワークショップにも幅広い業種の参加があり、私たちが想像していなかったアイデアが次々と生まれましたよね。ワークショップでは、アイデアの幅をより広げるために、参加者はまず、会社の肩書を忘れて、一人の人間として、スペースポートでどのように過ごしたいか思い描きました。そして、いろいろなアイデアが出た後で、自社の事業を踏まえて、どんなビジネスやサービスが展開できるかを考えました。

片山:皆さんとても楽しそうで、持ち時間いっぱいまでアイデアを熱くプレゼンテーションし、活発な意見交換も行われました。

国見:ワークショップは二つのステップに分けて行いました。最初のステップでは、「スペースポートにはどんな人が来るのか」を想像してもらいました。宇宙旅行に行く人はもちろん、その人を見送る家族や友人も訪れるはず。では、具体的にそれぞれどんな人だろうと。

次のステップでは、「スペースポートを訪れた人々は、それぞれどのように過ごすのか」をテーマにしました。打ち上げ当日だけ来る人はいない。では、打ち上げの前日と当日、その翌日の3日間をどのように過ごすのかを考えてもらいました。

「宇宙に行くこと」を核にさまざまなことが繰り広げられるようにデザインすることで、スペースポートを舞台にして産業を創造できます。訪れる人の行動を一つ一つストーリーにして、実際に必要なサービスやファシリティーって何だろう?それらはどの企業が提供するの?という詰めも行いました。

ワークショップ

片山:いろいろなアイデアが出ましたよね。ワークショップを通して、多様な宇宙旅行の在り方や、そこから生まれる産業がたくさんあることに気づかされ、個人的にも非常に大きな学びになりました。国見さんが特に印象に残ったことは何ですか?

国見:面白いと感じたのは、「英才教育の一環として親の期待を背負って宇宙に行く中学生」を設定し、その子がスペースポートでどう過ごすのかを考えたチームがあったことです。

そのとき思ったのは、これからは“宇宙人”と呼ばれるような人材が出現してくるんじゃないかということです。どういうことかというと、一昔前はいわゆる国境を超えて仕事をしている人は“国際人”と言われ、環境問題が注目されるようになると“地球人”みたいな言い方をされるようになりました。

前回記事でも解説したように、スペースポートには「宇宙に行くための拠点」以外にも、「地球の別の場所に行く拠点」という機能もあって、例えば東京からロサンゼルスなど、地球上の2地点間を移動するためにも使えるんですね。滑走路からスペースプレーン(宇宙船)を飛ばし高度を上げて宇宙空間に近づくと、空気抵抗もほぼなくなりますから、飛行機の何倍もの速度で飛ぶことができます。宇宙を経由して、東京からロサンゼルスに移動するんです。

将来、宇宙に行く人や、宇宙経由で移動する人は、“宇宙人”と言われるのは間違いないでしょう。そして宇宙に行った人たちは、物事の捉え方や発想するアイデア、視座が変わってくるんじゃないかと感じました。

山崎:おっしゃる通りで、私が宇宙に行ったときのことを思い出してみると、夜になると韓国は明るいのに北朝鮮は真っ暗で境目がはっきり分かったり、インドとパキスタンの間の国境は、警備の電気がずっと灯っていたり。地球は一つの天体だけど、悲しいことに国々は分断されているケースもあることを感じました。

国際宇宙ステーションのクルーたちの国籍はバラバラで、皆、意見も立場も違うし簡単に理解し合えるほど生易しいものではなかったのですが、それでも「呉越同舟だよね」とは思えるんです。宇宙に行くことで、そのような意識が多くの人に広がっていくのかなと思いました。

国見:国と国とがけんかしているのを宇宙から見たとき、どう感じるんだろうという議論もありましたね。宇宙に行くことで、今よりも俯瞰した目で物事を捉えられるというのは、たぶんあるんだろうと。

だから宇宙視座というものをちゃんと学べる場所が、スペースポートには必要ですよね。楽しいだけの場所ではなくて、いろいろな研究が行われる場でもあるべきだと。

片山:山崎さんはずっと宇宙産業のど真ん中にいらっしゃいますが、ワークショップで異業種間でコラボしながら一つの構想を練り上げていくことについて、どう感じましたか?

山崎:皆さん大雑把な概念だけで話すのではなく、スペースポートを利用する主人公を具体的に設定して、「人物」に焦点を当てたことが素晴らしかった。「宇宙旅行を楽しみたいリタイア世代」「パーティー好きな人」といった個人像を設定して、それぞれの具体的なスペースポートでの過ごし方を掘り下げていくことで、アイデアが広がるのは驚きでした。

スペースポートは、子どもから大人までいろいろな人が訪れて、いろいろなことを包含する場になっていくでしょう。今はまだ想像もつかない仕事がここで生まれて、吸引力のある場になっていく可能性があるなと感じました。

「スペースポートシティ構想」をカタチにした

片山:今回のワークショップは、みんなでつくり上げた構想を内部でシェアして終わりにするのではなく、パンフレットをつくり、「スペースポートシティ構想図」として世界に発表したことも特筆すべき点ですよね。

構想図

■「スペースポートシティ構想図」(完全版)
https://www.spaceport-japan.org/concept

国見:報告書レベルのまとめでは、いずれ消えていってしまう。それはすごくもったいないことです。今回のワークショップは、未来を妄想する遊びではなく、未来に向けたひとつの設計図をつくるためのものでした。

パンフレットは、「スペースポートシティが実在している」という体裁でつくっていて、これを見ていただくことで、世の中の人に、もう間近に確実に来ている未来をリアルに感じてもらいたいという狙いがありました。

そして、スペースポートは宇宙旅行をするためだけの場ではなく、いずれさまざまな産業の交差点になり、それ以上のものになることを伝えたかった。

山崎:構想図を見てハッとさせられたんですけど、私は「空港」の延長を考えていたんですよね。でもパンフレットの表紙には、「街」全体が写っている。ウオーターフロントで、スペースポートと街が高速道路でつながっている。

都市全体を含んだシティ構想図というのが強烈なインパクトがありました。この全体図を見ていると、「こんなところに住めたらいいな」「この近くで働けたらいいな」と、すごくイメージが膨らむんですよね。

国見:やっぱり「絵」があるとリアリティーが増す。そこで、建築やデザインの専門家であるcanariaやnoizさんに協力を仰いで作成しました。

片山:スペースポートって、一般の人には距離があって、自分は関係ないって思われがちですが、具体的なパンフレット、それも現実に存在しているかのようなものを見ていただくと、自分ゴトとして捉えていただけるかなと思います。そして、このパンフレットをベースに、本構想を次のフェーズにつなげていきたいですね。

仲間を増やして、スペースポートシティ構想を実現したい

国見:本プロジェクトに参画いただける企業や団体を増やしたい。そのために何をするかがすごく重要ですよね。構想を夢で終わらせず実現するためには、いろいろな企業の事業、ビジネスに落とし込んでいく必要がある。それはサステナブルなものでなくてはなりません。

このパンフレットによりリアリティーを持たせていったり、ふとした時にスマホで見られる動画をつくってみたり、さまざまなシーンでさまざまな人がスペースポートについて議論するきっかけになるよう、この構想図を進化させていくことでもっと賛同者を増やせると思っています。

山崎:SPJの目的の一つは、「航空宇宙産業を発展させる」ことですが、この産業は、裾野がすごく広い。宇宙って「場」なんですよね。例えばロボット産業とか、AI産業といった具体的な技術とはまた違って、そこで何をするか、いろいろな可能性があります。

だからこそ、国見さんが言ったように仲間を増やさないといけない。パンフレットに描かれていることを突き詰めていけば、エンタメもそうだし、衣食住も全部絡んできますし、最先端医療や宇宙でのリハビリとか、いろんな可能性があります。

イメージとしては「サグラダファミリア」じゃないですけど、一気に完成させるというよりも、ちょっとずつつくっていって、少しずつ進化していくようなもの。スペースポート自体が魅力的で吸引力があって、いろんな人が訪れる場所になることがまず大事で、宇宙という場の中の入り口になってくれたらいいなと。

国見:僕も山崎さんも「宇宙戦艦ヤマト」に憧れた世代ですよね。昔から宇宙に行きたいと思った人はいっぱいいて、それが山崎さんのような宇宙飛行士を生んだりしました。

でももしかすると、僕たちが、宇宙に対して憧れを抱く最後の時代かもしれない。そう遠くない未来には、宇宙に行くって言ったら、「今週末?」みたいな会話になっていそうです。だからこそ今宇宙に行けるということは、最高に興奮することができる、うれしい時代というわけですよね。

片山:面白い視点ですね。スペースポートシティ構想は、もう昔のSF物語に描かれたような遠い未来の話ではなく、近い未来のことです。これからはどんどん実現のフェーズに入っていくと思います。多くの賛同者を得て、いろいろな産業の交差点になるよう、実現に向けて盛り上げていきたいですね。

 

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