ispace、「HAKUTO-R」ミッション2に向け、月面探査車の日本への輸送完了
2024/10/02
月面資源開発に取り組む宇宙スタートアップ企業ispaceは9月4日、羽田空港・JALスカイミュージアムにおいて日本航空と共催で記者発表会を行い、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2で使用するマイクロローバー(小型月面探査車)について、開発拠点のルクセンブルクから日本への輸送完了を報告した。
冒頭、袴田武史 ispace代表取締役CEO & Founder はispaceのビジョンに触れ、「人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある未来を目指す」と語ったうえで、月面着陸と月面探査を目指すミッション2の進捗状況について説明した。
今回、月面探査に挑むマイクロローバーは「TENACIOUS(テネシアス)」(「粘り強い」の意)と名付けられ、ルクセンブルクを拠点とするispace EUROPEがデザイン・開発を担当した。完成後、日本航空の協力により航空輸送され、8月4日に羽田空港に到着した。
マイクロローバーを格納する「RESILIENCE(レジリエンス)」ランダー(月着陸船)は現在、JAXA筑波宇宙センター(茨城県つくば市)で環境試験の最終段階にある。
JALエンジニアリング取締役兼事業推進部長・秡川宏樹氏からは、HAKUTO-Rにおける技術協業の概要について説明があった。秡川氏は「日本航空機の整備の経験と知見をHAKUTO-Rにどう生かせるのかと考えたときに、エンジンの整備を思いついた」とし、「過酷な環境下で作動する航空機エンジンを整備してきた繊細で緻密な技量と、企業のDNAとしての安全・安心に対する高い意識を、HAKUTO-Rの推進系配管溶接に生かした」と述べた。
続いて行われたパネルディスカッションには、袴田氏、日本航空イノベーション本部長・鈴木隆夫氏、Axiom Space(アクシオム・スペース)宇宙飛行士兼アジア太平洋地域CTO・若田光一氏が登壇。「民間企業の宇宙開発への挑戦」をテーマに意見を交わした。
これからの宇宙事業における民間企業の役割について、袴田氏は「一歩早くリスクをとって事業領域を広げていくことが、われわれスタートアップの役割」としたうえで、「地球と月の間に大きな経済圏をつくっていき、より多くのプレーヤーがしっかりと事業としても成長できるようなエコシステムをつくっていきたい」と述べた。
これに対して鈴木氏は、成長産業である宇宙ビジネスに新規参入する際の民間企業の役割として「ノウハウの提供」と「経営資源の投入」の二つを挙げ、「スタートアップを支援することがわれわれ民間企業の使命である」と述べた。
若田氏は「民間主導の活動が政府の活動と融合して進むことで、持続的な発展につながっていく」としたうえで、「宇宙とは程遠いと思われている技術が、実はそのまま宇宙に使えることがある。ブレークスルーのためには、非・宇宙の技術を持つ企業との協業が大切になる」と述べた。
今後、「TENACIOUS」ローバーは「RESILIENCE」ランダーとともにアメリカに移送され、最も早くて今年12月(※)、フロリダ州ケープカナベラルにてスペースX社のファルコン9で打ち上げられる予定だ。
※2024年9月時点の想定
ispace公式サイト:https://ispace-inc.com/jpn/