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ispace「HAKUTO-R」ミッション2、アジア民間初の月面着陸は成功に至らず

2025/07/15

    RESILIENCEランダー

    月面資源開発に取り組む宇宙スタートアップ企業ispaceは6月6日(金)、「RESILIENCE(レジリエンス)」ランダー(月着陸船)の月面着陸を試みたが、通信が途絶え、失敗したと発表した。2023年4月のミッション1に続く2度目の着陸挑戦も、惜しくも成功には至らなかった。

    ispaceは6月6日(金)午前4時17分(日本時間)、月面探査プログラム「HAKUTO-R」のMission2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”(ミッション2)による月面着陸に再挑戦した。RESILIENCEランダーは、1月に打ち上げられ、約半年かけて月へ向かい航行し、アジアの民間企業初の月面着陸を目指していた。

    同日、東京都内で行われていたMission2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”着陸応援会では、深夜にもかかわらず、ispace社員やパートナー企業の関係者など約500人が来場。月面に向けて降下中の月着陸船から送られてくる高度や速度のデータがスクリーンに表示されると、多くの人々が固唾(かたず)を飲んで着陸の瞬間を見守った。

    都内で開催されたMission 2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON“ 着陸応援会の様子
    都内で開催されたMission2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE” 着陸応援会の様子

    しかし、着陸予定時刻を過ぎたあと「通信が確立できていない」という情報が伝えられると、会場は緊迫した雰囲気となった。RESILIENCEランダーは、高度約100 キロメートルから降下し、約20 キロメートルで予定通り主エンジンの噴射により減速を開始、着陸船がほぼ垂直になったことも確認されたが、高度192メートルというテレメトリーデータ(遠隔測定法によるデータ)を最後に通信途絶。袴田武史 ispace代表取締役CEO & Founderは、月面への「ハードランディング」の可能性が高いとし、同日午前の記者会見にて「月面着陸は達成が困難であり、ミッションの終了を判断いたしました」と発表した。

    Mission 2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON“ 着陸応援会に展示されたRESILIENCEランダー
    Mission2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”着陸応援会に展示されたRESILIENCEランダー

    6月24日(火)、ispaceはミッション2の軟着陸未達について、技術的要因に関する解析結果を発表。月着陸船が挑んだ月面着陸の失敗について、高度を測定するレーザーレンジファインダー(※)のハードウェア異常が原因だったとした。

    ※レーザーにより目標物との距離を計測する装置。ランダーから月面までの高度を測定するために利用。

     

    6月24日(火)ispaceによる ミッション 2 軟着陸未達に関する技術要因分析報告の記者会見の様子
    6月24日(火)ispaceによる ミッション 2 軟着陸未達に関する技術要因分析報告の記者会見の様子

    ispaceは6月の月面着陸の挑戦に向けて、電車内広告、モックアップ展示、YouTube広告、TVer広告なども展開。そこでは、ミッション1で月面着陸に失敗したものの、そこで歩みを止めることはなかったこと、失敗を恐れずに、困難を乗り越え、ミッション2に向けて再挑戦を続けてきたこと、挑戦を貫く強い信念と月面着陸に懸ける覚悟を示してきた。

    羽田空港第1ターミナルに、期間限定で月着陸船のモックアップを展示
    羽田空港第1ターミナルに、期間限定でランダ―のモックアップを展示
    東京メトロ電車内(ドア横)にポスター展示
    東京メトロ電車内(ドア横)にポスター展示
    着陸前日、朝日新聞朝刊に掲載された広告
    着陸前日、朝日新聞朝刊に掲載された広告

    今回のミッション2における月面着陸への挑戦は、惜しくも成功には至らなかった。しかし、ispaceの挑戦は、民間企業による月面輸送という、これまで国家主導で進められてきた宇宙開発の流れに一石を投じる試みであり、今回の挑戦においても、膨大なデータと貴重な経験が蓄積されたことに疑いの余地はない。

    月に向かうRESILIENCEランダーから撮影されたアースライズ(月に昇る地球)
    月に向かうRESILIENCEランダーから撮影されたアースライズ(月に昇る地球)

    袴田氏は、「ispaceは失敗を単なる技術的な失敗で終わらせず、決してここで立ち止まらず、関係者の皆様からの信頼を取り戻せるよう、常に挑戦者として、次のミッションに向けて再び歩み始めます。“Never Quit the Lunar Quest”」と述べた。

    ispaceは、2027年以降にミッション3およびミッション4打ち上げの計画も発表しており、これまで以上に多くの貨物を積載できる着陸船を用いることで、月の裏側・南極付近への輸送や月面探査によるデータ提供を目指していく。

    これからもispaceは、高頻度で顧客の荷物を月へ輸送、そして要望に応じて月面のデータを取得するなどの取り組みを行い、月と地球に広がるエコシステムの構築に向けた挑戦を続けていく。

    ispaceの挑戦は、終わらない。
     

    HAKUTO-Rサイト:https://ispace-inc.com/jpn/m2

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