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YouTubeクリエイターのすごさをUUUMと一緒に考えるNo.3

広告というよりパブリシティー:YouTubeクリエイターとの“あるべき協働のかたち”とは

2021/01/22

本連載ではUUUMと電通の共同調査プロジェクトの結果を紹介しながら、YouTubeクリエイターが生活者に受け入れられている理由を考えてきました。

今回は、UUUMのバディ・プランニングユニット統括である取締役・市川義典氏との鼎談を通じ、YouTubeクリエイターのソリューション力について考えます。前編は、近年のYouTubeクリエイターの動向、インフルエンサーマーケティングのトレンドについてディスカッションしました。

UUUM市川義典氏、電通・天野彬氏(左下)、電通・田村昌一氏(右下)
オンラインで鼎談を実施。上からUUUM市川義典氏、電通・天野彬氏(左下)、電通・田村昌一氏(右下)。

YouTubeで今、何が起きているのか

天野:近年、YouTubeクリエイターに対する社会的な注目度が高まっています。その背景について、市川さんはどう考えていますか?

市川:当社の鎌田(和樹氏/代表取締役社長CEO)は、2013年の創業当時から「個人がメディア化する時代が来る」と予見していました。実際、スマートフォンの普及により、今や誰もが24時間情報を入手できる時代に。それに伴い、YouTubeをはじめとするデジタルメディアに触れる機会も急速に増えたことが背景にあります。その中で台頭したのが、HIKAKINさんやはじめしゃちょーさんといったYouTubeクリエイターです。

さらに、コロナ禍でデジタルトランスフォーメーションが加速し、YouTubeクリエイターのコンテンツがより身近になり、タレントやモデル、俳優といった方々もデジタル領域への進出に力を入れるようになりました。従来のマスメディアとデジタルメディアの垣根がなくなり、シームレスになったと感じています。

天野:YouTubeのユーザーも変化しているのでしょうか。傾向、特徴があれば教えてください。

市川:クリエイターもユーザーも膨大に増え、クリエイターのチャンネルごとに視聴者がついています。キャンプをする女性、男性の料理愛好家など、新しいクリエイターが次々に現れ、さまざまなジャンルに特化したコンテンツを見られるのがYouTubeの魅力です。そのため、チャンネルごとに視聴者属性も異なっています。

また、年齢層の広がりも感じます。今は、若年層だけでなく40代、50代でもYouTubeを見ることが当たり前になりました。

天野:広告クライアントはYouTubeという大きな枠組みではなく、チャンネルごとの視聴者を見る必要がありますね。

市川:はい。しかも、各チャンネルの視聴者の幅が広がっています。例えばゴルフのチャンネルの場合、従来はゴルフをすでに楽しんでいる方に向けて情報を発信していました。でも、当社のゴルフチャンネル「UUUM GOLF-ウーム ゴルフ-」は、これからゴルフを始めようという方から、スコア90を目指す上級者まで、幅広く視聴されています。釣りやキャンプなど、他のチャンネルも同様です。

田村:YouTubeクリエイターが配信する動画について、近年変化を感じるポイントはありますか?

市川:抽象的な表現になりますが、コンテンツが幅広くなったと感じます。クリエイターも長年YouTubeで活躍する方がいれば、芸能界から進出してきた方もいて、顔触れはさまざま。制作するコンテンツも、テレビテイストのもの、自撮りのVlog(映像や動画のブログ)形式、制作費をかけて映画のように仕上げた有料動画などもあります。

田村:卵が先か鶏が先かは分かりませんが、視聴者とコンテンツ双方の多様化が進んでいて、それによってコンテンツも質的、量的に多様化しているということですね。

テレビ番組は1対n、YouTubeコンテンツは1対1のコミュニケーション

天野:では、多くのフォロワーを持つYouTubeクリエイターと、そうでない方の違いはどこにあるのでしょうか。

フォロワーイメージ

市川:少し質問の回答としては逸れますが、僕としてはどのクリエイターが支持されているのか、フォロワー数では測れないと思っています。それよりも重要なのはエンゲージメント。例えばフォロワー数が10万人でも、カードゲーム愛好家のコミュニティーでは非常に有名というカードゲーム動画のクリエイターもいます。こういった方は、コミュニティー内においては、他ジャンルのフォロワー数100万人のYouTubeクリエイターよりも大きな影響力を発揮します。

それを踏まえた上で、フォロワー数の多いクリエイターの傾向をお話しすると、コンテンツに対してこだわりを持つ方が多いという特徴が挙げられます。もちろん編集や撮影を他のスタッフに依頼するケースもありますが、基本的に自分で企画を考え、撮影・編集に携わり、サムネイルを作成し、配信タイミングまで計算する。テレビの番組編成のようなことまで含めて考えているんですね。しかも、そういった動画を継続的に配信しています。

その代表例が「HikakinTV」。分かりやすくて本当に面白いからこそ、老若男女に愛されているんでしょう。このチャンネルに、YouTube動画の秘訣が隠されていると思います。

天野:お話を聞いていて、改めて“YouTubeらしい動画”とはどういうものなのか疑問が湧いてきました。例えば“Instagramらしい写真”と言えば、皆さんイメージを共有できますよね。多様化しているとはいえ、“YouTubeらしい動画”というものもある気がするのですが。

市川:定義が難しいですね。ただ、これまでのデバイスは1対nで見るものが多かったように思います。テレビは1台を家族で見ますし、映画館なら100人を超える観客が同時に一つのスクリーンを見ます。一方YouTubeは、PC、タブレット、スマホ、どのデバイスでも、多くの場合1対1のコミュニケーションになっています。こうした環境下で受け入れられやすいコンテンツ、クリエイターと視聴者がつながりやすいコンテンツは、“YouTubeらしい動画”といえるかもしれません。

田村:先ほどのお話と関連しますが、動画の企画や編集に工夫を凝らすYouTubeクリエイターほど、1対1のコミュニケーションに気を配っているという解釈も成立しますか?

市川:クリエイターは、自分のファンのことを最も深く理解しています。言葉尻のニュアンス、テロップの付け方など、われわれも気づかないような実に細やかなことまで気を配っているんですよね。そこまで視聴者と向き合い、1対1のコンテンツを作っているクリエイターは、フォロワー数も伸びやすい傾向にあると思います。

利用シーンイメージ

広告クライアントもインフルエンサーへの情報感度を上げるべき

天野:話題を広げ、SNSマーケティングのトレンドについて伺います。現在、広告クライアントは、デジタルマーケティングにどのような課題を抱えていると感じますか?またYouTubeを中心としたソーシャルメディアは、その中でどういった役割を担うべきだとお考えでしょうか。

市川:コロナ禍で社会状況が激変したので、現在に特化した話をしますね。従来のコミュニケーションプランが大きく変わった今、デジタル上で何が流行しているのか、広告クライアントも把握する必要が生じています。しかし、テレビタレントには詳しくても、100万フォロワーを超えるInstagramクリエイターの名前は知らないというケースは少なくありません。これが、インフルエンサーマーケティングの現在の課題です。われわれとしても、周知活動を続けていきたいと考えています。

天野:確かに広告クライアントによって、普段からデジタルに触れている人と触れていない人ではリテラシー、肌感の差がありますね。

市川:コミュニケーションプランを考える上では、広告クライアントがKPIにセットするターゲットがどのメディアを見ているのか、その中でどのチャンネル、どのアカウントを見ているのか、そのチャンネルやアカウントで日々どんな情報が発信されているのか、深く理解する必要があります。チャンネルごと、アカウントごとにプランを考えることが重要です。

天野:その一方で、動画広告の市場は拡大し、SNSマーケティング全体が動画にシフトしています。動画は、広告クライアントの課題解決に対してどのような効果が見込めるのでしょうか。

市川:動画は尺の制限がなく、表現の制限もあまりありません。商品のディテールを紹介し、機能を訴求するケースは、非常に相性がいいと感じています。とはいえ、僕としては動画に限定する必要もないと感じています。

UUUMでは、クリエイターとファンをつなげる有料プラットフォーム「FOLLOW ME」、音声配信ソーシャルアプリ「REC.」、双方向LIVE配信アプリ「SUGAR」を運営しています。「FOLLOW ME」で提供するのは静止画ですし、「REC.」は音声に特化したプラットフォームです。動画に限らず、各プラットフォームに即したコンテンツを作ることが広告クライアントの課題解決につながるのではないかと思います。

リーチ率が高いのは、クリエイターとクライアントがワンチームで作ったコンテンツ

天野:では続いて、インフルエンサーの影響力について伺います。例えば、多数のフォロワーを擁するトップインフルエンサーひとりと複数のミドルインフルエンサーを比較すると、後者の方が高いリーチを有するという説があります。つまり、100万人のフォロワーを持つ方ひとりと、10万人のフォロワーと持つ方10人だと、後者の方が視聴者にリーチしやすいということです。これについてはどう思われますか。

市川:実はわれわれも約3年前に同様の調査を行い、複数のクリエイターを活用した方がリーチしやすいという結果になりました。広告クライアントへの営業活動も、この調査を元に提案ロジックを組んでいます。とはいえ、それもケースバイケースです。広告クライアントや商材によっては、多数のフォロワーを抱える人を起用した方がメリットが大きい場合もありますし、フリークエンシー(広告への接触頻度)に対する考え方も異なります。そのあたりをしっかりヒアリングしながら、プランニングすることが重要だと思います。

田村:へぇー、そうなんですね!マーケティングという視点で、UUUMの「中の人」に、そういうことが聞きたかったんです。

天野:近年、インフルエンサーの影響力、情報発信力をスコア化して、選定基準や広告の効果測定に活用する動きがあります。この点に関し、UUUMではどのような取り組みを行っていますか?

市川:YouTube上のアナリティクスデータは、国内トップだと自負しています。開示は難しいのですが、社内で独自に活用していきたいと考えています。企業案件については、広告クライアントに納得いただけるよう動画再生回数、エンゲージメント率をアウトプットしたいと考え、今まさに取り組んでいます。

田村:企業案件は、単発で終わることも多いですよね。継続していただくケースと、どのような点に違いがありますか?

市川:広告クライアントと広告会社が、そのクリエイターのコンテンツを理解した上でキャンペーンに使っていただいたかどうかが鍵になります。もともとYouTubeのコンテンツを視聴し、そのクリエイターの特性を理解している方だと、「日頃の動画よりも再生回数が伸びましたね」と効果を実感してくださいますし、いろいろな切り口の会話もできます。その結果、「次はこうしましょうか」と継続的な話にもつながります。逆に、これまでコンテンツやクリエイターに触れてこなかった方、インフルエンサーマーケティングをトライアルで実施した方は、単発で終わるケースが多いですね。

田村:コンテンツやクリエイターについて理解しているクライアントは、しかるべき指標を持って施策を継続してくれるわけですね。

市川:はい。中には、「今回はA、Bのクリエイターにお願いしよう。次はC、Dのクリエイターでいこう」と一緒にトライアルしてくださり、同じ商材で3、4回施策を打ち、「最も相性が良かったのはこのクリエイターだね。新サービスはこの方を起用しよう」というところまで考えていただける、ありがたいクライアントも。そういう方々とは、継続的に話をさせていただいています。

田村:広告クライアントは、何をもって効果の指標としているのでしょうか。

市川:クライアントによって異なります。「来店促進になった」「ダウンロード数が伸びた」というクライアントもあれば、「商品認知がポイントアップした」「若年層離れしていたテレビ番組の宣伝をしたところ、視聴率がアップした」というケースも。多岐にわたって、さまざまな効果を出すことができています。

田村:各クライアントの目標値は、事前に共有されるのでしょうか。

市川:事前に共有していただき、一緒に取り組んでいただくのが大前提です。僕としては、クリエイター、広告クライアント、広告会社、UUUMが、ワンチームでクリエイティブコンテンツを作ることが重要だと考えています。そういうチームは、動画の再生回数が伸びたり、効果が跳ね上がったりする傾向があります。

そもそもインフルエンサーを活用したプロモーションは、“広告”というより“パブリシティー”の文脈で捉える方が近いと僕は捉えています。広告クライアントのやりたいことだけを成し遂げようとすると、メディアや視聴者に適していないコンテンツが出来上がってしまうことも。インフルエンサー、クリエイターのコンテンツはパブリシティーと捉えていただき、インフルエンサーのカラー、視聴者の属性を考えた上で一緒にコンテンツを考えていただくことが、良い結果につながると思います。

天野:UUUMでは、YouTubeに限らずInstagramマーケティングの「LMND」、TikTokやライブ配信サービスも含めてソーシャルメディア全体にマーケティングやプロデュースの領域を広げています。ノウハウや方法論の進化について教えてください。

市川:タレントが、ある商材のテレビCMに起用されると、広告クライアントがスポンサーになっている番組に出演し、店頭POPにもキャラクターとして露出しますよね。僕らとしては、YouTubeクリエイターやインフルエンサーも全く同じことができると思っています。冒頭でもお話ししたように、今は既存のマスメディアとデジタルメディアの垣根がなくなり、シームレスになりました。

マーケティングに限らず、YouTubeクリエイターやインフルエンサーがより活躍できる市場をつくっていくために、さまざまな展開を行っています。簡単にいえば、インフルエンサー、クリエイターに関することは何でもやりたい。「インフルエンサーマーケティングといえばUUUM」と言っていただけるようになりたいですね。

(後編に続く)